前川喜平「教師に強制される仕事」にモノ申す

前文科事務次官が訴える理想的な学校の姿

前文部科学事務次官が教育現場の問題点を指摘する(撮影:尾形 文繁)
今年4月末に文部科学省が公表した2016年度の「教員勤務実態調査(速報値)」によると、過労死ラインに相当する週60時間以上(週20時間以上残業)勤務した教諭は中学校で約6割、小学校で約3割に上る異常事態が起きている。
『週刊東洋経済』は9月11日発売号(9月16日号)で、「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」を特集している。大量の仕事に忙殺されながら、「子どものため」と酷使され過労死ラインを超える残業が常態化する教員たち。その負担軽減策を見つけるために、インタビューした1人が前川喜平・前文部科学事務次官だ。
加計学園問題で注目を集めた前川氏だが、教育行政はまさに本業。かつては、義務教育を維持するために国が公立小・中学校の教職員給与の一部を負担する「義務教育費国庫負担金」が、小泉純一郎政権の進める三位一体改革で削減対象になったことに反発。自らの名前をもじった「奇兵隊、前へ」と題したブログでの批判は物議を醸した。
インタビューの内容は教員の働き方や待遇から政治とのかかわりまで多岐にわたった。その中から、部活動など学校の現場についての内容を紹介する。

 

教員の仕事から部活動は外すべき

――部活動が教員の長時間労働の大きな原因になっています。生徒だけでなく教員にとっても本来は「自主的・自発的な活動」のはずですが、現実には希望しない教員にも半ば強制的に顧問をさせています(部活動問題の詳細は「中学教師の何とも過酷で報われない労働現場」を参照)。

先生には授業でもっと勝負してもらわないといけない。それこそが教員の専門性だし、子どもに必要な学力をつけさせるための力を教員にはつけてもらわないといけないので、それ以外の余計なことはできるだけ少なくしてあげなければいけない。

『週刊東洋経済』9月11日発売号(9月16日号)の特集は「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

部活動は専門の指導員を学校職員として配置したほうがいい。部活動に対してはいろいろな考え方があって、たとえば学校の外、地域活動のほうに持っていくべきという意見がある。ただ中体連(日本中学校体育連盟)、高体連(全国高等学校体育連盟)、高野連(日本高等学校野球連盟)といった学校単位で加入する組織がしっかり根を張っているし、地域が地元の学校を応援していることもある。だから部活動、特に学校単位のスポーツは日本の風土からなくならないと思うし、学校の外に出すという考え方は現実的ではない。

学校の活動として残すけれども、教員の仕事から外す方向で考えたほうがいいのではないか。でも完全に外すのではなくて、一定の関わり方は持っていたほうがいいと思う。部活が大好きという先生がいるから、そういう人にはボランティアベースでやってもらってもいい。ただし授業をおろそかにして部活動にのめり込むのはおかしい。そういう教員がけっこういるのだが、本末転倒だ。教員免許状は教科を教えるためのものであって、部活動の免許状ではない。

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  • NO NAME525819b54678
    必要なところに必要な人員を配置する。
    当たり前だけど大切な事を言っているだけなのだが、これがなかなかどうして難しい。
    学校のみならず、お役所ですら臨時職員で溢れかえっている現状を見ると、この国は雇用問題やそこから来るワーキングプア問題を本気で解決する気が無いのだなとうんざりする。
    非正規雇用問題の解決や所得格差是正を掲げるなら、行政機関や学校から率先してやればいい。理想論だけでは食べていけないのだから。
    up55
    down17
    2017/9/16 06:33
  • 知ったかぶりの爺たん0fc339778dec
     教師に安月給で何でもやらせてきた日本の教育行政は確かに問題ありで、教員の社会的地位を低く押さえつけてきたように思う(昔から学校の先生を馬鹿にしている児童生徒は多かった)。
     しかし、部活担当の専門家を役目に応じた臨時雇用でまかなう等、分業化を進めると、今度は学校が階層社会になり、教師はヒエラルキーの上層階級でいいかもしれないが、格差社会の下層にされる人にとってはたまらない(ということは子供の教育上も良くない)。
     日本の良さは「自分のことは自分で」偉そうにせずに何でもやることにある(これが階層社会の国では「そんなことは自分の仕事ではない」と威張っていて自分でやろうとしないから問題だ)。
     日本の社会が職業差別的な傾向を強めて、従来の「職業に貴賎なし」という感謝の気持ちが薄れて行くと格差社会を助長する流れになってしまう。
     確かに教師の待遇改善は重要であるが前川氏の案は如何なものかと思う。
    up46
    down11
    2017/9/16 08:55
  • NO NAME4fbde0c5a89d
    教師が部活を指導すると閉鎖的な組織の中で体罰という名の人権侵害が日常化する。
    部活はやはり学校から切り離すべき、少なくとも指導者はね。
    up48
    down14
    2017/9/16 10:10
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