工具はともだち<122>ねじ山をつぶした時に役立つ「ねじプライヤ」「ロッキングプライヤ」
この間、組立家具を組み立てていた時、久しぶりにやってしまいました。そう、ねじ山をなめてしまったんです。一度だけだったので、なんとかリカバリーして締め切りましたが、自転車ユーザーにとっては、後ろで「キャー」という声が聞こえてきそうなホラー並みに怖いお話しですよね。でも、どれだけ気を付けていても、ねじと工具の精度や相性によってはやはりなめる事はあります。
「工具はともだち」の中でも何度かお話ししたように、元々、ドライバーやアーレンキーなどのボルトの内側を回す工具は比較的硬くできていることもあって、徐々にボルトやビスを傷めていきますので、なめることを完全に防ぐことは難しいのが実態です。
程度にもよりますが、少しなめた程度なら、精度の高い工具を使うことでなんとか回せるものですが、完全につぶしてしまってどうしようもなくなることもやはりあるものです。今日はそんな時に役立つアイテムを少し紹介したいと思います。
ねじをくわえて回す工具
まずご紹介するのは「ねじプライヤ」。先端に歯が設けられているので、小ねじをくわえて回すことができます。
先端でねじをくわえるように設計されていますので、KTCの普通のプライヤーと比べて約4倍以上のトルクで回すことができ、ねじ山をつぶしてしまった時や錆びついて回り難いねじに有効なんです。同じようなことを「ロッキングプライヤ」を使ってもできます。ロッキングプライヤは対象物をくわえた状態でロックできるので、なめたねじを回すことだけに集中できる分、比較的楽に回すことができるんです。
この2つは自転車で良く使われるビスや六角穴付きボルトを回す際に有効ですが、六角ボルトの場合はどうでしょうか。この場合もこんなアイテムがあります。その名も「ツイストソケット」。普通のソケットと違い、中がよじれたツイスト形状になっているので、なめて丸くなったボルトやナットにかみ込み回すことができる優れものです。
なめかけたら「角がしっかり」した工具
以上の3つはなめた後の話ですが、なめかけたねじやボルトを回す際はどうすればいいか。まずは先にも書いたように精度の高い工具、例えばネプロスのような工具を使用することです。
また、アーレンキーで言うと、角がしっかりしている物を使うのも有効です。以前にもご紹介したようにアーレンキーは引き抜きという製法で作られている物が多く、どうしても角が丸く仕上がりがちです。それに対し切削加工、つまり削り出されて作られた物は比較的角がしっかりしています。KTCでも自転車用のアーレンキーは丸材から削り出していますので、こうした工具を使うこともなめりを防ぐのに有効な手段となります。ちなみに角が丸くなってきたようなねじに対してボールポイントを使用するのは自殺行為に近いのでお気を付けを。
あとは、六角ボルトの場合は六角ソケットやめがねでもヘックスめがねを使うことをお勧めします。やはり、十二角に比べ丸みを帯びてきたボルトやナットでも比較的しっかり回すことができます。ヘックスめがねは使用する際、ふり幅が大きくなるため、狭い場所で使いにくい点も否めませんが、なめそうになってきたボルトを回す際には力強い味方になってくれることでしょう。
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(産経デジタル)
KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。