|
(1) |
性腺刺激ホルモンの分泌を抑制するため、月経が停止します。月経の停止は比較的すぐに見られるようです。長期にわたって男性ホルモンを使用し、内性器がかなり萎縮している人でも、体調を崩したり、不定期なホルモン投与により、しばしば、不正出血がおこるようです。
|
|
(2) |
長期使用により、内性器の萎縮がおこります。
|
|
(3) |
咽頭の軟骨(甲状軟骨)の肥大化による、声の低音化。いわゆる、声変わりがおこります。声変わりが落ちつくまでには、半年から2年くらいかかります。その間は声が出しづらかったり、歌が歌いづらくなります。
|
|
(4) |
あごひげ、体毛の発生、陰毛の増加がおこります。これらの発生には、個人差が大きいようです。すね毛はけっこう生えやすいようです。しかし、髭の発生は、長期に男性ホルモンを使用している方でも、まばらにしか生えない人もいます。
|
|
(5) |
陰核(クリトリス)、男性ホルモンの使用により大きくなってきます。クリトリスは、発生学的にペニスと同じものです。これを利用した、ペニスの再建手術も外国では行われています。人によっては、親指の半分ほどの大きさになり、極短小のペニスのようになります。クリトリスの増大に伴い、「パンツにあたって痛い」とか、「正面に突き出てきた」などという話もきかれます。
|
|
(6) |
体格の男性化、筋肉量の増加がおこります。男性ホルモンには、骨格の成長作用があるため、手足が大きくなったり、わずかながら身長の増加も見られる場合もあります。年齢が若く、骨の成長が止まっていなければ、肩幅が広くなるなどの、骨格の男性化もおこるでしょう。筋肉量は、骨の成長に関わらず増加します。体を鍛えれば、ボディービルダーのような体つきになることも可能です。筋肉量が増加するので、痛風持ちの方は気を付けなければなりません。筋肉量の増加に伴い、基礎代謝も亢進するので、暑がりになるかもしれません。体脂肪は、皮下脂肪型から、内蔵脂肪型に変化します。太った場合には、女性のようにぽっちゃりするのではなく、男性のようにどっしりとした感じになるでしょう。
|
|
(7) |
皮脂分泌の増加。いわゆる脂性(あぶらしょう)になります。このためニキビができやすくなり、ひどい場合には、背中からお尻までニキビができることがあります。あまりにひどい場合には、皮膚科に相談してください。
皮脂腺が活発になるため、肌のきめが粗くなり、毛穴が目立つようになります。肌自体は、以前よりも強くなります。
|
|
(8) |
頭髪の脱毛、いわゆる、はげがおこります。はげの起こりやすさは、体質にもよるでしょう。男性ホルモンの過剰投与により、著しい脱毛が起こるともいわれています。このような場合は、投与量を減らすとある程度回復するともいわれています。
はげの原因の一つには、皮脂腺の活発化が関係しているといわれています。はげ予防のため、まめに洗髪して、皮脂をよく洗い流し、頭皮のマッサージを行いましょう。
|
|
(9) |
性欲の亢進。男性ホルモンには、両性の性欲を亢進させる作用があります。しかし、性欲の亢進は、個人差が大きいようです。男性ホルモンを使う前から、性欲が強い人もいますし、男性ホルモンを使っても、性欲が亢進しない人もいます。これは人間の性欲が、動物的な本能以外に、精神的な欲求によって支配されているためだと考えられています。
|
|
(10) |
多幸症や、他の精神症状。多幸症とは、何もかも幸せな感じがする状態です。男性ホルモンで見られる、他の精神症状としては、「ぼーっとして物忘れがはげしくなる」とか、「やる気が出てばりばり仕事したくなる」ということがいわれています。特に、持続性注射剤を使っている人では、注射してから2・3日の間に、精神症状が出やすいようです。また、投与量や間隔を変えたときにも、現れる場合があります。この場合は、過剰投与の可能性があるので、投与量を減らしてください。
ホルモンを規則正しく投与していない場合にも、精神症状や、身体症状が出ることがあります。この場合は、ホルモンが一時的に切れるためおこることで、男性ホルモンの副作用とは違います。
|
|
(11) |
皮膚色調の変化。男性ホルモンを使うと、肌の色が黒っぽくなることがあります。これはメラニン色素の増加と、肌の表面があらっぽくなるためにおこると考えられます。
|
|
(12) |
肝機能検査値の異常。男性ホルモンは、胆管を細くし血中ビリルビンなどの値を高くすることがあります。また、全ての性ホルモンは、肝臓で分解されるため、肝臓自体を痛めることがあります。この場合にはGOT、GPTなどの値が高くなります。どちらの場合でも、異常値が見られたら医師と相談してください。
#ビリルビン:胆汁色素のこと。黄疸や肝障害の指標に用いられる。
#GOT、GPT:細胞内酵素の一種。特に、肝細胞が壊れたときに血液中に放出されるので、肝障害の診断に用いられる。
|
|
(13) |
血中コレステロール値や、中性脂肪の増加。いわゆる動脈硬化の原因です。男性ホルモンには、血中コレステロール値や、中性脂肪の増加作用があります。その反対に、卵胞ホルモンには、血中コレステロール値や、中性脂肪の減少作用があります。更年期移行の女性に、高脂血症が多いのも、卵胞ホルモンが出なくなるためです。
血液検査の結果。総コレステロールや、中性脂肪の値が高い場合には、高脂肪の食事を避け、適度な運動を行いましょう。
|
|
(14) |
ナトリウム、カリウム、水、カルシウム、硫酸基、リン基などの体内貯留の増加。いわゆる、塩分や、それに伴う水分が増加します。男性ホルモンを投与すると、急速に体重が増加することがあります。この場合は、体の水分が増えたのだと考えてください。高血圧になりやすくなるので、血圧の高い人や、心臓に持病のある方は注意してください。もちろん、男性ホルモンの作用により、筋肉がつきやすくなるので、徐々に水分以外の体重も増加します。
参考までに、同じ体積の場合、筋肉の重さは、脂肪の約2倍です。体形があまり変わらなくても、脂肪が減り、筋肉が増えれば、体重は増加します。
|
|
(15) |
膣の機能低下。男性ホルモンを、長期にわたって使用すると、膣が萎縮し、内膜が減少し、自己浄化作用が低下します。そのため、単純細菌による、膣感染症を起こしやすくなります。抗生物質の使用で簡単に治りますが、恥ずかしさのあまり、病院に行けないので、悪化させる可能性があります。粘りけがあり、白や黄色っぽいおりものが何日も続くようでしたら注意してください。
|