論文っぽいタイトルを付けてみました。
自分でも何を言っているかイマイチ分かっていないタイプのやつです。

ただ、今後、タレントに求められる技術について、そこそこハッキリと見えているので、そのことを簡単な言葉でお伝えします。
詳しくは『魔法のコンパス』に書いているので、そちらをご覧ください。
僕のことを昔から応援してくださっているファンの方には、かれこれ10年以上言い続けていることで、今回も懲りずに同じ話をするので、呆れてください。


さて。

僕は、ずいぶん昔に「もう、ひな壇に出ない」と宣言しました。
理由は二つ。
①「そもそも、ひな壇で立ち振る舞える程の才能が自分にはないから」
②「『ひな壇』というシステムの未来が見えなくなったから」

細かく言っていくと、もっとたくさんあるのですが、まぁ、大きくはこの二つです。

①に関しては、説明の必要もないでしょうが、丁寧に説明します。

全て分業制で回っている社会において、「苦手を克服する」という作業は無駄が多いと僕は考えます。
オール『4』の通知表が誉められるのは、学生時代までで、プロの世界に入ると各分野の『5』しか求められません。
なので、『1』を『3』にする努力や、『2』を『4』にする努力をするぐらいなら、『1』と『2』の部分を切り捨てて、『3』を『5』にする努力を僕は選びます。

芸能界に限らず、あらゆる現場は基本「村社会」ですから、皆が同じ努力をしているのに、一人だけ違う努力をすると、「皆がやってるんやから、オマエもやれよ」という猛烈なバッシングがスタートしますが、お得意のフルシカトを決め込みます。
あまり、しつこく言ってきたら「オイ!」と言います。

バッシング(吊るし上げ)は一見、ダメージを受けているように見えますが、一方で、「参入障壁を上げる」という超絶メリットがありまして、「ひな壇に出ない」ということで同業者や国民の皆様からフルボッコに遭っている現場を目撃したタレントさんは、「ひな壇に出ない」という選択をしにくくなります。
なので、「ひな壇に出ない」と宣言して10年以上経ちますが、未だに「ひな壇に出ないタレント」は現れません。

個人的には、これを「バッシングの有効活用」と呼んでおりまして、SNSで「ひな壇に出ないなんてサイテー」などというコメントが回ってきますと、1秒でリツイート&シェアします。

話を戻します。

つまり、「ひな壇は苦手だから、やらねー。やらねーも何も、できねーし!」というのが、ひな壇を辞退した一つ目の理由です。


そして、二つ目の理由、
「『ひな壇』というシステムの未来が見えなくなったから」
…こちらが今回の記事の本題です。

先に言っておきますが、ここからお話するのは「面白い/面白くない」の話ではありません。
この話をする度に、文章を切り取られ、編集され、「キンコン西野が、ひな壇を批判!」といった記事が躍り、アホの犬どもが真に受けてしまうので、「そういう話ではないよ」と、あらかじめ念を押させてください。

これは僕の個人的見解ですが、これから「ひな壇」というシステムは、かなり苦戦すると思います。

その理由を説明するには、その前に、「ひな壇」というシステムが普及した理由から勉強すると、「ああ、一理あるな」と思っていただけるかもしれません。

海外のテレビ番組がどうだったかは知りませんが、少なくとも日本のバラエティー番組では、1980年代には「ひな壇」というシステムが存在しました。
(※当時、「ひな壇」とは呼ばれていませんでしたが)
『天才・たけしの元気が出るテレビ!』のスタジオトークなんかも、「ひな壇」ちゃあ、「ひな壇」です。
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しかし、当時、この形が普及していたかといえば、そうでもなく、数える程しかありませんでした。

僕らが「ひな壇番組」を頻繁に目にするようになったのは、2000年に突入してからです。
1980年代からかった「ひな壇」が、2000年に入って急激に普及した、その理由とは一体何だったのでしょう?

僕はデバイスシフトだと考えます。

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箱形だったテレビが、薄型に代わり、各家庭に一気に薄型テレビが普及しました。
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これにより、テレビの画面面積が急激に拡大。
昔じゃ考えられなかった40インチなんてのが、もう当たり前になりました。

テレビの面積が増えると、当然、登場人物が増えないと、画的にバランスが良くありません。
逆に言うと、登場人物を増やしても、バランスが崩れません。
ここで言う「バランス」は、「面白い/面白くない」ではなく、「見やすい/見にくい」です。

テレビの画面面積が拡大したので、登場人物を増やしても、見にくくありません。

というわけで、引っ張り出されてきたのが「ひな壇」です。
これだけタレントを並べていれば、内容的に大ハズレはありませんし、どれだけ並べても大丈夫。
なんてったって、画面面積が大きいので。

ここまで「ひな壇」を普及させたのは、もちろん才能あるテレビマンの努力もさることながら、その張本人は「薄型テレビ」だと僕は考えます。

さて、すっかり根付いた「ひな壇」ですが、ここに時代の波が押し寄せます。
『スマートフォン』です。
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人々は、テレビ番組をスマートフォン(YouTube等)で観るようになりました。

スマートフォンの画面なんて、せいぜい数センチです。
この小さな小さな画面に、登場人物の多い「ひな壇」は、「面白い/面白くない」ではなくて、シンプルに「見にくい」です。
細かい表情が確認できません。

一人で喋っているYouTuberさんの番組の方が「面白い/面白くない」ではなくて、「見やすい」です。

箱形テレビから薄型テレビに変わった時もそう。
「面白い」を選択してきたと自負している我々は、実は常に「見やすい」を選択しているのはないか?という考察です。

となってくると、デバイスがスマートフォンに移った今、「ひな壇」は少し厳しくなってくるかもしれません。
「ひな壇」というよりも、「登場人物の多い番組」と言った方がいいかもしれません。

画面の小さいスマートフォンがテレビ番組のデバイスとなった今、これからテレビ番組の登場人物は、極端に減るのではないか?というのが僕の予想です。
個人的見解なので、「へぇー」ぐらいに聞き流してください。

今回の記事のタイトルは、
『デバイスシフトによる、タレントに求められるスキルの変化』
です。

というわけなので、最後は「分かったから、タレントに求めれるスキルは何なんだ?」という質問の答えに向かわねばなりません。

僕なりに答えを出します。

登場人物が多かった時代のテレビに求められたタレントのスキルは『瞬発力』でした。
話を振られて、パッと答える。
または、パッと突っ込める。
そんな、「人がたくさんいても、埋もれずに前に出る力」です。

ただ、これからの時代(画面に登場する人数が少なくなる時代)は、
「前に出る」も何も、その場を任せられたら、あとは「基本的には自分が前に出ずっぱり」という状況になるので、タレントに求められるスキルは「オマエ、一人で何分持たせられるの?」という『持久力』です。

薄型テレビからスマートフォンへとデバイスシフトにより、タレントに求めれるスキルは『瞬発力』から『持久力』に変わった、というのが今回の結論です。

適当にタイトルを付けて、加筆修正一切抜きの一筆書きで書いて、そこそこ納得できる答えに着地する辺りが「天才」と呼ばれてしまう理由なのでしょう。
本当にすみません。



フィンランドより、西野がお届けしました。
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