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・前提
理想の演奏は体内メトロノームが1,2,3,4とカウント刻み、それを基準として音を配置していくというものです。現状を分析すると、まず音の配置ないしパターンがあり、それを音ゲーのように良きタイミングで演奏するという具合になってると思います。体内メトロノームは絶対に揺るがないものだと思ってください。
音価及びタイム感にこだわりすぎるということはありません。 リフ一発をひたすら繰り返すような音楽をやっている限り、そこはおざなりにはできません。音価コントロールやタイムコントロールこそが演奏の肝です。 ジェフ・ポーカロでさえ「俺のタイム感はマジでクソ」と言う世界です。コントロールおよびタッチに心血を注いでいきましょう。
こういったミクロの視点と併せて、4拍子をきっちり取って演奏するというマクロの視点も大切。シンコペーションやアクセントが拍の裏にきても、つられずにきっちり4拍子を取れるようにしましょう。
・課題
体内メトロノームを筋肉に染み込ませてください。これに関しては自転車の乗り方と同様、一度身につけたら死ぬまで失われることのない感覚です。演奏における基礎の基礎。料理における器。器がないとどうにもなりません。器のないラーメンを想像してみてください。
体内メトロノームを養うためには音楽に合わせて首を突き出して引っ込めるのを繰り返すのがいちばん手っ取り早いと思います。
体幹でリズムを取ることでリズムの表と裏の相互関係を体感的に理解していきましょう。
〈リズムの表と裏=筋肉の弛緩と収縮の繰り返し=円運動〉と考える。 ブランコ・振り子の動きと一緒。静止することはない。点で捉えない。
あるフレーズを頭の中で再生したり鼻歌を歌ったときに、4拍子のクリックが自然に聴こえてきてかつ首も勝手に動くぐらいになるまでやりましょう。
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・課題
1.「体内クリック=1拍×4」を基準にして演奏する
ドラムでいうとカウントから演奏に移行するときやブレイクが入ったときにテンポがよれがちです。それは体内クリックが絶対的な基準になっていないからではないでしょうか。
高校生の頃、DJの真似事をしているときに、色んな曲を「1,2,3,4」とカウントを取りながら聴いた時期がありました。そのときにリズムに対する感覚が鋭くなったという経験があります。
絶対的な基準となる体内クリックを開発するために、好きな音楽(踊れるようなものが良し)に合わせて体を使って「1,2,3,4」とリズムを取ると良いです。全然しんどくないしやってみたら良いと思います。
2.リズムを静止した点で捉えない
音楽を聴きながらリズムに合わせてカウントをとるときに、リズムを静止した点で捉えないことが重要です。必ず首や腰など筋肉を動かしてリズムを取りましょう。リズムを筋肉の弛緩と収縮という一連の動きの中で捉えることが大事です。
3.自分もリズムにのって演奏する
「リズムを静止した点で捉えない」ことにも関わってきますが、いわゆる「音ゲー的な演奏」と「音楽的な演奏」の違いは、演奏する人が自らリズムにのっているかのっていないかの違いではないでしょうか。「俺がリズムを刻むんだ!」「俺がリズムを生み出すんだ!」という具合にガチガチにコントロールしようとするのではなく、流れるプールに身を預けるように、自らリズムの流れに乗っかって演奏すると良いです。演奏しつつお客さんになった気持ちでやってみてください。
・リズムの組み立て方を考える
すでにカットされた一切れのピザを適当に複数枚用意して、丸いピザを完成させようとしても、それが絶対に完璧な円になりません。リズムに関しても同様に、小さい単位のフレーズをただ積み重ねていくだけでは踊りたくなるようなリズムは描けません。
まず丸いピザがあり、それを4等分すると考えてみてください。その後に8等分ないし16等分、または24等分していきましょう。同じ周期ないしスパンで音が鳴ることが踊れるリズムにとって大事です。
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すでに首や背筋などの体幹を使って4分でリズムを取ることの重要性を説きましたが、「なんで?」ということがイマイチ明確でなかったので、補足したいと思います。
前回のメモでも似たようなことを書きましたが、なぜ体幹でリズムを取ることが重要かといえばリズムを点で捉えないためです。体幹は文字どおり体の幹です。どっしり安定していえますが、同時に小回りが利かないともいえます。しかし、この小回りが利かないことが、リズムを点ではなく、円運動の周期で捉えることに適しているのではないかと思うのです。
なぜリズムを円運動の周期で捉えるのかといえば、カクカクした硬い演奏ではなく、柔らかい演奏にするためです。柔らかい演奏とは、しなやかで、躍動感があり、踊りやすい演奏ということもできます。
また一度ついてしまった癖が抜けにくいということと一緒ですが、脳ではなく体に染み込ませたほうがより忘れにくいというか体から抜けにくいので、体幹に染み込ませることが大事です。例えば声を出してカウントすることはすごく良いと思います。ただひとつ気がかりなのは声でカウントを取っているとシンコペーションなどにに釣られて「ワン・アトゥーーウ・スリッ・・・フォーーオ!」といった具合に間隔が崩れてしまいがちなことです(自分にそういう傾向があります)。そういう理由で、声を出すことは必ず体幹とセットにしてください。
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演奏が走ってしまうのは、気が急いているために、休符に余裕がなく、ドミノ倒しのような演奏をしてしまうからでしょう。対策として、音を出したら出した分だけ絶対に物理的な反動があると考えみてください。バランスボールに座ってぴょんぴょんハネているような心づもりで演奏してみてはどうでしょう。反動は絶対に殺さないでください。むしろ反動を利用して次の音を出していくというイメージです。合理的な身体運用によって発せられた音にこそ心地よさが宿るものです。
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オモテとウラの役割を感覚的に掴む。そのために・・・
・首でリズムを取ってみる
音楽 (4分の4拍子のもの)に合わせてを「1 and 2 and 3 and 4 and…」とカウントしていきます。顎を突き出すのは拍のオモテです。顎を突き出すと言っても力(リキ)を込めて突き出すのではなくて、首の力を抜いてダランと前方に顎が落ちた状態にすると良いでしょう。顎を引っ込めるのはandの部分、つまり拍のウラです。このとき、うなじの下あたりにクッと力を入れ顎を引っ込めます。顎を引っ込めたら今度は次の拍のオモテと顎を突き出すタイミングが合うように力を抜きます。要するに筋肉の弛緩と緊張あるいは伸展と収縮でリズムを作っていくという感覚です。
大事なのは、オモテが脱力、ウラが緊張という役割を担っているということです。オモテで溜めた力を解放するという感じです。また、キレ=脱力、タメ=緊張ということも意識してみてください。あと、これをやるときに首だけを意識してしまい背筋と腹筋を使わないとたぶん首痛めます。背骨ごと動かしていくと良いです。
最初は力が入ってしまってスムーズにいかないと思いますが、やっているとそのうちコツがつかめてくるかと。音楽に合わせて「1 and 2 and 3 and 4 and…」と声を出しながら首でリズムを取っていくと感覚がつかめると思います。ドラムの音を首に共鳴させる意識でやると良いでしょう。コツを掴んできたら動きを大きくしていくと円運動の中で点を捉える感覚が養われてくると思われます。
最初に感覚を掴むためにはBPM100以下の90年代東海岸ヒップホップの曲に合わせてやるのが良いでしょう。90年代東海岸ヒップホップのビートはウラ(=and)で鳴るHHがよく目立つので、わかりやすいかと思います。
が、その前に!
