ちょっと待ってくれないか (『私が私をやめたなら』収録作品)

自分はAmazonのKindleストアで「私が私をやめたなら」という電子書籍を販売しております。 

私が私をやめたなら

私が私をやめたなら

 

 

頭の中にある想いを書き出す方法として、詩と小説、どちらも好きなのですが、その時に込めたい感情によって心がしっくりくる方を選んでいます。

 

「私が私をやめたなら」は、自分が詩という形で表したかった想いの集合体です。

 今回は、その内の1篇を紹介したいと思います。

 

***

 

 

「ちょっと待ってくれないか」

 

あの ちょっと待って

そのままの姿勢でいいから

少しの間 話を聞いてくれないか?

 

理由なんか尋ねないよ

此の期に及んだらどうもこうもないよね

 

ねぇ フォールイン・ラヴって曲を知ってる?

ハミルトン ジョーフランク&レイノルズっていう

長い名前のバンドが歌っていてさ

本当にいいメロディーなんだ

 

じゃあトッドラングレンは?

いや違うんだ 

音楽の話をしたいわけじゃなくて 

きっと君の知らない曲がまだたくさんあると思って

 

だから

もったいないよ

 

まだまだ一杯あるんだ

ポップやロックだけじゃない 

ヒップホップも

レゲエも

ファンクも

テクノも

何曲か君に聞かせたいお薦めがあるんだ

 

待って 

ちょっと待って

 

じゃあさ 

デートとか興味ない?

ほら ベタだけど遊園地とか行ってさ

白とオレンジのカップに入った炭酸を飲むんだ

普段は手に取らないキーホルダーなんか買ったりしてさ

 

別に今の話なんかしていないよ

いつかきっとあるから

まだ制服着ているなら学生だろ?

これからいくらだってあるさ

先は誰にも分からない

 

今は友達がいなくても 

いつかきっと現れるよ

だからまだ学生だろ?

その世界が全てじゃないよ

これからいくらでもチャンスはあるさ

生まれてからまだ少ししか経っていないじゃないか

全然 完成じゃないよ

今の脳みそで考え付かない未来がちゃんとあるから

 

分かった! 

分かったからちょっと待ってくれないか!

 

「オンフルール」って言葉 

何だと思う?

フランスにある港町の名前なんだけど

もちろん行ったことなんかないよ

でも そのタイトルが付いた美しい絵があるんだ

もう凄いんだよ

長方形のキャンバスに夜の街が広がってさ

中央に大きな満月 

手前に水面

左側にはメリーゴーランドが光っている

説明だけじゃ伝わらないでしょ?

 

だったら君の目で見てみようよ

 

その絵を描いた人の世界は 

どれも暖かみに溢れているから

 

ねぇ 

もう少しだけ 

背中を柵に近づけてよ

 

映画は好き?

今度「ニューシネマパラダイス」を貸すね

君に見て欲しいんだ

つまらなかったら それはそれでいい

ただ君の心を動かす作品は他に必ずあるよ

 

じゃあ それが見つかるまで 

生きてみるってのはどうかな?

 

邦画だけじゃない

有名なヤツじゃなくても面白いものは山ほどある

迷惑じゃなければ一緒にツタヤに行こう

ネットでも選べるけど 

こういうのは実際に見て探した方が楽しいから

 

とりあえず こっち向かない?

マリオンクレープ奢るからさ

定番はチョコバナナだけど苺クリームも美味しいよ

アップルスペシャルは食べたことないでしょ?

アイスも入った豪華版

それも奢ってあげるから 

ねぇ お願いだから振り向いて

 

あのさ

実は俺 踊るんだ

一人でこっそりだけどね

何とかステップも踏めるよ

練習したら案外出来るものさ

誰にも見せなくていいからさ

こっそりやってみない?

君が踊るなんて話 絶対どこでもしないから

 

まだまだあるんだ 

君の知らないこと

一通りやってからでも

遅くはないんじゃないかな?

 

生きる場所は一箇所だけじゃない

どこでだって生活できる

文化の全く異なる世界も 

思っているほど悪くないから

 

あのね 

今はこうして俺が話をしているけど

君に声をかけるのは 

俺一人じゃないよ

 

俺があの時 肩を叩かれたように

色々なタイプの人が

色々な方法で君に声をかける

そんなこと有り得ないって決めつけないで

先は誰にも分からないから

 

とにかくさ 

今からコメダ珈琲いかない?

この時間だったら まだモーニング頼めるよ

俺がご馳走するからさ

焼きたてのトーストに手作りたまごペーストを塗ると

クセになるんだ

 

クセになろうよ

もっと もっと たくさんのことを 

クセになろう

 

先は必ずある

 

ねぇ お願いだから 

柵を越えてこっちに来て

 

甘くて美味しいシロノワールも付けると約束するからさ

 

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