このところ、テレビ番組とネット放送みたいな記事がたくさん出てきてますが、まあ要するに日本市場もネット動画の攻勢が「一巡」したわけです。もちろん、ニコニコ動画の埋没と、AbemaTVの健闘(というか頑張り)も凄かった。でも、結論からいうとコンテンツにきちんとカネをかけられる、広告宣伝がコンテンツ単位で打てるというのが大事だ、ということになります。

 ちょっとAmazon方面はあまり情報がないのですが、NETFLIXとhuluについては傾向がはっきりしてきて、日本市場は地上波ドラマと同様にキャスティングで見るタイトルを決める、他の人が観ているであろうコンテンツを観るというマーケティング上のエッセンスが相変わらず強い、ということが分かります。まあ、当たり前のことなんですけど、好きなものを観る行動をとろうにも「自分の好きなものがどこにあるのか分からない」という日本のマーケットの構造は単純に「日本人がアテンションをもらう、観たいと思うコンテンツの数が多すぎる」のであって、そこからNHKだとか各民放からCSBS、WOWOWなどなどバスケットがあちこちにあるためにマッチングコストが却って高くなるというジレンマがあるわけです。

 そして、安価な娯楽の殿堂とも言えるテレビの地上波番組が低迷を始めている理由は、その切り札が「無料であること」と「美男子と美女が出ていること」であって、ネットで情報を取ってみると改めて若い視聴者も高齢者もおしなべて「綺麗なもの」をまず選ぶ、次いでテーマ、メディアのブランド、視聴時間といった要素が判断の上位にあって、これらを横串に通しているのは「家族との会話」「同僚との会話」などコミュニケーションの素材であるということが見えてきます。

 うわくだらねえと思うけど、恋愛や刑事ものといったテーマで押せるのは限られたコンテンツ数であり、アニメも支えられる属性に限界があり、結局はテレビ批評家のいう「キャスティング優先のコンテンツ作り」におそらくネット配信のコンテンツ事業者も戻っていくのでしょう。というか、キーになる俳優や女優が無名だと、一発当たってもカテゴリーを維持できるだけの視聴者を集められず満足度も上がらないという悲しい結論になるので、「この四半期で最大収益を」と考えると、ピース又吉原作の「火花」とか頑張って作るよりもまず新垣結衣連れてこいという話になるわけであります。

 地上波各局とネット配信番組でこれら「数字を持っているキャスト」のスケジュールの奪い合いに戻ってしまいそうなのが日本のコンテンツ産業の悲しいところなので、穴を埋めるような存在であるはずのアニメやお笑い、情報バラエティがどうしても一角を占めざるを得ないというのが現状なのではないか、と思います。

 そして、数字を取れるキャストに数字を計算できるテーマを組み合わせられるだけの資本力や企画力がないテレビ局は沈没するでしょうし、40代後半から下の世代は特に本格的なテレビ視聴離れを起こし始めることでしょう。もうデータとして出てきているので改めて述べませんが、いわゆる見逃し視聴の需要が一服し、みんな意外と「録画しているものが溜まると観なくなる」現象とともにカウントダウンが本格的に始まるかもしれない、ということです。

 テレビ番組を作っている人からすると残念なことなんですけど、番組のクオリティ、視聴者の反応は、もはや視聴率とは無関係になってきています。留意点は2つあって、1つは「それまでは明確に視聴者の満足度が数字に跳ね返っていたものが、いまやそこまで因果関係が見えなくなったこと」、2つめは「地上波など無料メディアで話題になったテーマやタイトル、キャストは、必ずしも有料番組やネット配信で数字を取らないこと」です。大御所がテレビに出ていると「おっ」と思って観ることはあっても、ネット配信でメインに据えられたところでギャラに見合う視聴数を稼がないということでもあります。明石家さんまが最後の大御所になるのでしょうか。

 つくづく、テレビで著名であった人がネットでは言われるほど見向きもされない事例はデータを扱う側としても悩ましい限りです。Youtuberが興隆し、本当の有名人がなかなか太刀打ちできないという理由も分からないでもないです、正直なところ。


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