●セイリブ●
●出演: ロディ・パイパー, キース・デヴィッド, その他
●監督: ジョン・カーペンター
●1988年度作品
またまた大好きな旧作のご紹介です。
この作品は大昔、ジョン・カーペンターフリークだった頃、封切り館で映画好きな友達と一緒に鑑賞。TVで繰り返し放映されたようだが、TVでは未見。この作品の良さは映画館の大画面とポップコーンの香りとともに見ないと分からないように思う。お茶の間で見る時は、お部屋を暗くして、ポップコーンを用意して見てください。飲み物はコカコーラやファンタグレープが良いでしょう(笑)。
●あらすじ
失業中のネイダ(ロディ・パイパー)は線路を歩いている。荷物は大きな袋1つ。体格の良い彼は肉体労働者だと言うことがわかる。ネイダは仕事を求めてロスアンジェルスに向かっていた。街の中心部は高層ビルが立ち、裕福で傲慢な婦人たち、ビジネスエリートの棲む世界と、彼等に奉仕する単純労働者に分かれた階層社会だった。職を探すのだが、ネイダには肉体労働しかなかった。家のない彼を迎えたくれたのは、ホームレスの人たちだった。街からスポイルされた大勢の人たち、彼等は街はずれのバラックで、貧しい生活をしていた。
ホームレスの居住地のそばに、彼等の心によりどころの教会があった。ネイダは偶然、ここで秘密のサングラスを手に入れる。このサングラスかけると、真実を知ることができるのだった。街は、拝金主義で、消費優先の価値観に人々を洗脳するサブリミナル・メッセージに溢れていた。広告掲示板や店の看板や雑誌の表紙にはすべて「服従せよ」、「消費せよ」、「自由な思考は持つな」紙幣には「これこそお前の神だ」と書いてあるのだ。一番、驚いたことは、世界を支配しているエリートたちは人間ではないらしい。サングラスで見る彼等の姿は恐ろしくおぞましいものだった。それが美しい女性だろうが、紳士だろうが、本当に姿は死神のようなのだ。
ネイダはこのサングラスは、エイリアンの秘密を暴き、世界を人間のものに取り戻そうとする地下組織が作ったものであることを知り、彼等の活動に参加する。教会はレジスタンスの集会所だったのだ。仲間とともに、人間とエイリアンがすり変わる彼等の本拠地に乗り込んだネイダは驚くべき事実を目にするのだった!?
つづきはDVDでどうぞ!
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ジョン・カーペンター監督はベタな『B級映画の王様』『B級映画の人間国宝(笑)』との、評価がある。確かにこの印象は間違っていない。CG全盛のハリウッド映画の中にあって、彼の旧作は古臭く、どこにでもあるB級SFアクション映画に見えてしまうかもしれない。しかし!しかしですね~!!この『ゼイリブ』は必見B級の傑作!B級好き&プロレス好き&SF好きなら、絶対に見て欲しい一本なのだ。
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『ゼイリブ』は18年も前の映画だが、最近の日本とリアルに重なる部分がある。この映画の公開当時、ホームレスはそんなに多くなかった。しかし一昨年の、東京都の強制撤去前の上野公園には、この映画の風景に極めて近い光景が広がっていた。上野は動物園や美術館、博物館があるので、頻繁に訪れる場所だ。ここは東京の顔でありながら、隠そうとしても垣間見える日本の暗部が潜んでいる。長引く不況で、脆弱化した政府は、弱者切り捨てで、数字の見た目だけ健全な政府、社会と作ろうとする。完全失業率が回復しようと、雇用に実体は使い捨て人材の浪費でしかない。一部の富裕層と、スーパーのちらしで特売を探す庶民層、そして住居さえ持てない社会からスポイルされた人たち…。日本には生活保護があるので、物乞いは存在しないそうだ。しかし実際は、ごみやアルミ缶集めで現金を得て、公園で棲んでいる人たちがいる。住所不定には福祉は素通りしていく。まして何か巧くコミュニケーションがとれない障害があれば、福祉は門前払いになってしまうだろう。
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大槻ケンジが唄う『くるくる眼鏡』♪ミエナイモノガミエル♪
コマーシャル手法にサブリミナル・メーッセージがある。映画のコマの中に肉眼では認識できないくらいの秒数(0,0?)でコカ・コーラの映像を挟む。そうするとその映画館の、コカ・コーラの販売数が飛躍的に伸びるそうだ。この手法は無意識下に暗示を植え付けるものなので、もちろん禁止されている。しかし、このようなベタ(汗;な方法ではなく、もっと巧妙にサブリミナルCMは使われている。綺麗なお姉さん、裕福そうな紳士、心地良いものが善であると、人は無意識に思い込んでいる。しかし、『くるくる眼鏡』をかけると、綺麗なお姉さんがどんでもなくいじわるな人物かもしれないし、裕福そうな紳士は違法な取り引きで大金を得ている悪人かもしれない。経済的なバンパイアは夜の東京の繁華街、高級なイタメシ屋、ランチが20000円を超える銀座の寿司屋でおしゃれな会話を楽しんでいる。
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カーペンター作品の作品構造は、表と裏、光と闇、2つの対立する世界観を暴くことにある。勧善懲悪のように見えて、実は、闇の世界に潜む秘教的世界観を明確にしてくれているのだ。この世は勧善懲悪では割り切れない。人は幻想の中で、その一生を終える。幻想の中身が正しいか?搾取されているだけか?主体的な人生を歩いているか?真実を見抜く目を持っているか?カオス的社会、幻想に満ちた人生を賢く生きる知恵が彼の作品には潜んでいる(オオゲサかな?)
彼の名前ジョンは荒野の預言者洗礼のヨハネ、イエスを看取る最愛の弟子ヨハネ、黙示録のヨハネたちと同じだ。そしてカーペンターはイエスの職業、大工と同じなのだ。彼は映画界のヨハネとして、現代の預言者として、メディアの真実を伝えてくれる。
やっぱりジョン・カーペンター は『B級映画の人間国宝』!?
CG以前、古いものの方が面白いかもしれません(爆)。
独特の雰囲気(お金かけていないだけ?)がありますよね。B級にもランクがあるのだ!
「遊星からの物体X」「クリスティーン」が気に入ってます。
でも私はA・c・Oさんほど深くは見いていません。