カウンセリングルームブログのよく読まれている記事ランキングをリライトして紹介したベスト10の中には、親子関係、アダルト・チルドレンといった、「大人になった現在に影響している」と考えられる内容の記事が半数以上を占めました。
ここに再度すべてのランキングのリンクを掲載します。
(*リンク先はリライト後のこのブログ内の記事です)
1.娘から絶縁 修復できますか? 17,915
2. 学校を辞めたいという子 17,731
3. 後追い息子、育て方間違い? 17,570
4. 発達障害、どうして? 15,452
5. アダルト・チルドレンだと何が問題? 13,919
6. 子どもにキレそうな時、どうしたら抑えられるでしょうか? 8,250
7. お母さんの自立(親離れ) 7,437
8. “アダルト・チルドレン”② 『子ども時代に負わされた“心の傷”の責任を、自分から完全に切り離す作業』の重要性 7,341
9. 母親が重荷です 6,189
10.“アダルト・チルドレン”① 『認識されにくい虐待』 4,767
ボクのカウンセリングルームで行うカウンセリング・セラピーの目的こそ、
- 現在の自分に影響をおよぼし続けている心のダメージが、幼く無力だった頃の出来事や親子(身内)・対人関係の中にあることを認識する
- インナーチャイルド・ワークによってそれを感じなおし、本当は感じていた感覚や気持ち、意志を拾い、表現することで解放する
- 過去の出来事や相手との関係性が、今の自分の症状や問題とどのようにつながっているかを理解していく
ことです。
著書『ママ、怒らないで。』にはその過程を詳しく掲載しているのです。
それだけではありません。
子どもの頃の自分が追わなくてよかった責任、
例えば
「愚痴の聞き役」
「夫婦の仲裁役」
「弟妹の面倒見役」
「良い子でいること」
など、負わされたことで喪失した『自分らしい自分』『安心・安全なはずの子ども時代』に対する親が果たすべきだった責任、
つまり本来親が『子どもを産んだ親』『子どもをつくった親』としての責任の範疇で果たされるべきだった役割(責任)を、自分から切り離し、責任の所在を本来負うべき相手にお返しする、
という目的で『手紙を書くこと』を大切にしています。
手紙は出すためのものではありません。
あくまでも、
- 『自分のせい』という自責の念や罪悪感、劣等感を抱きやすいなどの苦しみや問題は、植えつけられた種によるものであって、『幼く無力だったあの頃の自分は決して何も悪くなかった』ということを認識すること
- そして、当時言えなかったことを大人になって知力・言語力を身につけた今の自分が代弁してあげること
- 責任の所在を明確にしてお返しすること
そうすることで、いつまでも親のせいにし続けて消耗することなく、精神的に分離・自立して、自分の人生を自分の責任で、自分の足で歩き出すための手紙です。
手紙は出すためのものでなくても、実際に出して読んでもらうつもりになって、完成させるようにします。
傷ついた子どものままだった自分(インナーチャイルド)に力が与えられるだけでなく、自分の心と誠実に向き合って文章化した気持ちや訴え・独自の考えに基づく信念は、いざ自己表現・自己主張が必要な場面で活かされるものです。
そのような体験が重なると、自信が身についていくことを実感されることと思います。
また、一度だけでなく、数ヵ月後に再度、さらに数ヵ月後に再々度と、数回取り組むことで、手紙の内容とともに、心を成熟させていくことができます。
ここで、著書『ママ、怒らないで。』に掲載している、ある子育て中のママが書かれた「母親への手紙」を紹介したいと思います。
(*ご本人の許可を得ています)
(*実際に手紙を出すことにはリスクが伴うことがあります。私どもではその責任を負いかねますことを明記しておきます)
なお、著書『ママ、怒らないで。』は、読者層を拡大する必要があったため、手紙原本の一部の掲載を控えました。
しかし、この記事においてはあえて、『ママ、怒らないで。』で掲載を控えた部分(赤字)も掲載することにしました。
すべての方にとって役立つもの、良いものと感じられるものではないと思いますので、その点ご了承のうえ、必要と思われる方、興味をお持ちの方にご参考にしていただければと思います。
母への手紙
母へ (両親との対話を重ねてきた40歳のママによる手紙)
改めて、母親であるあなたへ伝えなければならないことがあります。
長い間、私が抱えてきた苦しみや生きづらさ、事あるごとにまとわりつく罪悪感は、ただ自分が未熟だからなのだ、としか考えていませんでした。
しかし、それらが実は、“あなたがた親に起因している”、そのような概念と出会い、私に変化が起こったのです。
