2017年9月11日 00:01
国際コンシューマエレクトロニクス展示会「IFA 2017」が、ドイツ・ベルリンの国際見本市会場において9月1日~9月6日(現地時間)に開催された。今年は出展数が1,805で、253,000人以上が来場。様々なトピックがあった中から、スマートスピーカーや、テレビ、ワイヤレスヘッドフォンなど、今年注目されたポイントを振り返る。
なお、今回は、開幕前プレスカンファレンス後のソニーやパナソニック、シャープのブースなどを撮影した、ツアー感覚の動画も掲載した。開幕前のワクワク感の高まっていた現場の雰囲気をお伝えしたい。
スマートスピーカーで、オーディオ界にも変革?
今回のIFAを語る上で欠かせないのは、会場のあちこちで見られたスマートスピーカー。1月のInternational CESでも、様々な場所にGoogle HomeやAmazon Echoが置かれていたが、クリスマス/年末商戦に向けた製品が数多く登場するIFAにおいて新しいスマートスピーカーが登場したことは、今後の本格的な普及を予感させる。
IFAで先陣を切ったのはパナソニック。Googleアシスタント対応モデル「SC-GA10」を発表し、今冬にグローバルで発売する。ソニーも同じくGoogleアシスタント対応の「LF-S50G」を英国で12月に発売。仏・独でも投入予定だ。
複数のプラットフォーム向けに製品を発表したのはオンキヨー。AlexaとDTS Play-Fiに対応した、オンキヨーブランドの「P3」(VC-PX30)を英国とドイツで、Eliteブランドの「F4」(VA-FW40)を米国で、それぞれ10月下旬に発売する。また、GoogleアシスタントとChromecast built-in対応の「G3」(VC-GX30)も、10月から欧米で発売する。
Harman Internationalのブースでは、JBLブランドのGoogle Assistant対応モデル「LINKシリーズ」3製品と、Harman/kardonブランドのAmazon Alexa対応「Allure」、Microsoft Cortana対応「INVOKE」を米国などで今秋より順次発売。主要3プラットフォームへの製品投入をいち早く示したことから、スマートスピーカーへの本気度がうかがえる。
上記以外のメーカーのブースでも、スマートスピーカーへの出展があり、様々な場所で音声操作のデモなどが行なわれていた。
展示ブースは騒音も多く、無線LANも多く飛んでおり、デモ環境としては悪条件。いくつかのデモを体験した中でも、harman/kardonのCortana対応モデル「INVOKE」は、会話がしにくいほどボリュームを上げて音楽を鳴らした状態でも、2~3m離れた場所からの「Hey Cortana」との小さな声の呼びかけにしっかり反応したのが印象的だった。同じ環境下で他製品と比較していないため単純に優劣はつけられないが、今回のデモの限りでは、スピーカーに近づいたり声を張り上げる必要なく、日常会話か、つぶやくレベルの声量でも、正確に反応していたことに驚いた。
自社でスマートスピーカーを製品化するのではなく、他社プラットフォームと自社サービスの連携でスマート化を示したのはヤマハ。同社製のネットワーク製品を連携させるMusicCast機能が、Alexaとも連携することで、Ehoなどのユーザーは、ヤマハのAVアンプやサウンドバー、ワイヤレススピーカーなどを声で操作可能になる仕組みを紹介した。
このように、既存のAV機器とスマートスピーカーの連携は今後も加速しそうだ。ソニーは、テレビのBRAVIA '17年モデルのファームウェアアップデートによって、Googleアシスタントに対応予定。BRAVIAのリモコンから音声操作できるほか、別室のLF-S50Gから、BRAVIAのNetflixやYouTubeを声で起動、操作できる「ビジュアルフィードバック」が利用可能になるという。
今年は、IFAにおいて生活家電が展示されるようになってから10年の節目にあたるという。「ネットにつながる冷蔵庫や洗濯機」などの次の段階として、AV家電、生活家電を問わず多くの機器がスマートスピーカーを軸につながっていけば、単なる新しいガジェットというだけでなく、生活を豊かに、音楽を身近にしてくれる存在になっていくだろう。
HDRはさらに進化? 注目高まるワイヤレスヘッドフォン
4K/HDR対応が進むテレビ。昨年のIFAはパナソニックが有機ELテレビの画質を大きく向上した新世代のプロトタイプを展示したことが話題になった。今年の注目ポイントの一つは、HDR映像の最適化機能。
HDR10の拡張規格「HDR10+」は、シーンにあわせて動的なトーンマッピングを行なうことで映像品質を高め、制作者の意図に合った表示でコンテンツを視聴可能になるという。テレビメーカーなどにとっては、少額の管理費用を除き、ロイヤリティフリーで利用できる点もメリットとなる。
