【社説】韓国企業ではなく北朝鮮を支援する韓国政府

 米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」が韓国に配備されたことに中国が報復を続けている影響で、結局ロッテが中国事業から撤退することになった。ロッテグループは中国国内に112店舗展開していたロッテマートの売却をゴールドマン・サックスに依頼した。損害額は現時点で5000億ウォン(約490億円)を上回るという。ロッテマートだけではない。ロッテグループはこれまで22のグループ企業が中国に進出し、8兆ウォン(約8000億円)以上の投資を行ったが、その中国事業全体が揺らいでいる。2008年から3兆ウォン(約3000億円)を投じて開発を進めてきた瀋陽ロッテタウン・プロジェクトは中国政府の命令で工事が中断した。19年の完成を目指して1兆ウォン(約1000億円)を投資した青島複合商業団地の建設も滞っている。現代自動車は中国での不買運動の影響で4-6月の販売台数が60%以上も減少し、工場の稼働も中断した。アモレ・パシフィックも今年4-6月期の業績が1年前に比べて58%ものマイナスを記録した。

 THAADは韓国が最初から望んで配備したものではない。北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗するためのやむを得ない対抗手段だ。中国はそのことを知りながら、この機会を利用して韓国を完全に従わせ、米国から切り離そうとしている。ところがこの中国の動きに韓国政府は事実上、完全に口を閉ざしている。韓国大統領府報道官は中国のTHAAD報復を世界保健機関(WTO)に提訴する問題について「中国との協力が重要だ」としかコメントしていない。中国の気分を害することを恐れ、WTO提訴というカードを自分から取り下げたのだ。

 ところがその一方で韓国統一部(省に相当)は北朝鮮に800万ドル(約8億9000万円)相当の支援を検討しているという。これは国連制裁によって北朝鮮の貧しい人たちの生活が一層困難になるのを心配してのことだという。さらに「韓国が運転手となるには少しぐらい無理な決定も必要だ」ともコメントした。北朝鮮の核開発によって生活が苦しくなった北朝鮮の貧困層は心配になっても、北朝鮮によってそれ以上の被害を受けている韓国企業のことは何も心配にならないのか。中国は報復を続け、韓国政府はそれから顔を背けている。また韓国国内でも政府が旗を振って反企業感情が高まりつつある。韓国企業はまさに孤立無援、完全な四面楚歌だ。

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