裏拍を取るシンプルな練習に取り組むほうが即効性があると思われます。裏拍が取れてないからなかなか4分が揃わないのでは…と思います。自分でやってみて思ったのは結構ウラを基準にして次に来るオモテのタイミングを読んでいるところがあるなぁ、ということです。というわけで、クリックを鳴らして裏拍に手拍子を入れるという練習を小一時間ぐらいやったら効果があるのではないでしょうか。
と言いつつも、以下のようなことを抜きにしては気持ち良くウラが取れないとも思います…
「の」の字を描くようにリズムを刻むという話がありますが、自分が音楽を聴く場合においても体を使って「の」を描くように聴いてみてください。先日の首の動きでリズムを取るのと一緒です。自分が聴いていて気持ち良いと感じるのは同じ形の「の」が延々と続いていくような演奏です。つまり4分の刻みが、イーブンではないにしろ、一定の間隔を保ったまま1小節単位で繰り返される演奏です。
同じ形の「の」が描けているような状態を英語で”in the pocket”というそうです。予想通りのタイミングで次の音が来るから「気持ち良いなぁ!」って感じるのだと思います。校庭に「うんてい」っていう遊具がありますね。あの遊具の掴む部分の感覚がランダムだったらとっても気持ちが悪いと思います。一定の間隔でスイスイスイーっと行けるからこそ遊んでいて楽しいのだと思のですが、どうでしょう。
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楽器を演奏する人に対して「裏拍を取れるようになることが大事」と良く言いますが、その真の重要さが沁みてきた昨今です。裏拍を取るというか、次の表拍への折り返し地点をコントロールできるようになることが大事だという気がします。
Until You Come Back To Me (That’s What I’m Gonna Do) – Aretha Franklin
Rock Steady – Aretha Franklin
Funky Nassau, Pts. 1 & 2 – The Beginning Of The End
Harlem River Drive – Bobbi Humphrey
Teasin’ – Cornell Dupree
Feel Like Makin’ Love – D’Angelo
Wicki Wacky – The Fatback Band
Jungle Boogie – Kool & The Gang
Feel Like Makin’ Love – Marlena Shaw
Runaway – The Salsoul Orchestra Feat. Loleatta Holloway
We Are Family – Sister Sledge
Peg – Steely Dan
I Got The News – Steely Dan
メトロノームで練習してばかりでは味気ないと思うので、練習用に裏拍のハイハットが目立つ曲を改めて集めてみました。これら音源を聴きながら口ドラムでコピって感覚を覚えてしまうのが早いのではないでしょうか。これはあくまで持論ですが、腕や足での練習を中心にしてしまうと腕や足のコントロールの精度が基準となってしまいそれ以上の正確さがなかなか掴めないと思われます。音を出すことに関しては手足よりも口のほうがおそらく器用です。カタカタっぽく「ドン・チッ・タン・チッ」とやるらずに、英語の子音だけで発音していくとアタックが強調されてベターかと思われます。タンギングの感覚も養われて一石二鳥ではありませんか。寝ながらでもできるし。
バスケのドリブルで例えると、ボールが床に当たって跳ね返る瞬間がオモテだとすれば、ウラはボールを手のひらに収めた後、運動エネルギーの向きが上から下に変える瞬間でしょうか。音楽をバスケの選手、自分の頭をボールだと思いこんで、思いっきりドリブルされ続け、その感覚をトラウマ並みに体に染み込ませてください。正しいリズムは本来的にとても気持ちの良いものだと思うので、気持ちよさを追求するつもりでやったら良いと思います。
リズムというものは根本的に「寄せては返すもの」だと思い込んでください。力を加えたらその力を跳ね返すだけの弾力性をもった空間こそが音楽の正体です。その弾力の折り返し地点である裏拍をいついかなる状況においても意識していなければなりません。ウラを意識しないで演奏することは息を止めて暮らすようなものだと思ってください。 まさに命取りです。心臓だってオモテとウラを刻んでいるわけで、どちらかが欠けたらそれはもう心臓停止です。
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以下のリズムにおける基礎あるいは土台的な部分をなんとしてでも身につけなければいけません。
・リズムにはオモテとウラがある
・リズムの基本型は4分の4拍子
・リズムは点でなくて円で構成される
近頃気になるのは、 耳の精度を演奏の質が上回ることがあるのかということです。つまり、耳が熟していないのに演奏はやたらと上手という人は存在することが可能かということです。さらに、認識そのものに、少なからずギャップがあるのは当たり前だとしても、そこにあまりにも大きな断絶があるのならもはや何を言っても結局話は平行線にしかならないのでは、という疑問もあります。
はっきりいって細かいミスなどはどうでも良くて、気持ち良いのリズムが描けているのかどうかということだけが重要です。動きとか流れ自体が気持ちが良いかどうかっていう話です。
11/15
緊張するとやはり体が固くなって、弛緩と収縮、緊張と緩和のダイナミクスがなくなる気がします。グラビアアイドルが笑顔で砂浜を走っているのだけど、揺れるはずのところがまったく揺れてないというような違和感があります。
・拍問題について
それがロックであろうとソウルであろうとジャズであろうと、ポップスと呼ばれる音を聴く人は誰もが必ず拍を取って聴いてしまうと考えてください。塩を舐めたら塩っぱいと感じる、サウナに入ったら暑いと感じる、頬っぺたを叩かれたら痛いと感じるといった具合に、音楽を聴いたら誰もが拍を感じてしまうものなのです。これはもう大前提です。ポップスがそういう前提を元にデザインされていることは明らかです。そのような意識をもって今一度音楽を聴いてみてください。
とにかく拍を意識することです。それは音楽に拍という補助線を引いてそこに描かれているものを明らかにしていく作業といえるかもしれません。例えば企業のロゴに黄金比が使われているというのは有名な話ですが、実際に黄金比を当てはめてそのことを明示するのに似たようなことだと思われます。
リズムはその人固有のものではなくて共有物です。自分独自の感覚と長年にわたり培われてきたリズムの歴史を戦わせて、それに勝利するなんてことはありえません。前提を取りこぼしたまま取り組んでも空回りしてしまいがちです。リズムは他人のためにあるものだと考えてください。他人の耳を意識してください。
12/01
【16ビートの感覚を覚える】
とにもかくにも真似することから始めましょう。とりあえずシェウン・クティというフェラ・クティの息子のアルバムをアップしたので聴いてみてください。モダンで聴きやすいアフロビートとなっております。
こちらの音源に合わせてひたすら16分音符を両手で刻んでみてください。できる限り小音量で。ポイントはこれらの曲を演奏する人たちが共有している16分刻みに焦点を合わせることです。自分を溶かして流し込むようなイメージです。
