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ついにデフレ脱却の兆しとなる、ある「重要な数字」が現れた

まだ結論付けるには早いけれど

デフレ脱却に向けて

4-6月期のGDP2次速報では、実質GDP成長率が、季節調整済み前期比年率換算で+2.5%と1次速報の+4.0%から下方修正された。

その理由は、法人企業統計季報の結果をうけ、設備投資が大幅下方修正されたことによる(1次速報では前期比+2.4%→2次速報では同+0.5%)。1次速報値での設備投資は伸び率が高すぎた印象があったので、2次速報によって、落ち着くところに落ち着いた印象が強い。

だが、設備投資は決して「弱い」わけではない。4-6月期の法人企業統計をみると、製造業は前年比-7.6%と大幅に減少したが、非製造業は同+6.9%と3四半期連続の増加となっている。

製造業は、為替レート変動や市場特性、およびグローバルな税制の歪み等の要因によって、生産拠点を海外に移す動きが長期的に続いており、国内の設備投資が大きく拡大していく余地は限定的である。むしろ、注目すべきは、サービス業等の非製造業の設備投資であると考える。

非製造業の設備投資動向は、それが直接的、短期的に国内需要の拡大に寄与するだけではない。非製造業の設備投資動向は、将来の国内需要の成長期待とも関連している。

卑近な例をとれば、最近の人手不足傾向の中で、非製造業を中心とした国内産業が、省力化投資をいかに推進するかが、今後の日本経済における生産性上昇、ひいては潜在成長率の上昇の鍵を握っているといっても過言ではない。

その意味で、最近の設備投資が製造業よりも非製造業主導で拡大トレンドにあり、4-6月期もそれが維持されたことは、日本経済に、デフレ脱却に向けたポジティブな動きが続いていることを示唆する結果であり、前向きに評価してよいと考える。

 

設備投資の動きはまだ初期段階

そこで、法人企業統計で、非製造業の設備投資を業種別にみると、増加に大きく寄与しているのは不動産業、および建設業であることがわかる(図表1)。

不動産業の設備投資の多くは土地の取得ではないかと考えるが、不動産業および建設業の設備投資が顕著な拡大基調に転じたのは、2016年4-6月期以降である。これは、日銀によるマイナス金利政策の導入以降である。

筆者はマイナス金利政策については否定的な見解を持っているが、マイナス金利政策は、実体経済面でみれば、住宅投資の拡大および関連業種の設備投資の拡大を通じた、景気浮揚効果はあったことになる(これに加え、建設業の設備投資については、2016年10-12月期、2017年1-3月期の増価が顕著であり、これは公共投資の拡大によるところが大きいのかもしれない)。

住宅・建設関連の設備投資に関しては、「省力化」という側面は小さく、また需要の先食いという側面もあり、デフレ脱却に関連づけるのではなく、短期的な景気下支えといったように、もっと慎重にみておくのがよいのかもしれない。

だが、それを割り引いても、4-6月期には、情報通信業、サービス業などの設備投資も拡大している点はポジティブである。この業種は、省力化投資に関連する設備投資である可能性が否定できないと考える。

従って、設備投資自体の動きは、まだ初期段階ながら、デフレ脱却および将来の成長期待の復活に向けて、前向きな動きが続いているのではないかというのが、筆者の考えである。