韓東賢

日本映画大学准教授(社会学) 報告 オーサー

まず前提として、差別問題において被差別側に原因や対策を求めるのは「アドバイス」として間違いだ。

水原さんは、アメリカ人の父と韓国人の母の間にアメリカで生まれ、オードリー・希子・ダニエルと名づけられたが、両親の離婚によって母のホームタウン神戸で暮らすようになり、ある時期からその姓を取って水原希子と名乗るようになったという。

常識的に考えると、おそらく母親は日本生まれの在日コリアン。普段から水原姓を使い、娘に希子と名づけるのは自然なこと(韓国で今はほとんど「子」とつけない)。彼女にとって水原希子という名は「芸名」というよりナチュラルな自分の名前なのだろうと思う。

ネイションの枠組は様々で、移動や出会いによって多様な可能性がある。さらに名づけ、名乗りは、ネイションにかかわらずとも個々人の様々な事情や選択がありうる(そもそも日本風の「芸名」は「日本人」の専売特許だろうか)。より広い想像力を。

韓東賢

日本映画大学准教授(社会学)

はん・とんひょん 1968年東京生まれ。大学まで16年間、朝鮮学校に通う。卒業後、朝鮮新報記者を経て立教大学大学院、東京大学大学院で学び、現職。専攻は社会学。専門はナショナリズムとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティの問題など。主なフィールドは在日外国人問題とその周辺、とくに朝鮮学校とそのコミュニティの在日朝鮮人。最近は韓国エンタメにも関心。著書に『チマ・チョゴリ制服の民族誌』(双風舎,2006 *現在は電子版発売中)『平成史【増補新版】』(共著,河出書房新社,2014)『社会の芸術/芸術という社会』(共著,フィルムアート社,2016)など。

韓東賢の最近の記事

韓東賢の最近のコメント

  • あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由写真

    ニューズウィーク日本版 8月19日(土) 20時34分

    韓東賢

    |

    『軍艦島』を「保守派寄りの大作映画」としているが、〈抗日〉だから「保守派寄り」という見方は短絡では。...続きを読む

Yahoo!ニュース オーサーコメント