フジテレビ27時間テレビを面白くさせたバカリズムの能力

バカリズムライブ「類」

今年のフジテレビ27時間テレビは、近年では一番面白かったような気がする。
もちろん27時間もあるので当然イマイチなパートも山ほどあったわけだけれど、それにしても24時間テレビに対抗してフジが始めた27時間テレビがこれまでの呪縛から色々解き放たれたようにも感じた。(本当に解き放たれるのは27時間テレビを中止したときだろうが)
毎年、録画しているが大概、夜中のパートだけ観てあとは消すとか、そんな程度の番組でしかない。
だが今年はかなり観てしまった。
24時間テレビは、1分すら観なかったのに。



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24時間と27時間

まず生放送をやめた。
これが大正解。

そもそも24時間テレビが生でやるのはそこに「募金を集める」というお題目があるからであって、それに対しフジの27時間テレビが生放送でやるのが「24時間テレビが24時間生でやってるから」以上の理由を見つけられない。
27時間もかけてバラエティを無理やりやらなきゃあならないから、無駄にダラダラした時間が続くことになる。
笑いなんてそんなに持たない。
面白くなくても「チャリティ」だから成立する24時間と面白くなければ成立しない27時間では性質が違う。

だが今年はそんな「生放送でなければならない」という無駄な縛りを配したことでバラエティとしての面白さが増した。
毎年恒例の各局の中継や年に一度全国区に映れるからと気合の入ったアナウンサーの空回りを観るのはキツかったが、今年はかなり押さえられていたのも高評価。

バカリズムとたけし

さらに今年はバカリズムが非常によかった。
というかバカリズムの才能を再評価させる結果になる27時間テレビだったように思う。

まずチョコチョコ挟まるフリップパート。
ここでそれぞれの時代のエピソードからフリップ芸(画は、バカリズム自身が書いてなくて残念ですが)を見せ、たけしがそのテンポを崩してしまうという残念な光景も見えた。

たとえば関ヶ原の戦いの人数をGLAY EXPO vs AKBライブに例えて、そんなに人数がいたなら後方はそれこそフェスの後ろみたいに寝転がってたんじゃないか(と、足軽がフェスっぽい感じで寝転がってる画を出しながら)

面白いと思ったんだけど、そこでたけしが「そう、実際も、そんな感じだっていう説が……」と言い初めて、そこでたけしの話が始まり、またフリップを出すとまたたけしが……という感じでいちいち止まる。
うーん。
このパターンを毎回やるわけです。

多分 本来は、フリップでバカリがボケて、最後に「実際はどうだったんですか?」と専門家に話を聞く流れなんだが、その前にたけしが自分の知識をぶち込んでくるもんだから流れがおかしくなる。
まぁ、文化人 北野たけしだから仕方ないんだが。

バカリズムとドラマ

そしてバカリズム脚本のドラマ。
これがどれも面白い。

平安時代パートでは「源氏さん!物語」と題して、俳優の野村周平が平安時代にタイムスリップ。
実は童貞だった光源氏にナンパテクを教えるという話。
木南晴夏、西田尚美、八嶋智人と名コメディ役者陣をがっつり揃えてる。

江戸時代では「僕の金ケ崎」
信長の撤退戦となった金ヶ崎の戦いを舞台に、バカリズムっぽいコメディに仕上げて見せた。
やる気のない服部半蔵役でバカリズム本人も登場。

「私たちの薩長同盟」では、薩長同盟の裏で実は女性たちが活躍し薩長同盟が結ばれたのでは?というストーリー。
剛力は一時期バッシングされたせいか、すっかりいい女優になった。
可愛い役より、深夜ドラマの女囚役で見せたようなドスの利いたすごみのある演技のほうが向いてると思うので、もっと極道ものに出ていただきたい。
以前、バカリズムが脚本を書いた「黒い十人の女」でもそうだが、バカリズムの本には強い女性が結構出てくるのも面白い傾向。
非常によく出来ていた(ただ喫茶店パートはなくてもいいと思ったが)。

どれもタイムスリップ(源氏さん!物語)、授業中の妄想(僕の金ケ崎)、小説の中(私たちの薩長同盟)とリアルタイムの現在と過去を描くやり方もなかなか。

シリアス度でいえば「私たちの薩長同盟」が高く、コメディ度でいえば「僕の金ケ崎」が圧倒的に高い。
それに三本のドラマを書いて、それぞれにキチンとコメディの分量が違っているというのが素晴らしい。
バラエティに出演しつつ、単独ライブ用のネタも書きつつ、ドラマの脚本も書き、AVも処理するんだから、いやはやすごいバイタリティだわ。

今回のドラマは(特に薩長同盟は)スピンオフとか、深夜でシリーズ化とか、再放送をやるべきレベル。

たけしと権威

たけしはさんまよりも文化人寄りで、ただタモリよりバラエティ寄りだった。
ただ最近ではたけしもすっかり文化人寄り。

だから今回の番組でも最終パートの池上さんと昭和を語る辺りでは、ホテルニュージャパンの火災やフライデー襲撃事件など、当時のエピソードを話したり、カルチャーの色合いがうまく出るんだけれど、バラエティ色が濃くなるととたんにしんどい。
やはり深夜パートに全力発揮してるさんまのバラエティに振り切ってる現役の感じと比較するとつらい。

今回は、カルチャー色が強めなので全てにおいて感心してみせる関ジャニ村上と文化人ご意見番たけしという司会二人はバランスがよかったとはいえ。
(これが中居だともっとバラエティに傾いてしまう)

村上だけでも成立してしまうのよなぁ……。
もちろん、たけしは番組の権威付けという意味で必要ではあるんだろうが。

フジと27時間

27時間をかけて日本のこれまでの歴史を振り返る、という趣旨は面白かった。
面白くないパートも多かったが、面白いパート多かっただけ例年よりよほどマシ。

ただもう同じ手は通じない。
この27時間の呪縛を破った来年、いったい何をやるのかは注目したい。
ここまで追い詰められないとしょーもない生放送を止めることも出来ないのかと感心する部分もあるが。

もう来年は27時間をやらずに、バカリズム脚本で2時間のスペシャルドラマをやるのが、一番冴えたやり方だと思うんだがどうだろうか。

あとザ・ノンフィクションは中止するのに、競馬中継はやるのね。