大縄跳びが上手く続いているときのような高揚が得られたら自分もその16分刻みが共有できている証拠です。ボーカルおよびギター、ホーン、パーカッションなど各楽器の奏でるフレーズが自分の刻む16分音符の上を気持ち良く通り過ぎていくような感覚を味わってみてください。
これをやって効果が出なかったらときはまた考えていきましょう。
12/05
【シェウン・クティの音楽に合わせて16ビートを会得する】
まず前提として、シェウン・クティの音楽は16分音符のパルスで構成されています。ドラム、パーカッション、ベース、ギター、ホーン、コーラス、ボーカルが16分音符を主軸としたフレーズを演奏しており、彼らの間では16分刻みのパルスが完全に共有されています。自ら16分を刻みつつシェウン・クティの音楽を聴くことは、彼らと16分のパルスを共有することでもあります。パルスをシンクロさせると言っても良いでしょう。上手くいくと忘我状態というかトランス状態になります。アドレナリンが出てくるような気がします。
これを継続的にやった後に別の音楽を聴いてみるとその音楽の構図が見えてくるような気がしてきます。つまり特定のフレーズが16分刻みで聴こえて来るというようなことです。16分音符のグリッドが見えるというか。デッサン学んでいる美大志望者が我々と同じ風景を見たとしても、 彼らの目には一点透視図法的な補助線が見えていると思いますが、そういうようなことです。
リズムの補助線が見えるか否かがプロとアマを大きく分かつ要素だと言って過言ではないでしょう。例えばラップがどのように聴こえるかがその分水嶺となるといえるでしょう。ただの英語の早口に聴こえる場合はリズムが見えていない状態で、より音楽的というかリズムを奏でているように聴こえるのなら見えている証拠です。
12/10
シェウン・クティに学ぶ16分音符の刻み方について。
合わせるというよりも自分を溶かすという感覚でやってみましょう。いかにシンクロさせるかということが課題です。もう少し負荷をかけみたいと思います。
・左手からスタートさせる。
・頭を前後させて4分を刻む。(なぜ頭でやるかというと頭を後ろに引っ込めるときウラが刻めるからです)
「音源のモノマネばかりしていたらおれの個性がなくなってしまうじゃないか!という考える人もいるかもしれませんが、モノマネしてみて似なかった部分がその人の個性だというふうに大滝詠一は言いました。光浦もアメトークで何度もやろうとして頑張ったけどどうしてもできなかったことがその人の持ち味になるというようなこと言ってました。どうあれ、取り組んでみないことには何も生まれないのでとりあえずやってみることから始めてみましょう。
1/13
細野晴臣がライブでリズム隊を務める若手二人に対していつも「豆腐を切るように演奏しろ」ということを言っているそうです。豆腐を崩してしまわぬよう力まず丁寧に、ということでしょう。
70年前半の音楽にあって現代の音楽にないものは8ビートにかすかに混じるシャッフルの感覚ではないでしょうか。スイングする感じというか。字義通り捉えて頭で考えていても一生感覚は掴めないので、虚心坦懐に曲そのものに耳を傾けなくてはいけません。
プラス、シャッフルの会得が急務。以前送った音源のなかのモータウンのシャッフルなど絶品。出汁が効いています。そろそろ唐辛子や山椒などでごまかすことは控えたいです。現実的な話をすると音と音の間にちゃんと隙間があって聴いていて息苦しくならない。そして滑らか。呼吸するかのような演奏をしていきたいところです。
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【パルスの宿題】
・パルスとは?
演奏者が感じている拍を細分化した波のようなリズムのことをそう呼んでいます。サブディビジョンと言う場合もあるそうです。
パルスとは方眼紙の罫線のようなもので、演奏者はこの罫線をもとに音の配置を決めていきます。例えドラマーがキックとスネアのみで「ドン・タン・ドドン・タン」とだけ鳴らしている場合であっても1拍を4等分した16分のパルスを感じている可能性があります。また、ブレイクなどで一旦演奏が止まったとしてもパルスは体内を流れ続けています。聴こえている音がリズムの全てではないということです。
パルスはエンジンの動力を伝えるギヤのようなものです。現状はギヤがないのでエンジンが空回りしている状態です。他の楽器からしてみるととっかかりがないし、逆に言えば他の楽器に対してとっかかりの持ちようがないと思われます。
・パルスの読み取り方
ここではひとまずパルスの最小単位を16分とします。16分音符だからといって1拍を4等分したイーブンの16分音符とは限りません。「タッカタッカタッカタッカ」といった具合に16分のウラが少しだけハネている場合もあります。「ターカターカターカターカ」のようにエグくハネていることもあります。
パルスの構造をわかりやすく図式的に説明すると、16分のオモテとウラの音価の比率によってパルスの構造が決定されると言えます。オモテ:ウラ=52:48みたいなことです。実際はこのようにシンプルではありませんが。
次にパルスの読み取り方です。まずテーマとなる曲を流しながら、テーブルや膝をパーカッション代わりにして、右手の人差し指でオモテの16分を刻み、左手の人差し指でウラの16分を刻んでいきます。その際何にタイミングを合わせるかといえば概ねドラムで、右手はハイハットに合わせ、左手はキックやスネアのゴーストノートを基準に考える。右手だけでやったほうがわかりやすい場合もあります。音楽に波長を合わせて両手でリズムを刻みながらパルスの平均値をとっていきます。
ドラムだけではなく、他の楽器やボーカルも同様にパルスを感じながら演奏しているはずなので、そちらも参考すると良いでしょう。またはドラムのオカズでパルスが音として表出することもあります。
音を追いかけるという感覚ではなく、歩調を合わせるという感覚で取組んでみてください。ギヤがかっちりとはまるように音楽と膝やテーブルを叩く音を溶かしていきます。
また大事なのは4分と8分のパルスもしっかりと意識することです。フラクタルのイメージです。
課題曲はこちら
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【パルスの宿題の補足】
・パルスを点ではなく波で捉えよう
パルスを点で取ってしまえば従来のリズム解釈を踏襲するものとなってしまい元の木阿弥です。この宿題をこなす意味がありません。まずパルスがどのような形をしているか考えていきましょう。初めに肺から吐き出される二酸化炭素に色がついているという前提で、ゆっくりと一定の速さで口から息を吐いていきます。その際に「ホワンホワンホワンホワン」と発音するつもりで口の形を変えていきます。そうすると口から吐き出された色付き二酸化炭素はパンでいうコルネのような形になっていると思います。この波こそがパルスです。リズムを構成するための土台となります。惑星にとっての軌道のようなものです。
・パルスを立体的に捉えよう
パルスを波として捉えることに関連することですが、パルスを二次元的に捉えると演奏も平坦で面白みのないものになってしまいがちです。 「幅」「奥行き」「高さ」のという3次元の空間の中でパルスがどのように機能しているか意識してください。
・パルスを読み取るときに、テーブルやパッドを叩くのではなく、手のひらで太ももやお腹など体の一部を叩こう
手のひらが体の一部に当たるという物理的な作用を空気の振動、つまり音として捉えるため。手を主体と考えると体の一部は客体となります。これをそのまま演奏者と聴衆の関係に置き換えて考えてください。こうすることで、演奏者と聴衆の二役を一人でこなして、客体として受け取った感覚を主体として演奏にフィードバックさせることができるでしょう。
