きっかけは病院の待合室だった。子供を病院に連れて行ったときのこと。待合室に置いてあった雑誌を何気なく手に取った。タイトルは「泣ける日本の絶景88」。その中の一枚、熊野の写真に目を奪われた。
その写真は山のいただきが何層も重なり、手前の濃紺から奥の空色まで、恐ろしく綺麗なグラデーションを描いていた。いつかこんな写真が撮りたい。そう強く感じた。
あれから5ヶ月が経ち、熊野を訪れた。名古屋から行くと、和歌山の新宮駅まで高速バスで約4時間。そこから熊野古道の入り口まで路線バスで約1時間だ。
今回歩いたのは、熊野古道の小雲取越ルート。
小雲取越は西の「小口」から登るルートと、東の「請川」から登るルートがある。私が選んだのは請川から登るルートで、目的の「百間ぐら」までは歩いて約3時間の道のりだ。
請川から登る際は入り口に注意して欲しい。和歌山観光協会の拡大マップでは、国道165号から北に曲がる道が入り口になっている。マップを見るとその道は幅があるように感じるが、実際は下の写真で巡礼者が登っている小さな石段が入り口だ。降りるバス停もマップでは「請川」となっているが、実際は隣りの「下地橋」が一番近い。
この石段のすぐ右隣りに広い道があり、私はそちらに進んで30分ほど歩いてしまった。水たまりなどを無駄に撮りながら、何かおかしいと感じて引き返したのだが、おかげで時間をロスして体力も消耗した。
入り口さえ見つかれば、百間ぐらまではほぼ一本道だ。先のマップを見れば問題なく進める。
熊野古道は熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社へと通じる参詣道の総称で、三重県、和歌山県、奈良県、大阪府をまたいでいる。
全長は600kmを超え、紀伊路、小辺路、中辺路、大辺路、伊勢路に分けられている。小雲取越ルートは中辺路の一部で、千年以上前から参拝者が歩いてきた路だ。
請川から百間ぐらまでのアップダウンはそれほど激しくないが、最初のロスがジャブのように効いて、なかなか厳しい道のりだった。
それでもなんとか百間ぐらに到着。
この先の絶景は次回の記事で。
撮影カメラ
撮影地