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教員人事に親の声反映 地域参加式の学校づくり進む

2007年08月19日

 保護者や地域住民が学校運営に加わる「学校運営協議会」の要望通りに教員を配置する事例が、各地で出てきている。朝日新聞の調べでは、協議会を置く学校(コミュニティ・スクール=キーワード参照)がある18都県・指定市のうち7都県・指定市が要望を反映させた人事を行っていた。「地域に開かれた学校づくり」が進む中、保護者らの声は教員人事にも影響を及ぼすようになってきた。

 文部科学省の2月7日時点のまとめでは、小中学校を中心に18都県・指定市の142校がコミュニティ・スクールに指定されている。朝日新聞が各自治体に取材したところ、今春までに東京都と長野、岡山、広島、高知、熊本の各県、川崎市の7自治体で協議会の意見を反映した人事が行われたケースがあった。

 岡山県では、06、07年度の人事で意見を反映させた。コミュニティ・スクールの一つである小学校から「(障害がある子どものための)特別支援教育に力を入れたいので、力量のある教員を」との意見が出され、要望通りに配置した。

 県教委の担当者は「協議会を通じて直接学校の意見などを聞けるので、人事を進める上で参考になる。学校の現状もわかりやすい」と話す。

 二つの高校がコミュニティ・スクールになっている高知県では、生徒指導の力がある教員を求める意見が出され、「所属年数や(通常より教員を多くする)加配など、可能な範囲で配慮した」(県教委)。中心的な教員の異動を「最小限に」という、「異動させない」意見を反映させた広島県のような例もある。

 東京都も意見を生かした人事を行っている。

 04年11月に全国で初めてコミュニティ・スクールに指定された足立区立五反野小では、毎年秋になると保護者3人、地域代表3人に校長らを加えた計11人の学校理事会(協議会の同校での呼称)を開き、翌年の人事について話し合う。校長が基本構想を示し、保護者や地域代表から質問や要望が出される。こうして同校が求める「教師像」がまとまると、都教委はその実現に向けて協力する。

 三原徹校長は取り組みの効果として「学校にいい教師集団が出来上がってきた。保護者らも人事に関して当事者として物を言うので、意識や責任感が高まっているようだ」と話す。

 文科省教育制度改革室は「コミュニティ・スクールでは、従来よりも保護者や地域のニーズにあった学校づくりができる。活用してもらいたい」と期待する。もっとも、各地の教委の人事担当者の間では「要望がどんどん増え、細かくなった場合に対応しきれるか」との懸念も出始めている。

 〈キーワード・コミュニティ・スクール〉 保護者や地域の代表が委員として加わる「学校運営協議会」を設置した学校のことで、04年に制度化された。協議会は、校長がつくる学校運営の基本方針を承認し、日常の運営に意見を言える。教員人事について意見を言うこともでき、任命権者(通常は都道府県と指定市)は意見を尊重する必要がある。

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