・シェウン・クティの16分イーブンの習得も併せて行おう
パルスを計測するための「ものさし」をより正確なものにするため。シェウン・クティもアフロっぽい訛りの中で16分を刻んでいるので、機械的なイーブンではないことに注意してください。
・手のひらを枝、体幹を幹と考えよう
パルスは拍を分割したものと考えます。木の枝というものは、あくまで幹から派生したものです。逆もまたしかりで、枝が結合して幹になるわけではありません。パルスはあくまで枝です。大きく4分を取る体幹が細分かして16分を刻む手のひらになるわけです。よく使う例えですが、一切れ分のピザを先に作って後からそれを複数くっつけても丸いピザにならないように、16分一個を4個くっつけたところで1拍にはなりません。たしかに理論上はなりますが、わざわざそんなことを不自然で面倒なことをする必要はありません。まず丸いピザを作ってから8等分ないし16等分しましょう。具体的なことを言えば、腰や首など固定した状態で手のひらを動かしていけないということです。必ず腰や首などで4分を取って16分を刻みましょう。また、枝の動きが幹に与える影響ということも意識してください。動きの波が体幹から手への一方通行ではないことがわかるでしょう。そこからファンク特有の16分音符の役割を推測することも可能なはずです。だからこそ体幹は動かし続けてください。
シンクロさせなきゃ意味がない
パルスを読み取る作業は繊細さが必要です。「合わせてるつもり」という思い込みを殺していかなくてはいけません。よし合ったと思って翌日やってみるとその認識が甘かったことに気づくことがあります。このように徐々に精度をあげていきましょう。スマップのダンスのようにバラバラではいけません。シンジとアスカのようにシンクロさせてください。自我を押し殺して音源に溶かすつもりで16分を刻みましょう。必ずギヤががっちり噛み合う瞬間があります。是非このときの快感を味わってください。脳内麻薬が出ること請け合いです。
ヒントはドラムのおかず・シンコペーション
ブラックミュージックの場合、単純な8ビートに聴こえはするもののドラマーは若干ハネた16分のパルスを感じながら叩いている場合が多いです。なぜそのことがわかるかというと16分音符で構成させたオカズが微妙にハネていたりするからです。16分裏でかすかに鳴っているゴーストノートがハネている場合もあるし、気まぐれ踏まれたシンコペートしたキックが若干ハネている場合があるからです。さらに精度があがっていくとハットの強弱でなんとなくわかったりします。そもそも、こういうパルスで演奏していくよ!と演奏者とお客さんにわかりやすく提示してあげるのがドラマーの役目だと思います。
この宿題は休符も「音」として捉える練習
休符はただの無音ではありません。リズムを構成する大切な要素です。今までは音ゲーのようにそれらしいところでボタンを押すといった二進法ないしデジタルな捉え方しかしてこなかったと思いますが、パルスを読み取るよいう練習を通じて休符の役割がなんとなくわかってくると思います。その役割を言葉にしようとすると難しいのですが…この練習で休符に音をつけて音符として捉え直すという練習です。音がなっていないところで何が起こっているのか検証する作業ともいえます。肌で感じることはできても目では見ることが風の存在を可視化するために屋根の上に風見鶏を設置するといったことと同じです。
強弱も大事
手のひらで16分を刻むときに曲に適した曲弱をつけてみてください。強弱というよりは音のベクトル及びスピードと言った方が正確かもしれません。音が描く放物線ないし波形にも留意して取り組んでください。結局パルスのみならず音の強弱も音の放物線ないし波形を構成する要素となっているような気がします。
簡単に言えば「この曲に一番適した16分刻みはどのようなものか」を考えれば良い。
ある日、この曲(アレサ)のプロデューサーからスタジオに呼び出されたとします。さらに「16分刻みのタンバリンが欲しいから叩いて」と言われたとして、その際にどういうタンバリンを付け足すかを考えれば良いのです。もしそこで「はいはい、16分っすね」などと言って「シャカシャカシャカシャカ」とバカの一つ覚えでイーブンの16分を叩いたりしたもんなら大顰蹙ですよね。その曲ごとに適したパルスないしフィール及びニュアンスを汲み取る能力が必要です。よくいう「リズムリテラシー」とはそういった能力のことを言います。
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パルスの宿題の補足その2
・パルスを両手を使って刻むとき、太ももを手を振り上げて叩くまでの上から下という方向だけでなく叩いてから振り上げるまでの下から上という方向にも注意する
演奏が「つまって」聞こえるのはウラとオモテというコンセプトが理解できていないからと以前に言いました。両手でパルスを刻む際、右手がオモテ、左手がウラという役割を担うことになります。右手はオモテだけ刻めばいいかと言えばそうではないです。右手による一連の動きを高さという視点で見た場合、右手が一番低い位置に来るのは太ももを叩くタイミングとなります。オモテのタイミングともいえます。このオモテのタイミングさえあっていればそれで良しということではありません。右手が一番高い位置に来る瞬間をウラのタイミングに合わせることが大事です。もう少し説明します。太ももを叩いた後、手を振り上げて一番高い位置まであげます。この瞬間がウラのタイミングとなるように意識してしっかりと手の高さ及びスピードを調整してください。感覚的にわかりずらいということであれば、左手を右手の上に用意しておいて、右手をウラのタミングで振り上げたときに左手が右手の甲に当たるようにして、ウラ拍が音として鳴るようにしてみてください。このときバスケのドリブルの要領で左手のスナップを利かせて軽く右手を叩いてやると、オモテとウラの関係がなんとなくわかると思われます。ついでに右手だけでウラをきちんと音にとして出す方法も説明します。まず手首の位置の高低をウラオモテとして捉えます。指先がなるべく太ももから離れないように16分のオモテを刻んでいきます。そうするとウラのタイミングで手首の位置を高くしたときに、指先がズボンに触れているためにズボンが擦れる音がします。これをウラの音として刻んでいきます。わかりますか?この方法は右手が太もも触れている時間を音価として捉えることができるので、よりリズムも鍛えることができます。
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実践的な補足をすると、パルスの宿題を行う際は、太ももを叩く音をできる限り小さくして、音源のメロディー、フレーズ、リズムパターンと自分の刻むパルスが重なる部分がきちんとシンクロしてるかどうかに注意することが大事です。もはや音が出てなくてもいいぐらいです。太ももを叩いたときの刺激だけで十分だと思います。太ももにサンプラーのパッドがついていると思い込んで、自分がパッドを押した瞬間に音源のキックなりスネアなりハットなり楽器のアタックが鳴るようにタイミングを調整してみてください。手をパーにするよりはマウスを握るときのように軽く手を丸め、指の腹で太ももを叩くと良いでしょう。ドラム音源の入ったサンプラーを自分がコントロールしていると思い込んでやってみてください。最初はキック、スネア、ハットのアタックをちゃんと聴いてから合わせていくと良いかもしれません。「このへんかな?」ってポイントよりもやや後ろを意識しつつ。
あと、4分、8分でそれぞれ一回ずつ刻んだのちに16分刻み取り組むと良いかもしれません。分割というコンセプトを意識するために。何もしないでただ聴くってことも絶対にしたほうが良いです。