現在の私の気持ちや考えを言葉にして、この手紙に記すことにします。
私はいつからあなたに気持ちを伝えなくなったのでしょう。
それが何よりもいけなかった。
良いことだったら、あなたが喜ぶことだったら伝えられた。
しかし、あなたが悲しむこと、困ること、そしてムッとするような、あなたにとって都合の悪いことは伝えられない。
それが何よりも良くなかった。
「お母さん、私は痛くて泣いているのに、悔しくて泣いているのに、悲しくて泣いているのに、それくらいのことで泣かないの、と言わないで!」
「お母さん、いつお母さんが怒り出すか、私、怖くてビクビクしているよ。お願いだから優しくして! 優しく笑って!」
「お母さん、もっと私のことを見て! かまって! 粗末にしないで!」
幼い私には、このような本当の気持ちや願いを言葉にする力がなかったのです。
あなたの反応によって傷つくのが怖かったのだとも感じています。
あなたの圧力や心ない反応に対し、幼かった私はあまりにも無力でした。
幼く無力であなたに気持ちを受け止めてもらう術を持たなかった私の心は、いとも簡単に裏切られ、傷ついたのです。
そしてそのことがトラウマとなって、これまで私の人生を支配してきました。
人に甘えることができない。
人を信じることができない。
我慢ばかりを選んでしまう。
自分さえ我慢すれば良いと自分を犠牲にしてしまう。
人にどう思われるか、嫌われるのではないか、顔色が気になって自分らしく生きられない・・・。
あなたから負わされた心の傷がもたらした私の苦しみは、これらのようなことの中にあるのです。
あなたは、このことについて、「何もかも親のせいにしないで」と言うかもしれませんが、無力だった子ども時代の私に、悪気は無くとも心に傷を負わせた事実、そのトラウマが現在まで悪影響を及ぼし続けているという事実をあなたは受け止める責任があります。
私はこれまで、それらのすべてを自分のせいだと思ってしまって生きてきました。
私が負わされた苦しみの責任は、あなたにすべてお返しし、私本来の自分らしさ、自分の人生を生き直したいのです。
私が、カウンセリングや本を用いて解決に取り組んだのは、アダルト・チルドレンの問題です。
アダルト・チルドレンとは、子どもの頃に親との関係の中で受けた悪影響の結果、成長してもなお精神的影響を受け続ける人々を指したもので、ほかにも以下のような特徴があります。
- 対人関係が苦手、情緒が安定しない、何かに縛られて息苦しいなどといった生きづらさについて、「自分のせい」「自分が悪い」「ダメな人間だ」と自責的であるが、実はその生きづらさは、親との関係に起因したものである。
- 幼少期から、寂しさ・悲しみ・怒りなどの負の感情を受け止めてもらえず、我慢を強いられてきたため、自分の本当の気持ちを感じ取ることができなくなっている。
- 親(大人)の考えや価値観を取り入れながら育ったことで、子どもの頃から大人化されていて、親や大人側のみに立ったものの見方しかできなくなって子ども側の気持ちがわかってあげられない。
アダルト・チルドレンから回復するためのカウンセリングの中で明らかになった問題で、最も重大だったのは、
知らず知らずのうちに溜め込まれていたあなたがた親への怒りや、あなたがたとの間で満たされなかった要求(欲求)が、夫や子どもに向けられていたという事実でした。
対人関係で引き起こされる感情自体、あなたがた親に起因したもので、それが置き換わって、呼び起こされることで心が簡単に波立ち、不安を起こし、イライラや怒りを誰よりも大切なはずの、自分が作った家族に向けてしまうのです。
同じようにあなたも、あなたが私に向けた怒りは、本当はあなたの親に向けるべきものだったのではないでしょうか。
以前私があなたの幼少期について尋ねた時、あなたは親は厳しかったけど、親は親なりに色々大変だったと思う、感謝している、と言っていました。
しかし、私には、幼かったあなたの悔しさ・寂しさ・悲しみ・怒りが、未解決のまま放置されているのがわかるのです。
私が抱えてきたアダルト・チルドレンの問題は、私だけの問題ではなく、あなたのルーツによってあなたに受け継がれた、あなた自身の問題でもあるのです。
そして、私の心の傷の深さはあなたの過ちの深さです。
どのような理由があっても、罪の無い大切な家族を傷つけた事実と向き合い、その過ちは清算しなければなりません。
私自身も、自分が作った家族を傷つけた私の怒りの原因がたとえあなたによって植えつけられたものであったとしても、私自身が責任を負って清算し、取り戻さなければならないのです。
あなたがたに歪められ、濁された心に直面し、それを回復させる作業も、どれほど苦しく大変なものであるか。
あなたにはそうして清算する意志が持てますか?