4月にSamsungとAmazonが規格を発表。さらに、パナソニックと20世紀フォックスも共同で推進することが8月29日に発表された。2018年1月にライセンスを開始予定で、テレビやBlu-rayプレーヤー、映像配信サービスでの導入を目指している。パナソニック、Samsungのブースでは、“新しいHDRの画質”として、HDR10+のデモが行なわれていた。
一方、LGのブースでアピールしていたのは、Technicolor(テクニカラー)との協力による画質向上。
Technicolorのカラーサイエンティストがチューニングしたモードが10月から利用できるようになるほか、今後Technicolorによる「Advanced HDR」にも対応予定。HDR10とHLGの映像において、シーンごとにダイナミックデータを生成し、レンダリングされた画像を最適化するというもので、通常のHDRコンテンツにおいても画質向上が見込めるとしている。コンテンツ制作側の意見をとりいれたHDR画質の進化が、トレンドの一つになっているようだ。
また、国内メーカーではシャープがIFAに再び登場し、欧州のテレビやスマートフォン市場への再参入を発表。8Kを中心とした様々なディスプレイを用意し、技術の高さと、グローバル展開への強い意欲を改めて示したことも明るい話題だ。
ヘッドフォン/イヤフォンのワイヤレス化が進む欧州では、今回のIFAでも新しいBluetoothモデルが多数発表。左右完全ワイヤレス「True Wireless」のイヤフォンもあちこちのブースで見られた。
ソニーからは、Bluetooth/ノイズキャンセリング(NC)対応モデル「1000X」シリーズの第2世代となるアラウンドイヤー型「WH-1000XM2」、ネックバンド型「WI-1000X」、左右完全分離型の「WF-1000X」が一挙に発表された。欧州では9月以降に順次発売される。
パナソニックは、レトロなデザインで根強い人気の「RP-HTX7」を継承し、Bluetoothでワイヤレス化した「RP-HTX80B」を展示した。ネオジウムマグネット搭載の40mm径ドライバを備え、20時間動作。15分の充電で150分動作するクイック充電もできる。カラーはBlack、Ice Grey、Burgundy、Ochreの4色。日本でも発売されれば人気のモデルになりそうだ。
上記以外にも様々な製品や技術が披露された中、気になった技術の一つは「Xperia XZ1」などの新機能「3D Creator」。スマホの単眼カメラを使って短時間で立体的な写真を作り、それをキャラクター化してコミカルな写真や動画を作ったり、3Dプリンタを使えばフィギュア化もできるというもの。“SNSウケ”のために高度な技術を注いでいるようで、担当者に「企画を通すのは大変ではなかったですか?」と思わず尋ねてしまったが、やはり簡単ではなかったとのことだ。ただ、作ったものを見ると自分も周りも思わず笑ってしまい、コミュニケーションのちょっとした手助けになる、現代っぽい技術の使い方だと感じた。この技術を応用することで、ゲームなどに自分のキャラを登場させて、より感情移入して楽しめるなど、SNSだけに留まらない将来的な展望も色々とあるようだ。
新エリア「IFA NEXT」で日本のスタートアップも
従来からのIFA会場の大きな変更点として、“イノベーションの最先端を体験できる”という「IFA NEXT」エリアを用意。従来はアジア系企業が多数集まっていた「ホール26」に、スタートアップ企業などの「Tech Watch」や、様々な業界の人々が未来のトレンドや技術革新などを探る「IFA + Summit」などのコーナーが集約。基調講演もこのエリアで開催されたため、多くの来場者が、世界各国のスタートアップや最新技術に触れられる機会となった。
このIFA NEXTには日本のスタートアップも出展。Cerevoは、インターネット接続機能を備えたロボット・デスクライトとして発売予定の「Lumigent(ルミジェント)」が、Amazon Alexa対応機器と連携するAlexa Skill Kit(ASK)にも対応したコンセプトモデルを展示。
変形機構と音声認識機構を持つLumigentは、話しかけると変形し、指定した位置を照らす機能を単体で持っている。今回のデモでは、4軸の可動部を持つLumigentの変形を、プリセットの形で細かく指定して保存し、Alexa連携により、声でプリセットを呼び出せるようになることを紹介している。
今回のデモではAmazonのEcho dotと組み合わせていたが、年末のLumigent発売に向けて、Echo dotと同等のAlexa対応機能をLumigent本体に内蔵するために、開発を続けているという。
また、東京大学からスピンオフしたXenomaは、ウェアにセンサーを備えた“スマートアパレル”の「e-skin」を紹介。体の動きをセンサーでトラッキングして、Bluetoothで伝送。様々なアプリと連携し、フィットネスや、スポーツのフォーム確認、ゲームなどの分野に応用可能としている。企業向けに、e-skinと開発環境を5,000ドルで提供するほか、個人向けにはKickstarterで資金を募っている(479ドル~)。