今回はテンポの遅い曲にチャレンジ。
ドラムはポーカロさんです。3拍目直前のシンコペートしたキックが左手のタイミングにしっかり合うように調整してください。16分のウラはたぶん思っているよりも後ろにあります。念のために補足しておきますが、スネアが鳴るのは2拍目および4拍目です。
テンポの遅い曲なので、指先でちょこちょこパルスを刻むより、なるべく手を高い位置まで上げて弧を描くようにパルスを刻むと良いような気がします。特にジャストよりもやや後ろにあるスネアのタイミングで太ももを叩くときは大きな弧を描くと良いでしょう。
思い込みかもしれませんが自分で実証済みなので、毎日精度を上げていくつもりで取り組んでいったら成果が出るように思います。今取り組んでいることは言ってみれば模写の世界です。自分の描いた絵をシビアな目で検証してちょっとずつ修正していくことが大事です。右手左手を入れ替えて右手でウラ、左手でオモテを刻むと左手のコントロールの疑わしさに気づいたりもします。ボケ防止にもなりそう。
パルスの宿題その前に【初級編】
メトロームを使ったやったのち、課題曲にも合わせてやってみてください。生きたパルス感覚を身につけるためです。
その1
4分音符で太ももを叩いてみよう
太ももを叩くタイミングは1、2、3、4とカウントするタイミングです。注意してほしいのは太ももを叩いたらなるべくそのまま手のひらを太ももにおしつたままにしておくということです。そのときに、力を抜かず手を太ももに押しつけて圧をかけてください。そして、次の拍の直前で手を振り上げて次の拍の頭で太ももを叩きます。振り上げる動作はその曲に適したタイミングで行ってください。その繰り返しです。なんのためのやるかといったら4分音符の音価を身につけるためです。両手でやってみるのもひとつの手であると思われます。
その2
8分のウラで太ももから手を離してみよう
太ももを叩くタイミングはその1と一緒ですが、今度は8分のウラのタイミングで素早く手を太ももから離してみてください。さらに8分のウラのタイミングになるまで手は太ももに押し付けていてください。なんのためにやるかといったらウラの音価を感じるためです。
その3
8分音符を刻んでみよう
今度は8分を刻んでみます。その1でやったように叩いたらそのまま手を太ももに次の音符までつけておくようにしてください。片手でやるのは難しいので今回は両手でやってみましょう。歩くときと同じ要領です。片方の足が地面から上がっているとき、もう一方の足はどうなっていますか。地面についていますよね。このような具合で両手をつかって8分音符を刻んでみてください。
その4
16分のウラで太ももから手を離してみよう
その2でやってことをさらに2等分してみます。その3とは違い、両手ともに空中にある瞬間ができます。その瞬間が16分のウラとなります。腰やお腹あたりから16分の波を派生させるつもりでやるとうまくいかもしれません。
その5
両手で16分を刻んでみよう
文字通りです。特に言うべきことはありません。4小節を1タームとしてその1からその5までなんども繰り返してみてください。
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オモテとウラの役割を認識するための補足。
ダウンビート・アップビートという言葉があります。ダウンビートはいわゆるオモテのことです。これは有名な話ですが、指揮者の指揮棒をオモテで振り下ろすことに由来しているそうです。他にも強拍という言い方をすることもあります。強という字をアクセントという意味合いにおいて解釈すると話がこんがらがるのでそのように解釈しないでください。一方、アップビートはダウンビートの反対で、ウラのことを言います。日本語にすると弱拍です。今回はダウンビートとアップビートという言葉が実際の演奏に活きるように拡大解釈していきたいと思います。
以前も話したことがあると思いますが、緊張と緩和という対比に当てはめたときに、ダウンビートは緩和、アップビートは緊張となります。これは力の入れ具合についての話で
ダウンビート・アップビートというものを意識しながら手のひらを使って8分刻みで4拍子をカウントしていきたいと思います。よくある”1 and 2 and 3 and 4 and”というカウントです。
ダウンビートで文字通り腕を落とし、手のひらで太ももを叩いてみます。このとき気をつけるのは、ダウンビートは緩和であるので、力を抜かなければなりません。ここでニュートンのリンゴを思い出してください。我々が生きているこの空間には引力が働いています。腕を上げた後、力を抜けば腕は重力に従って自然と下に落ちていきます。これは別に力の必要な動作ではありません。筋肉の状態を緊張から緩和に移すだけで良いことです。この要領で、手のひらで太ももを打ってみましょう。打つというよりは落とすという意識でやると良いでしょう。
反対にアップビートでは腕を振り上げるわけですから、重力に逆らって力を入れてやる必要があります。筋肉を緊張状態にするということです。
力むと演奏が硬くなるというようなことをここ最近話していますが、これはきっとそのことにも関連する話です。
これらのことに注意して再び、首でリズムを取るということをやると良いでしょう。
まず首から力を抜いて顎をだらりと前方に突き出します。生きていて良いこと何一つないとった様子のいかにもしょぼくれた学生といった感じのポーズです。これがオモテのときのポーズとなります。次に首に力を入れて顎を後方にひっこめます。監督に試合中のミスを説教されて体がカチカチになっている高校球児といった感じのポーズです。これがウラのときのポーズです。これをリズムに合わせて繰り返していきます。
何のために行うかといえば体幹で大きくリズムを取るためです。注意してほしいのは力の入れ具合及び抜き具合のピークをウラオモテのタイミングにきちんと合わせるということです。また必ずウラのポーズが始めてください。オモテのポーズから始めてもリズムの起点が生まれません。ただ力が抜けている状態に過ぎずこれは「動作」ではありません。ピークがないわけで起点になりません。一方ウラのポーズは力を入れる「動作」なので、力のピークというものがあり、それがリズムの起点となります。
首でリズムを取ることの良いことは自分の出した音を基準にしないということです。従来の「とりあえず音を出してそれを基準に間で積み上げていく」ようなリズム感を払拭する可能性が感じられます。
この練習にはアレサの”Until You Come Back To Me”が適しているでしょう。なぜなら8分でハットが鋭く鳴っているからです。これをガイドに取り組んでみてください。ガチガチにコントロールしようとするときっとうまくいかないでしょうから、音楽に体を預けるつもりでやってみてください。他人のライブを見ているつもりで。
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JBはバンドのメンバーに”Give me the one!”とよく叫んでいたそうです。”The One”というのは1拍目のことです。セックスマシーンを聴くとよくわかると思うんですが、1拍目のキックが他のキックよりも大きいですよね。これは私なりの解釈ですが、JBの音楽における1拍目はリズムの起点であり、同時にリズムの目標地点という気がします。次の1拍目を目掛けて2、3、4拍目を演奏していくといった感じです。言い換えれば1拍目で時計の針が一周するという考え方です。従来の目分量で拍を積み重ねていくという方法では1拍目は揃わないし、JBの音楽のようにシマリのあるループ感が出せないでしょう。