私がこうしてあなたに伝えようとしていることの意味を理解し、その事実と向き合うには、あなたに受け継がれたアダルト・チルドレンの問題を切り離すことはできないでしょう。
そして、あなたが、あなたの心の中に置き去りにしたままの傷ついたあなた自身と向き合い、私の痛み苦しみを、自分のものとして感じ取ることで過ちが精算されない限り、私とあなたとの関係性が変わることはないのだと思います。
つまり、あなたに問われている清算の方法は、あなた自身にアダルト・チルドレンが受け継がれていることを認め、あなたのルーツによって歪められ、濁された心に直面し、それを回復させる作業に取り組むこと。
それに尽きるのではないかと私は思います。
ただ、現在の私は、あなたに望むこと、求めるものは何もありません。
あなたが清算すること、切り離してしまうこと、どちらを選んだとしても、これからの私の人生には影響を受けない生き方を私は選ぶ必要があるからです。
いずれにしても過去は変えられません。未来のためにできることは、親から子へと受け継がれてきた『誤った信念』(親や上に立つ人の都合となった)や、苦しみの種を育ててしまう『負の連鎖』が、自分のルーツ(家系)にあることを直視し、しっかりと断ち切ることです。
私は、本当の自分で生きるために、そして自分の作った大切な家族に対し、毒にならない妻であり母親であるために、あなたや、そのルーツから受け継いだ『負の連鎖』をここで断ち切ります。
まとめ
この手紙は、「自分はこんなふうに感じていたんだ」というありのままの事実と向き合い、幼い自分が感じていたことには、正解も間違いもなかったという考えに至って書かれたものです。
親や身の周りの大人から刷り込まれたことで身についた義務感や期待に応えられないことの罪悪感、〝当たり前という名の常識〟が、自分をどれほど圧し、自由を束縛してきたのか。
その現実を客観的に見つめ、認識を深めていくことで、自分の本当の声が聞こえ始めました。
それによって、力を失いかけていた、傷ついた子どものままだった自分(インナーチャイルド)が成熟した大人へと成長を始めたのです。
そうして取り戻されてきた〝本来の自分〟が、傷ついたまま取り残されている子ども時代の無力な自分に代わって正面から相手に意見を伝えるような立ち位置で書かれた手紙です。
このように、無力で自分を守る術を持ち得なかった子ども時代の自分を守ってあげるには、親から独立し成熟した大人としての客観的な見方・投げかけが重要なカギとなるのです。
『手紙書き』を通して、
これまで心の苦しみを作り出していた、『恐怖』の種が、過去のどのような状況で誰によって植えつけられたものであったか、
「子ども時代に負わされたトラウマや、それに付随する「怒り」「恐れ」「悲しみ」「罪悪感」「自責感」などの感情の責任は、子どもの時の自分には無かった、自分は悪くなかった」などの理解が深められることで、対人関係で起こる相手への「反応」が『過去の再現』であることに気がつくようになります。
そして、感情的に呑み込まれていた自分を卒業し、大人としての「対応」を身につけていくことで、相手の心・顔色・圧力などに対する恐怖が軽減されていきます。
手紙書きによって、獲得するチャンスを奪われてきた自己主張力が養われれば、親や身内との対話に限らず、対人関係全般が次第に楽なもの、建設的なものに変化していくのです。