「ジョブズが生きていたら…」という言説への違和感
iPhone8とiPhone Xが発表されましたね。私もiPhone Xがほしいです。しかし、全面有機ELパネルにこだわったためにフロントカメラ・センサー付近に逆モヒカンのような画面の凹みがあります。またiSightカメラはiPhone7同様に凸起があって、その部分ではかなり微妙なデザインになっています。
毎回のことですがApple製品に残念な部分があると「ジョブズが生きていたらこんなiPhone・Macは絶対に出さなかった」「ジョブズが生きていたら物理で殴るレベル」などのように天才スティーブ・ジョブズの名を使って現在のAppleの迷走を嘆く人々が出ます。
「全てが新しくなった」「世界に革命を起こす」新製品としてAppleから大本営発表されたiPhoneやMacが大して変わり映えしなかったり、TouchBarのような余計なUIがついていたりすると必ず出現してジョブズの不在を嘆く人々です。
しかし、スティーブ・ジョブズが生きていたら本当にこんなiPhoneやMacは出さなかったのでしょうか?
ジョブズが送り込んだコンセプトが微妙な商品
現在のスティーブ・ジョブズの神格化は凄まじく、世界を永遠に変えたジョブズの偉大さを称えなければ空気の読めない奴になる同調圧力は強いです。なぜか日本だけiPhoneのシェア率が高いので、我が国では特にiPhone以降のApple製品でジョブズを神格化する草の根林檎厨がすごく増えたように思います。
しかし、1997年にジョブズがAppleに復帰して以降で見ても、かなりデザインコンセプトが微妙なApple製品を多数世に送り込んでいます。ジョブズとて絶対の天才ではなく、迷走していた時期も多いです。以下に紹介していきます。
iMac G3。スケルトン。内部の構造が透けて見えます。透けて見えることに機能面の意味はありません。自作PC厨にもたまにケースをスケルトンにしている人がいます。
マウスもなぜかスケルトン。
2001年のiMac。お花のカラーバリエーションも追加されました。
iBookクラムシェル。貝殻っぽいデザインが採用されました。おにぎりにも似ています。キーは凄く打ちにくかったです。
iBookのカラーバリエーション。
PowerMac G3。灯油を入れる時に使われるポリタンクと呼ばれました。
MacBook ポリカーボネートモデル。パームレストが割れやすく変色もしやすかったです。
iPod Classic。iPodのストレージをハードディスクにした廉価版。デカいです。
これらの製品をもしジョブズ不在の時にAppleが出していたら、「ジョブズだったらこんなMacは出さない」と嘆かれていたかもしれません。
ジョブズが偉大だが、無謬の慧眼の持ち主とするのは歴史修正主義
ジョブズがMacやiPhoneで世界を変えたことは間違いないでしょう。特にiPhone発表以降の彼は神憑っていました。しかし、ジョブズの慧眼を絶対無謬のものとして神格化するのは正しくありません。ジョブズもまた1人の人間であり、過去には新製品の判断を間違えたり、デザインが微妙であったり、余計なつけたしをしてしまったことがあります。そのことに目をつむって良い面だけを強調するのは歴史修正主義でしょう。
ジョブズが偉大なことに変わりはないですが、「ジョブズが生きていたらこんな商品は出さなかった」と嘆く人達はもっとジョブズの過去の商品に触れた方が良いと思います。そしてその光と影も踏まえて世界を永遠に変えたジョブズを愛しましょう。
その愛があれば「ジョブズが生きていたら…」という考えは出てこないと思うのです。