リズムを時計に置き換えて考えてみます。一時間が1小節だとすると、長針が1拍目で0分、2拍目で15分、3拍目で30分、4拍目で45分の目盛の上を通り過ぎていくようにリズムを刻まなくてはいけません。1時間を4等分する感覚が必要です。今までの感覚は、4等分という意識がないために、だいたい体感時間で15分ぐらいやったから2拍目にいくというような感じになっているのではないでしょうか。このような拍の取り方を実際の時間にたとえてみると2拍目から16分、33分、48分と続いていって、1小節が一周して1拍目に来た時に、本来長針が0分を指し示していなければいけないところが、5分前後を示しているといった印象があります。
なぜこのような考え方が大事かといえば、リズムはみんな共有物だからです。時計というのは皆の指標であって、ある誰かの個人のものではありません。リズムはみんなが踊るための指針にならなくてはなりません。簡単に言ってしまえば、リズム時計になってくださいということです。
ウラとオモテということに関しても補足しておきます。ウラというのはただのタイミングや場所を指したものではなく「拍の折り返し地点」であると考えてください。1拍を左右対称の山で表したときの頂点にくるのがウラです。左右対称の山とは二次関数のグラフみたいな形をした山のことです。現状は「だいたい8分音符一個分やりました。はい、ウラが来ました」といった感じになっているような気がします。拍が山になっておらず平面上に点をなんとなく落として拍のようなものを作ってる感じです。つまり2拍目の位置を見越した上でウラが取れていないということです。
1拍という長さにおける始点と終点がない限り二等分はできないし山は左右対称にはなりません。次の拍の頭を目指して左右対称の山を越える感覚が大切です。山の頂点までいったら位置エネルギーを運動エネルギーに変えて斜面を重力に従ってただ滑っていくような感覚が重要です。
理想は振り子のリズムです。振り子が一番低い位置に来るのがオモテで、一番高い位置に来るときがウラです。やはり重力というものを意識すると良いでしょう。重力に従うのがオモテ、重力に反発するのがウラです。この緊張と緩和、オンとオフが音楽に推進力を与えていると思ってください。
話が煩雑になってきたので、まとめます。まず4分音符の長さ=一拍の長さをしっかりと認識することが大事です。そのためには1小節を4等分するという感覚も会得する必要があります。それには”On the One”を合言葉にするJBの音楽がもってこいです。
4拍子がきっちり取ることを意識しつつウラとオモテの役割をしっかりと認識することも大事です。敢えてウラにオモテとは別の役割を持たせる理由は、オモテを際立たせるため、なんでしょうか。この辺は言葉にしづらいのですが、踊れる音楽はウラとオモテがある、という一点だけは間違いありません。しかし、この感覚は万人共通のものではないと思うし、縁があるかどうかの話でしかないのですが・・・
4分をきっちり取れるようになったら、その縮尺を4分の1に縮小するだけで16分が美しく刻めるようになるはずです。フラクタルとかコッホ曲線で画像検索するとそのイメージ図がいっぱい出てくるとおもいます。
習うより慣れろというわけで、JBの”On The One”よろしく「1and2and3and4and」がひとまとまりということを意識しつつ、例の頭で4分を取る練習をしてみてください。首の筋肉及び上半身の筋肉の収縮と伸展でウラとオモテを刻むことも大切です。自分の頭がバスケのボールになったと思ってJBの音楽にドリブルされてみてください。オモテで床に叩きつけれ、ウラでは手で叩かれるといった要領です。主体的に働きかけつつ音楽に自分を溶かすという客体的感覚も忘れないださい。あくまで相手とハイタッチして初めて音が鳴るという感覚が大事です。くれぐれも勝手に自分で手拍子を打たないでください。全音符、二分音符、四分音符、八分音符、十六分音符、それぞれの単位で周期が揃っていることが前提です。JBのバンドの演奏のブレなさを体感してください。
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リズムを取る際は1拍目はもちろんのこと、1小節の中心であり折り返し地点となる3拍目を次の1拍目を見越した上で正しい位置で捉える意識が大事です。
次のことは頭の動きと曲のウラオモテをしっかりシンクロすることができたら自ずとわかると思うのですが、やはりファンクはオモテの「接地時間」が短いです。尚且つウラの「滞空時間」が長い。ロックはその逆というかほとんど接地したままで、アクセントないし音の強弱だけを推進力にしています。「の」の字でリズムを取るとわかりやすいかもしれません。例えばJBの「セックスマシーン」ではスネアの音が上に向かって飛び跳ねて聴こえるような感覚があります。
拍のアタマを下から掬い上げるイメージでリズムを取ると良いと思います。2、4拍目のスネアはアタックの瞬間とともにウラに向かって上昇する感じです。ブロックくずしのボールがバーに当たった瞬間の感じ。というか、テニスや卓球でボールをラケットで打ち返す感じですかね。手で「の」の字型の円を描くとわかりやすいかも。
・宿題
課題曲に合わせて4分を手拍子で鳴らす。その際にリズムの軌道を描くように手を動かすことも忘れずに。
チェックポイント
・1小節を均等に4分割できているか
・ウラとオモテの波が描けているか
・音源と自分のリズムを同期させることができているか
・大前提
以下の言葉は音楽の心地よさを言語化しただけのものであり、この言葉通りに演奏すれば心地良い音楽になるというわけではない。音楽の手本は音楽以外にありえない。言葉はあくまで補助輪のようなもの。
・前提
1. パルスは直線的に左から右へ進んでいくものではなく、円のような軌道を描くもの。マラソンでいうとトラック。ロードではない。
2. 一小節は4拍でひとまとまり。5拍目9拍目と進んでいくのではなく、1拍目に戻るという考え方をする。
3. 拍は分割するもので積み上げていくものではない。
4. 出した音を反応して行き当たりばったりの演奏はせず、体内メトロノームに従って音を出していく。
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ファンキーなリズムは機関車の動力の仕組みに近いのではと思いました。
ピストンの部分がステディな「1 and 2 and 3 and 4 and」というカウントで、車輪が円運動となります。海外のファンキーの人たちはピストン運動を背骨ないしその周辺の体幹をシャフトにして円運動に変換しつつリズムを取ってるのではないかと考えています。ピストンのみでリズムを刻んだ場合、それは点でしかなく一応リズムではあるものの推進力はありません。つまり踊れないということです。一方、車輪のついた円運動型のリズムは前に進んで行く動力を得たわけですから、これは踊れるリズムとなります。
これをどう演奏に活かすのかということはまだ言葉にできていませんが、足でカウントを取り、手で縦に円を描くと足で取っているカウントに躍動感が増すという気がなんとなくしています。なので、この感覚を保ったまま実際に演奏すれば自ずとその演奏にも躍動感が生まれるのではと考えました。
足で刻むウラとオモテのピストン運動を背骨ないしその周辺の体幹をシャフトにして頭の円運動に変換するという二段構えのリズム解釈が一番に理に適っているのではという説です。機関車の仕組みとファンキーなリズムの仕組みの違いは、リズムの場合は車輪もピストンの動きに作用を与えるということです。それとファンキーなリズムが描く円は、機関車の車輪のように綺麗な円というよりはラグビーボールのような楕円形をしていると思われます。ラグビーボールが坂道を転げ落ちている感じがします。
