石油禁輸「全面」は見送りへ 安保理
【ニューヨーク國枝すみれ】米国は10日、北朝鮮による6回目の核実験を受けた北朝鮮制裁決議の修正案を国連安全保障理事会メンバー国に配布した。安保理は11日夕(日本時間12日朝)、同案を採決する。修正案では、米国が当初提出した原案で求めていた原油や石油精製品の全面禁輸について、一定程度の輸出制限にとどめるなど後退させた。制裁強化に慎重な態度を示してきた常任理事国の中国とロシアに対し、米国が譲歩した格好だ。
修正案は、北朝鮮向けの原油輸出は現状規模を超えない範囲に制限し、石油精製品輸出も年間200万バレルまでとした。石油の規制は市民生活や軍の活動にも影響が大きいことから金正恩(キムジョンウン)体制を揺るがしかねず、後ろ盾の中国、ロシアはこれまで強く反発していた。両国は11日の採決での態度を明確にしておらず、賛否が焦点となる。
当初案に明記された金朝鮮労働党委員長に対する渡航禁止と資産凍結は盛り込まれず、高麗航空の資産凍結も見送られた。また、北朝鮮関連の貨物船舶検査については当初、安保理の制裁委員会が指定した船舶に加盟国が公海上で「すべての必要な措置」を講じて検査することを許可するとしていたが、修正案では検査時の武力行使は容認せず、禁輸品を移送している確たる情報がある場合に加盟国に検査を要請するとした。
北朝鮮の外貨獲得に影響を及ぼすとされる北朝鮮労働者の外国での出稼ぎ労働に対する制限も当初案は、雇用や給与支払いを認めない厳しい内容だったが、修正案は、新規雇用を対象に安保理の委員会の承認が必要とする措置にとどめた。
一方、天然ガス液や天然ガスの副産物である軽質原油コンデンセートの輸出、北朝鮮の主要輸出品である繊維製品の輸入は当初案通り全面禁止とした。繊維製品の輸出高は昨年7億5200万ドル(約816億円)に上り、約8割が中国向けとされる。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省は11日、「米国がさらに過酷で不法な『制裁決議』を作り上げるなら、我々は米国に相当な代価を払わせる」と決議案採択を強くけん制する声明を発表した。