イギリスの「チャヴ」が暗示する日本の末路

弱者を敵視しすぎる階級社会 

一部商店ではチャブを締め出すために、"NO BURBERRIES""NO HOODIES"という張り紙も…(写真:ArminStaudt / PIXTA)

「粗野な下流階級」を指す蔑称、チャヴ

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『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。

さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかりカネを使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」といったイメージまでが刷り込まれている。

チャヴをわかりやすく理解できる事件があった。マデリーンとシャノンという二人の幼い少女が相前後して姿を消した。マデリーンの失踪はマスコミで大々的に取り上げられ、その発見には3億円以上の報奨金がかけられた。それに対して、シャノンの事件は大きな反響を呼ばず、報奨金はマデリーンの50分の1にすぎなかった。どうしてこのような違いが生まれたのか。

次ページ中流階級の少女と、チャブの子どもとの扱いの差
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  • ロンドンのウラを見た爺たんa51c42387749
     毎度のことながらタイトルに疑問。この記事が日本の末路を暗示していますか??
     それはそれとして、確かに英国の階級社会は突出している。最下層から這い上がることは(インドの最下層から這い上がるくらい大変で)格差社会というより差別社会だと思う。一時期、例えばマイフェアレディ(米国映画)がヒットした頃等は(米国からの皮肉なアドバイスかもしれないが)差別意識を問題視する正義感が強かったように思う。それが近年逆に格差が拡大、差別が拡大しているのが英国のウラ事情だ。
     そうか、日本で格差拡大が問題になって来たので「日本の末路」なのか。
     日本では、職業に貴賎なし、地味で地道な仕事をされている方に感謝の気持ちを持って、先ずは格差是正から取り組みましょう。
     
    up79
    down12
    2017/9/16 13:12
  • NO NAMEa3283527422b
    資本主義世界において帰結主義あるいは功利主義を野放しにしていれば、経済的価値のないものは無能であるし、無能な者への対応はそれなりにということになりますね。

    政府が弱者を救済する必要はないという回答が先進国中日本が最も多かった(あのアメリカより!)有名なピューリサーチの調査が示すように、すでに日本は弱者を切り捨てる社会になっているのでは?
    up68
    down21
    2017/9/16 13:30
  • NO NAME784df973dd21
    >我々が住む社会がそのように歩むことがないよう

    (そういう社会に)もうなってる!

    生活保護叩きもだがこの間、10代で子供を産んだという風俗勤めのシングルマザーが客に殴り殺されるというクッソ凄惨な事件があったが、それに対するネットでの反応がまさにこの記事で挙げられてた事件と全く同じだったんだよな。「10代でガキを産むような底辺風俗嬢なら当然の末路」みたいな。
    up42
    down18
    2017/9/16 14:11
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