こちらは円運動のイメージ図。頭の横あたりで手首を支点にしてこの軌道を描くと良いでしょう。こちらも機関車のように、肩の上下運動をピストン、腕をシャフト、指先の円運動を車輪に見立ててやるとなお良いかと思われます。円の回転は時計回りが良いと思われます。
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上下運動と円運動でリズムを捉えるための課題曲です。このぐらいのBPMが丁度良いのではないかと思いこちらの曲にしました。縦に強くバウンスするような躍動感をもったリズムです。高校生の頃に聴いたときは平板でつまらん!と思ったものですが、今ではこれほどに躍動感のある曲は他にないと思うほどです。
ひとまず自分が楽器を演奏する人だということを忘れて取り組んでみましょう。楽器に関わるものは一切持ってはいけません。これは良きリスナーになるためのレッスンです。話はそれからです。
円運動だけで捉えてしまうとウラとオモテが甘くなってしまうのでお腹の力を使って上半身を上下させて拍を取りつつ、手を使って1拍分の円を描いてください。ガイドとしてつま先で4分を刻むというの一つの手ですが、注意深く聴くべき音をマスキングしてしまうおそれがあるので今回はやまておきましょう。
円周上のオモテのポイントを通過するときにキックおよびスネアのアタック(!)にきっちり合うようにしてください。キックの場合は”don”の”d”、スネアの場合は”ta”の”t”がアタックです。ウラのポイントを通過するときも同様にハットのアタックにきっちり合わせるつもりで円を描いてください。
まずは注意深く音源を聴いて体の動きと音楽がばっちりシンクロするようにしてください。音源が発するリズムを利用して自分の体重を回転させるというイメージです。実際に体を使って円を描いてください。自転車と一緒でのれたときはのれたと感じます。少しでも違和感があればのれていないということです。頭を空にして体を動かしながら感覚をつかんでみてください。何度でも良いますが実際に体を動かして取り組んでください。こういうのは質よりも量です。そして、手を動かすことに気を取られて音を聴くことをおろそかにしないこと。耳も手もどちらも100%の配分で取り組んでいきます。自我を捨て、体をリラックスさせることも重要です。
コツがつかめてきたら自分の演奏の音源を聴いて上下運動と円運運動で捉え直してみると良いでしょう。
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やはり認識のズレが不安なので今一度整理します。
今取り組むべきはリズムの動きを感じ取ることです。そのために音楽に合わせて腕を回す作業に取り組もうと言っている次第です。「分割」といったことはたしかに関連することですが、今は無視してしてください。そして、あまり言葉の意味を考えこまないでください。どんどん実体からかけ離れていってしまいます。今までがそうです。まずは体を動かして覚えましょう。
メジャーコードが明るい/楽しい。マイナーコードは暗い/悲しい。この感覚はわかると思います。わかることを前提に話を進めていきますが、このコードの響きによってもたらされる感覚を元に、音楽というものはデザインされています。これらコードの役割と同様に、ダウンビート(=オモテ)が下降、アップビート(=ウラ)が上昇といったリズムに関わる感覚も音楽をデザインする際の前提となっています。だがしかし、我々はこの上昇/下降の感覚を無視して音楽を聴いてしまっているし、演奏してしまいがちです。本来ならこの感覚は足し算引き算レベルの出来て当たり前、わかって当たり前の話であってしかるべきなのですが、なぜか良いように無視されてきました。
今我々がやろうとしていることは、リズムの上昇/下降の感覚を体を使って覚えようということです。 だから別に体を上下させるだけでも充分といえば充分なのですが、オモテやウラを点のみで捉えようとすると運動を止めてしまいがちなので、それらを円運動の中のポイントとして捉えてみよう、そのために腕を使って円を描いてみようと提案しているのです。
コンセプトだけ理解してもそれは頭の中の出来事にすぎず、実際に上昇/下降が体感できなければ、音楽的に何の意味もありません。だから実際に体を使って感覚を会得しようと提案しているわけです。こういうのは、質よりも量だし、習慣付けが大切です。上昇/下降という前提を抜きにして音楽に取り組むことは足し算引き算を覚えずに微分積分に取り組むようなものです。基礎中の基礎をやり直すという気持ちで今回の課題に臨んでください。
こういう書き方をすると、修練を積むことのように思うかもしれませんが、やっていて楽しいし気持が良いことだと思います。脳内麻薬がガンガン出てる気がしてなりません。
パーラメントの曲に合わせて腕を回す際に、キックとスネアが会陰から体に入ってきて背骨を通ってウラのハットを合図に頭頂部から出て行くと思い込んで聴いてみると良いです。キックとスネアの運動と質量が感じられるはずです。
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拍がべたっとなってしまい、4拍子がわかりやすく提示できていない
ウラとオモテは円運動の中の力の折り返し地点ということに注意。アタックが力の折り返し地点にくるように円運動のスピードを調整する。曲そのものがもつ軌道に乗る意識が大事。これは後回しでも良いですが、16分の刻みに即した身体の運用も必要でしょう。音だけ合っていればそこにいたるまで体の動きは何でも良いと思っていると絶対に合わないです。
さらにウラとオモテの上下運動に回転を与えたものがリズムの円運動であると認識すること。円の一番下側がオモテ、一番上側がウラ。このポイントは揺るがない。これら二つの点を結んだ直線を直径とした円を描く。
次の課題曲
オモテとウラが強調されたこの曲であれば・・・という期待を込めてチョイス。強く上下にバウンドするようなリズムだから縦長の楕円を描くと曲にフィットする。
BPMが112なので一曲トータルで552回腕を回す計算。腕を回し続けていたらいやがおうにも腕が疲れる。そして疲れてからが勝負。最小の力で腕を回し続けることが肝要。腕や肩の小さな筋肉ではなく、大きい筋肉=体幹を上手く使うこと。10回ぐらいリピートして腕を回し続けることができれば、ワンマンで通用するだけの円運動のための体力はつくはず。
とにかく実際に腕を回して覚えること。繰り返し体を動かして筋肉に叩き込むことが重要です。私は人柱になるつもりで実際に腕を回しながら10回リピートしてみます。
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上半身でリズムを取るのがダメなら下半身で取る。というわけで、膝の上下運動ないし前後運動でリズムで取るということをやっていく。
立った状態で、ウラに合わせて軽く膝を曲げて上半身の位置を落とす。拍がウラからオモテに切り替わる瞬間めがけて太ももの力を使って膝を伸ばす。 オモテ(Up Beat)で上半身が上にクッと上昇する感覚を覚える。上半身の位置は、ウラで低くなり、オモテで高くなる。
膝は、手のようには動きをアイソレートできないため、自ずと全身でリズムを取ることになる。さらに不器用な分、音楽に合ってないときにはちゃんと合ってないと判別がつきやすい気がする。手で取っているとなんとなく合ってるようなつもりになりがち。
・何のために取り組むのか?
