大量の流木が橋に引っ掛かった福岡・大分豪雨の被災地=7月12日、日田市 福岡・大分豪雨を踏まえ県は12日、河川の防災対策を強化する考えを明らかにした。各所で氾濫を引き起こした流木被害を防ぐため「スリット(隙間)」がある砂防ダムの整備を進める。大きな被害が出た日田市の大肥川や鶴河内(つるこうち)川では川幅を広げる改良復旧工事に向け、国と協議をしている。 豪雨では、日田市や中津市の山間部を中心に記録的な雨が降り、スギやヒノキなど大量の倒木が河川に流れ込んだ。流木は川の橋などに引っ掛かって水をせき止め、周辺に浸水被害をもたらした。福岡県朝倉市では流木の勢いで押し流された家屋もあり、流域に散乱した巨木は復旧工事の妨げにもなった。 スリットダムは堤防部分が金属製の柵となった構造。通常の砂防ダムは、水に浮いた倒木が堤防部分を乗り越えてしまうが、柵の間から水を通すことで受け止めることができるという。 県内では1991年の台風19号などで風倒木の被害が大きかった地域を中心に導入が進んでいる。国は2013年の東京都・伊豆大島(大島町)の豪雨災害を教訓に、スリットダムの整備を都道府県などに勧めている。 県は今後、流木の発生状況を調査し効果的な設置場所を検討する。整備は1基当たり数億円かかるため「数年をかけて、計画的に配備する」との方針。流木自体を発生させないよう、スギなどに比べて倒れにくい広葉樹の植林にも取り組む。 12日の県議会本会議で広瀬勝貞知事は志村学(自民)、原田孝司(県民ク)両氏の質問に対し、「スリットダムの設置や流れを阻害する橋の架け替えなど治山、砂防、河川の各分野で連携して対策を進める。ハード整備だけでなく、水位計や監視カメラによる防災情報の発信強化や避難訓練などソフト面も強化していく」と述べた。