橋本龍太郎や福田康夫を生んだエスタブリッシュの麻布は、規格外の官僚をも生む大らかさがある。かたや「秀才型」の開成は、鉄の結束で霞が関を支配しかけている。両校OBの官僚の暗闘を追う。
今年8月、発起人代表に「政調会長・岸田文雄」と銘打たれたパーティの案内が霞が関の一部の官僚に送付された。
「永霞会(永田町・霞が関開成会)(仮称)設立総会のご案内」だ。
送付先は名門・開成高校出身の国会議員とキャリア官僚、総数600名以上。「ポスト安倍」を窺う岸田文雄政調会長は、もちろん開成出身だ。
「長年の野望だったんです。せっかく各省庁で開成出身者の飲み会をやっているんだから、開成全体で集まる機会があってもいいと思いましてね」(事務局を務める元建設官僚・井上信治代議士)
開成のライバル校・麻布高校出身の現役官僚はこう突き放して言う。
「また開成が群れてるらしいですね。政局が動いているこの時期に、岸田さん発起人で霞が関全体のパーティをやるなんて、全体主義の開成らしいですよ。
僕の省なんて、10年以上麻布OBの会なんてやってないのに、開成は毎年どの省でもやってる。どこまで群れるのが好きなんでしょうか」
36年連続で東大合格者数日本一を誇る進学校・開成にとって、永遠のライバルは麻布だ。
今年の東大合格者数では開成が161名、麻布が79名。同じ東京に位置し、中学入試が同日の2月1日に行われるうえ難易度はほぼ同程度。しかし両校には校風に極端な差があるため、お互いを意識しやすい。
中高時代のライバル関係は、やがてキャリア官僚になっても変わらないどころか、最近それが激化している。
麻布OBの前文科事務次官・前川喜平氏が記者会見を行ったとき、開成OBの総務官僚は舌打ちしてこう言った。
「また政権に弓引いてさ。これが麻布の典型だよな。空気を読まないで」