リズムに対するセンスを養うため。また、音楽のもつリズムの心地よさ・快感をより多く受け取るため。4拍の刻みを安定させるため。
この1か月で体内リズム器官のようなものがかなり鍛えられたと自分で感じています。この器官がリズムに関する判断を行っているように感じます。反対に言えば、これらを鍛えないことには自分の演奏が合っているのかズレてるのかいつまでたっても判別がつかないといえます。自分の演奏が良くない場合にきちんと気持ち悪っ!と感じられるように、今はとりあえずセンスのみを鍛えていきます。楽器のことはとりあえず置いておきます。楽器に触ると自分に甘くなりがちです。
経験者のただそれっぽいだけの演奏ではなく、勘の良い素人による下手なんだけどツボは抑えてるみたいな心地良い演奏のほうがベターです。勘の良い素人になるために膝でリズムを取ることに取り組んでいきます。
以前、自転車の例を出したけど、サーフィンに近い感覚もきっとあるはずです。波が音楽に相当。サーフィンには半分ぐらい波に乗れてるといった状態はありません。音楽も同様に乗れたら乗れたとわかるはずです。乗れるまでやります。乗れるまでやらなかった意味がありません。波に乗れていなかったらサーフィンと言えないし、音楽に乗れてなかったら音楽とは言えません。
2/17
問題点の整理・切り離し(解決のために)
※大前提
バスケのドリブルはボールを地面に当てて跳ね返ってきたところをまた手で叩いて地面に当てます。この繰り返しです。これがそのまま拍およびウラ拍とオモテ拍の関係となります。バスケのドリブルを音で模したものがリズムです。
1. 演奏からウラが感じられない
8分刻みだとしたら本来「1 and 2 and 3 and 4 and」とならないといけないところが、「1 1 1 1 1 1 1 1 」となっているように聴こえます。つまり8分が全てオモテになっていてウラがない。
・リズムへの影響
リズムが下に沈んでいくばかりで踊れない。呼吸に例えると吐くばかりで吸えてない感じ。リズムが息苦しく聴こえる。また、沼地を走っているような状態。地面に足がついたときの反動が使えないから、次の一歩が出せない。
・解決案
まず、拍のウラオモテというのは、タイミングを図示しやすくするためだけに拍を前後で二つに割っただけのものではないということ。力学的な役割を元に分類されたものと考えてみる。
ウラというのは英語でアップビート。文字通りに上に持ち上がる拍。地球には重力があるので、モノを上に持ち上げる際には力が必要。ゆえにウラ・アップビートは力を加える必要のある拍といえる。何のために力が必要かといえば、自分の体を持ち上げるため。
一方、オモテ、ダウンビートは重力を利用するだけで良いわけだから、ほとんど力はいらない。緊張と緩和の関係でいえば、ウラ・アップビートが緊張、オモテ・ダウンビートが緩和となる。上昇と落下の関係でいえば、ウラ・アップビートが上昇、オモテ・ダウンビートが落下。こことても大事です。
この力学のルールに則って作られたのがアメリカのダンスミュージック。この前提に従わないことにはダンスミュージックにはならないし、踊ることもできない。このルールに従ってないダンスミュージックっぽい音楽を聴くとアニメの作画崩壊さながらのリズム崩壊に聴こえてしまう。関節こんな方向に曲がらないよ!とか指6本になっちゃってるよ!みたいな。
2/19
アレサのロックステディに合わせウラ拍に手拍子を入れるという宿題は、拍をどう捉えているかがわかりやすく現れるような気がします。
私の場合はもっと「訛り」を感じてウラを取りたい派。訛りというのはその音楽特有の「臭み」みたいなもんです全員で手拍子いれたときにもっと粘り気のある一体感が出ると良いです
課題
・拍のウラとオモテにおける体重移動を身につける
今までの100倍大げさに腕で円を描く。上半身の全体重をボーリングの玉に見立てて、重たいボーリングの玉が軌道上を回転してると考える。円運動の支点は肘ではなく肩!リズムにばっちりはまった瞬間にボーリングの玉がめちゃくちゃ軽くなる。
シンコペーションが来ても拍の上下が揺るがないようにするために体重移動によって動作するクリックを体に埋め込む。これは反復して会得するしかない!
・ウラとオモテをさらに16分音符に分割する
おざなりになりがちな16分ウラのタイミングをジャストにするため
課題曲
Seun Kuti – African Soldier
一曲通してウラとオモテの円運動でリズムを取ったのちに、再び一曲通して上半身で円を描きながら両手で16分を刻む。この繰り返し。この曲のドラムのパターンは目下の課題であるスイングのリズムがベースになってるのでそのことも意識すると良い。下の図でいうところの右のやつね。「タータ・タータ」ではなく「タター・タター」と取ったほうが自然です。
あとこの曲のイントロ、ちょっとした仕掛けがあるんだけど、気づきます?
2/24
クリックをシャッフルのウラとして捉える練習はなかなかおもしろいです。
さらに、シャッフルのウラ、つまり3連の一番最後の音符をきちんと捉えることで、ストレートの8ビートのウラも鍛えられるような気がします。
「シャッフルが取れない」ということは1拍を正しくウラとオモテに分けられていないということだと思います。つまり拍を上下運動として捉えられていない。
きちんとアップ・ダウンを維持しつつシャッフルでリズムを刻むことが大事です。
※大前提
とりあえず難しいことは抜きにして、一拍を三分割=三連符が刻めないことにはシャッフルにはなりません。なので、1拍を三分割するということはどういうことなのかをきっちりと覚えてください。というわけで、両手を使ってきちんと「タカタ/カタカ/タカタ/カタカ」と刻めるようになってください。
ヒント:1(RLR)2(LRL)3(RLR)4(LRL)
※駄目なシャフル
「RLR/LRL/RLR/LRL」正解はこれなんだけど、
「RL/RL/RL/RL/RLRL…??!」こうなりがち。
・宿題
シャッフルのウラをチェックするための「ウラ手拍子」課題曲です。
このようなフィーリングのリズムは我々日本人への浸透率が限りなくゼロに近いですね。こういった我々が苦手な感じだったり見過ごしてしまいがちな曲にこそリズム問題の解決への糸口があるような気もします。ちなみに演奏しているのはアメリカ南部の田舎に住む白人たちです。
この曲に合わせてシャッフルのウラで手拍子入れることはそそれほど難しくないと思います。ただ、きちんと曲にマッチした形で手拍子を入れるのはすこぶる難しいと思われます