今大会を最後に現役引退を表明していた伊達公子(46=エステティックTBC)が初戦でアレクサンドラ・クルニッチ(24=セルビア)に0-6、0-6で敗戦。これが現役最後の試合となった。

 試合後には急きょセレモニーが行われた。高校の後輩で「伊達2世」と呼ばれた浅越しのぶさんから花束を送られ、伊達はホロリと涙を見せた。

 マイクを握った挨拶では笑顔で「とうとう終わってしまいました。やっぱり、寂しい気持ちの方が強いかなと思います。勝負の場に立つことができるチャンスを与えていただいて、対戦相手の彼女もフルでファイトしてくれたことをうれしく感じましたし、自分のプレーがなかなかできない中でも自分なりにはとにかく1ポイントでも多く、自分らしいプレーができるようにと思いコートに立ち続けました。こうなるとやはりテニスの難しさを痛感しますし、1ポイント、1ゲームの重みを強く感じた試合になったかと思います」と話した。

 現役生活を振り返り「私自身1度目のキャリア、12年のブランクを経てカムバックし、これだけ長い時間プレーできたことをうれしく思います。私自身、昨年の4月に膝の軟骨移植の手術を受けて、膝は本当に調子は良かったんですけど、肩がどうしても、二重苦になってしまうと、膝の不安もゼロではないので、練習の中では楽しく練習もできるんですけど、試合になるとなかなか思うようなプレーができない。プレーヤーとしてコートに立つことは最後になってしまうんですけど、もうラケットを握りたくないと思うことはないと思うので、また会場に来て、みなさんと同じ立場でテニスに関わっていけたらと思います」。駆けつけた奈良くるみら後輩選手に向けて「きっと時間がたてば、テニスと出会えたことを幸せに思うときも必ず来ると思いますし、達成感があり、女性の活躍できるスポーツだと思います」とメッセージを送ると、伊達の目から涙がこぼれた。

 「最後まで勝負にこだわって、負けることは大嫌いでしたし、コートにいるとみんなが『伊達公子』は怖いという印象が強かったんですけど、勝負にこだわるがゆえだったと思ってお許しください。これから日本のテニス、そして世界のテニスを応援してくださったらと思います。本当にありがとうございました」と、最後は伊達らしく笑顔で締めくくった。