南北戦争で南軍の英雄だったロバート・リー将軍の銅像を市内の公園から撤去しようとする計画に白人の極右団体などが反発し、アメリカ南部のバージニア州シャーロッツビルに集結した際に、極右の若者が反対派に車で突っ込み死者1名と多数の負傷者が出た。この事件に対し、トランプ大統領が「一方の集団は悪かったが、もう一方の集団もとても暴力的だった」などと“喧嘩両成敗”的な発言をしたことで、「人種差別」とのはげしい非難にさらされることになった。
シャーロッツビルに集まったような「極右」の白人たちは、アメリカのエリートから「レイシスト」のレッテルを貼られて毛嫌いされている。だが『ニューヨーク・タイムズ』のコラムニスト、デイヴィッド・ブルックスは、彼らを「保守的な白人アイデンティティ主義者」と呼び、人種差別と共通する部分もあるが、両者は同じものではないと述べている。
米国公共宗教研究所の調査では、共和党員の約48%が米国のキリスト教徒が多くの差別を受けていると思い、約43%は白人が多く差別を受けていると考えているのだという。この調査を受けてブルックスはいう。
「人種差別というのは、ほかの人が自分より劣ると感じることだ。白人アイデンティティ主義は、自分が虐げられていると思うことなのだ」(朝日新聞2017年9月8日付朝刊「コラムニストの眼」)。
「白人アイデンティティ主義」は人種主義の一種ではあるものの、それを一概に「人種差別」と決めつけることはできない。彼らは、「自分が白人であるということ以外に、誇るもの(アイデンティティ)のないひとたち」なのだ。
「白人は差別されている」
朝日新聞8月29日付朝刊の「再びうごめく白人至上主義 デモ衝突で犠牲者 米に深い傷」は、今年4月にアパラチア山脈の町、ケンタッキー州パイクビルで行なわれた白人至上主義団体の集会を金成隆一記者が取材し、シャーロッツビルの事件を受けて掲載したものだ。
パイクビルは人口7000人ほどで、「住人の98%超が欧州白人」「子どもの3人に1人、高齢者の5人に1人が貧困層」「トランプ氏の得票が8割を超えた」という、典型的な「貧しい白人たち」の町だ。ここで白人至上主義の団体が集会を開くのは、現状に不満を抱える白人労働者を勧誘するためだ。
彼らは腰に銃やナイフを携行し、ライフル銃を担ぐ者もいる(アメリカは憲法で国民が武装する権利が認められている)。KKK(クー・クラックス・クラン)や、ナチスと似た「国家社会主義」「神の兵士」「戦うキリスト教徒」を名乗る団体もいる。その異様な姿は、まさに「白人至上主義」そのものだ。
ところが記者の質問に対して、団体幹部は自分たちの主張をこう説明する。
「米国で白人は優遇されてきたと言われるが、この一帯を車で走れば、違うとわかる。彼らの声は代弁されていない。エリートに見捨てられた白人だ」
「白人やユダヤ人のエリートに虐げられているのは(黒人やヒスパニックら)人種的な少数派と思い込む人が多いが、この産炭地では白人も被害を受けている。帝国主義時代の植民地のようだ」
ここからわかるのは、ブルックスが指摘するように、彼らが「白人は差別されている」と考えていることだ。
町での示威行動のあと、「白人至上主義」団体は山奥の私有地での集会に移動した。金成記者がこの集会を取材した場面はきわめて興味深いので、その部分を引用しよう。
会場は白人ばかり。記者は好奇の目にさらされたが、日本から来たと自己紹介すると彼らの態度が変わった。敬礼する者もいる。
KKKの名刺を差し出してきた若者が言った。「私は(戦前の)帝国主義時代の日本を尊敬している。みんなも同じだ。どの民族にも固有の文化があり、尊重されるべきだ。日本は模範だ」
白人の優越を信じているのかと質問すると、口々に否定した。「日本人にIQテストで勝てないのは自明だ」。一人が冗談っぽく答えると、隣の男性がまじめな顔で続けた。「私の本業は自動車の修理工だが、日本車の方が米国車より優秀だ。白人の方が優れているというつもりはない。ただ、それぞれの民族が固有の土地を持つべきだと言っているだけだ。
「白人の優越」を否定し、「日本は模範だ」「日本車の方が米国車より優秀だ」という彼らは、はたして「白人至上主義」なのだろうか。
このやりとりでわかるのは、そもそも彼らは自分たちが「人種差別」をしているとは思っていないことだ。そんな彼らに「レイシスト」のレッテルを貼って批判しても、話がかみ合わないのは当たり前なのだ。
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