>ゲーム屋の悲惨な日常
 
 


今日は、私がゲーム会社で働いていた時の悲惨な話をお目にかけようと思う。

話は5年ほど前にさかのぼる。

その頃、私は

「ゲームの音楽を作りたい」

と、雄叫びこいた。

そして、某求人雑誌を探すと、結構載っている。

(この頃はゲーム会社の求人がまだまだ結構あったのだ。)

そしてその中の、神楽坂にある、とある会社に面接に行くことになった。


プランナーとして


いや、なんで音楽が作りたいくせにプランナーなのかというと、


プランナーしか募集してなかったからである。


これでは、今時の痛いゲーム業界志望者と変わらない。

2ちゃんねる風に言うと、DQN。そう、ドキュンである。

または、ドキュソである。

しかし、そんな浅はかな思惑とは裏腹に

結果的には受かってしまうのだが。

というよりも、

「来るものは拒まず」

な会社であった。

最初、電話で求人誌を見、面接を受けたい旨を話した所

企画書を持ってきて下さい、との事であった。

いや、当たり前なんだけどね。

その頃は企画書なんて書いたこともないから自分なりに適当に文章にまとめて行くんですね。



しかも手書きで。


だって


パソコンなんて持ってなかったし



さらにその内容が、今思い出しても恐ろしい。

だからあえて言いません。


まさか、声優さんと仲良くなり擬似恋愛するヴァーチャルシミュレーションゲームだなんて

口が裂けても言えません。


さて、私が入社し、初めてのお仕事は

「ボイスパラダイス」というPC-FXのゲームをPSに移植するというものでした。

最初にこの企画書を読んで置くよう言われました。

そりゃあまあ、どんなんかわからなければ仕事のしようがないですからね。

その内容と言うのが……



一機のUFOが故障し、一人の宇宙人が地球に降り立った。

そしてそのUFOが再び飛べるようになるには、3つの「声の欠片」が必要なのだ。

その声の持ち主を探しだし、再び自分の星へと帰ることができるか!?



確か、こんなような内容だったと思います。

要するに声優ゲーです。

上司に、「どうだ?」

と言われ、まだ社会経験の少なかった私はその問いに対し

「これはちょっと」

と言い放ちました。

すると上司は、ちょっとだけ切れた様子で


「これは売れるよ!イケるんだよ!」※脚色は一切しておりません。


いくら声優ブームとはいえ、


こんなチンケな設定のゲームが売れるのでしょうか。


かなり疑問に思っていたことを覚えています。


さて、ここから辛い生活が始まります。

まずなにが辛いかって。

お金です。

「固定給、月15万」と謳っていましたが、(それでもかなり少ないけど)

実質上、月に貰っていたおよその金額は


2,3万円


多くても5万くらいでした。


というのも、


お金が必要な時に、いくら必要か社長に言って初めてお金がもらえるんです。


すごいです。かなりアバンギャルドです。

ゲーム会社はこんなもんなんだと変に納得していたその頃の自分もかなり痛いです。

しかも、なぜかそんな待遇なのに、社員数が50名程いたことがなにより謎です。

なつかしいです。今でも鮮明に思い出すことが出来ます。


普段は普通なのに怒るとすぐ怒鳴る直属の上司。(サウンド兼プログラマ)


しかも何故怒っているのかさっぱり分からない素敵な上司。


プリンタを使うのにわざわざ社員全員に知らせて電源を入れなければならない開発環境。


何故ならプリンタの電源を入れただけでブレーカーが落ちる、そんな素敵な開発環境。


色々な人がいましたが、中には髪がオレンジで

コスプレが趣味だという企画の先輩がおりました。

そしてある日の夜、自宅でテレビを何気なく見ていると

スタジオにコスプレをしている人をゲストに呼ぶというコーナーが。


その中にその先輩居やがりました。


しかも、彼女と一緒に。


コスプレは、先輩が「ラムネ&40」のダサイダー。

彼女は、当時流行っていた「ウエディングピーチ」でした。
(よく覚えてるなー自分。)


さて、話を「ボイパラ」に戻します。

もちろん、「ボイスパラダイス」の略です。

「ボイコットパラサイト」などではないですからね。

私は当時、不眠不休でこの痛いソフトを作っていました。

画像の加工、ボイスの切り分け、ボイスの加工、映像の編集

しかもおまけディスクとして、出演している声優の

「インタビュー映像」などが収録されたCDも付けるのです。

私はこれの音声、映像編集もやっていました。

まあ声優さん自体は、今でも人気のある(そのテの人達には)有名な方々なんですけど。


生活はというと、最長で会社に二週間泊まりました。

もうこの自己ベストは更新されることはまずないでしょう。


そのくらいは経験あるって?


風呂にも入らずにですよ?


なぜ銭湯にいかなかったかって?

金がないからに決まっているでしょう。

毎日の食事だって、ほとんどコンビニで買ってきた100円で買える大きなパンです。

「スイートブール」ってパン知ってます?

あれはいいですよ。100円で大きい上に、甘くておいしいです。

フランスパンもいいですね。

100円前後で買えて大きいし。


さて、二週間も風呂にも入らずロクなものも食べずに仕事していると

もうすごいです。ハイを通り越して

どこまででもいけちゃう気分です。

しかも、なにが一番すごかったかって、


足のにおい。


もうくさいなんてもんじゃない。

うんこのにおいするもの。

すっごくベタベタして、洗面所で洗ってもぬるぬるが落ちません。


仕事していても足元からにおいがしてくる始末です。

ここまでくると周りにも被害が出始めます。

見るに見かねた上司

「おまえ、一回家帰れ。」

こうなる前に帰りたかった事は言うまでもありません。



さて、こんな激務をこなしてもまだ終わりが見えません。

発売もとのディレクターさんが心配そうに様子を見にきます。

差し入れで、サブウェイのサンドイッチを持ってきてくれた時は泣くほど嬉しかったです。

こんなにいいもの食ったの久しぶりだ。

未だにサブウェイを見るとこの時の事を思い出してしまうのはちょっぴり内緒です。

ところでどうしてそんな激務を余儀なくされたかというと


この開発、私とその上司の二人だけでやっていたからです。


そりゃ家帰れないわ。

そしてなんとか無事に、マスターアップを迎える事ができました。


そしてその後、上司はボーナスの話で盛り上がってました。

前述したように、上司はこのゲームのヒットを信じて疑わなかったのです。

「これが売れたら当然ボーナスが入ってくる。

 予想では○○本売れるハズだから

 取り分は俺が○○円で、おまえが○○円だな!」(当然自分のが多め)

と、得意げに話してきます。

まさに取らぬ狸の皮算用です。

私はこのゲームが売れるとは思えませんでした。

売れて欲しいのはやまやまですが、

どう考えてもそう思えません。





後日、売れた本数を聞きました。

約7000本だったそうです。


ほらね、ボーナスなんて絶対無理でしょう。

万が一、売れたとしても

お金がこっちに回ってくるとも思えないけど。



後日談として

発売元の○スク講談社はこれに懲りず

ボイパラの続編、「エルフィンパラダイス」なんてのも出してるんですよ。

いい加減学習しましょうよ。

だって、ひもじい私にサンドイッチ奢ってくれたこのディレクターさん、


「ボイパラ」が原因でクビになったんでしょう?







この後、別のゲーム会社に移ったのです。

お前も懲りずにまた別のゲーム会社に行ったのかとか言うな。




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