やってしまった。標準、中望遠ときて広角もZEISSのレンズで揃えてしまった。ただしコシナ製のZEISSではなく旧東ドイツのCARL ZEISSであるJENAだ。
東ドイツ?JENA?何のことだ?と思う方もいるかも知れない。東西に分割されたドイツが統一されてからずいぶんと時間が経ったし、それに合わせるように東西に分かれていたZEISSがひとつになってからも時間が経った。この辺りの事情を書き始めると長くなるので知りたい方はWikipediaなりで調べていただくとして、要するに冷戦時代の東ドイツの広角レンズがFLEKTOGONということだ。
レンズスペック
JENAのレンズとしては新しめではあるもののいわゆるオールドレンズに分類されるこのレンズ、さすがに最新のレンズには及ばないが侮れない力を持っている。まずはスペックを見てみよう。
CARL ZEISS JENA FLEKTOGON 2.8/20 | |
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焦点距離 | 20mm |
絞り | 2.8-22 |
最短撮影距離 | 19cm |
フィルター径 | 67mm |
重量 | 312g(実測) |
どうだろう?なかなか心躍る数字が並んでいる。20mmという焦点距離を考えれば開放F2.8というのは十分に明るいし、F22までしっかり絞れるのも嬉しい。おまけに薄枠であれば67mmのC-PLフィルターまでケラれず使えるし重量も軽い。
そして注目は最短撮影距離の19cmだ。
笑ってしまう程に近づける。そして数字以上にこのレンズは被写界深度が浅く感じるレンズで、近距離の撮影でなくても開放近くの絞り値では深度に十分注意しなければ中途半端な写真になってしまう。
また、レンズ前面にある銘板にMCの赤文字があることからマルチコートが施されていることが示されている。このマルチコートがオールドレンズにありがちな「気休め」でないことも逆光条件で撮影してみて分かった。それなりにフレアが出るがこのぐらいならなんとかなる。オールドレンズにつきもののフリンジなども気になる程は出ない。
フィーリングは大切だ
実際にカメラ(α7II)に装着してみてのフィーリングも良い。アダプターを含めての重量感やバランスも悪くないし、絞りリングのクリック感やフォーカスリングの動きは至極滑らかでコシナ製のツァイスレンズに通底するものがある。
M42というマウントの性質上、避けようがない指標のズレも両眼視をする場合には左目でちょうど良い位置に指標が見えて実は具合がいいのでは?とも感じる。都合の良い解釈に思えるが佳いものは良いのだ。これはレンズポルノだ。
実写してみて
さて家の中で盆栽のように眺めていてもレンズは仕事をしない。そんなわけで先日35mmのレンズではやや狭さを感じた三波渓谷を再訪してみた。
結果については見ての通り。どちらもF16〜22ぐらいに絞っている。周辺が甘いなど現代のレンズと較べれば粗はあろうが、それがなんだという写りだ。ボケに頼らずとも立体をはっきりと立体として描く。これがJENA(Zeiss発祥の地)の実力か。
フルサイズの写真はこちらで 三波渓谷 Flektogon | Flickr