<img height="1" width="1" src="https://www.facebook.com/tr?id=1801171263504785&ev=PageView&noscript=1"/> (cache)〈時代の正体〉「差別ツイート野放しやめて」ツイッター社前で抗議集会|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉「差別ツイート野放しやめて」ツイッター社前で抗議集会

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/09/09 20:39 更新:2017/09/09 22:46

役目を任じ


 どうしても伝えたかったのは、果たすべき責任を果たさないという、それこそが差別というほかない不条理によって刻まれた傷の深さ。

 「そのわずか数件でもひどい書き込みが消えたとき、私の子どもは本当に喜びました。ただ、国に働き掛け、調査をして、何カ月もかかるのではなく、ツイッター社が自社のルールにのっとって適正に、すぐに対応してくれれば、こんなに拡散され、子どもが毎朝毎朝、削除されてないことにため息をつきながら学校へ行くということはなかったと思います」

 職場には「朝鮮人は朝鮮へ帰れ」と脅迫電話が掛かってくるようになった。2週間前には名指しの封書が届き、中に入っていたのは頭と胴体がばらばらにされたゴキブリとガの死骸だった。放置されたツイートの一文字一文字がそのまま実際の行動となって突きつけられ、「もう逃げ場がどこにもない」。

 逡巡(しゅんじゅん)がないはずがなかった。

 「きょう、こうしてマイクを持って言葉を届けたことが、またツイッター上に書き込まれたら、きっと今夜から、出て行け、死んでしまえという書き込みがされることでしょう」

 それでもマイクを手に取ったのは「役目を果たそうと思ったから。被害の当事者である私にしか届けられない声を届けなければと思った」。

 震える声で精いっぱい振り絞った。

 「でも、私は怖くないです。ツイッター社の皆さんの良心を信じています。自社の運営ルールにのっとって、きちんとヘイトスピーチを削除してくれると信じています。だからこのようにマイクを持って、皆さんに思いを届けています。あとは笹本社長、ツイッターの皆さんの決断だけです。実行だけです」

 最近、自分たち親子へ差別ツイートを見つけ出しては削除の通報してくれている人たちがいると知り、胸が熱くなった。この日も、仕事を抜けて抗議の様子を見に来た社員が「大事な問題。自分も社内で頑張っていきたい」と参加者に声を掛けていったと耳にしていた。

 この社会はまだ信じるに足る―。

 そう信じずして、どうして絶望の暗がりの中を歩んでいけようか。

 「ユーザーの良心とともに、ツイッタージャパンの良心とともに、ツイッターからのヘイトスピーチを根絶しましょう。きっときょうからツイッタージャパンは共に生きる歩みを始めてくれるはずです。私たち利用者はツイッタージャパンのヘイトスピーチを止める歩みを信じ、ここにあろうと思います。さあ、始めましょう、共に」

 差別をやめて、差別をなくして、共に生きよう。誰もが自分らしく生きられる社会を共に作ろう。在日コリアンをはじめ、さまざまなルーツを持つ人たちが暮らす街、桜本で社会福祉法人青丘社の職員として働き22年、崔さんが繰り返し届けてきた「ラブコール」でスピーチを締めくくった。

 集会は、参加者で路上のヘイトスピーチをびりびりとはがして破り、主催者が用意した「ゴミはゴミ箱へ」と書かれた巨大な箱に放り込んで幕を閉じた。

 「私一人ではとても言うことができなかった。こういう場を作ってくれた主催者に感謝したい」。その場を後にし、崔さんは言った。「これで子どもたちに、ちゃんと思いを声にして届けてきたよ、と伝えることができる」

 同社日本法人によると、この間、米国本社と合わせ日本のツイートに対処するチームの人員増などを図ってきたといい、笹本裕代表取締役は神奈川新聞の取材に対し、「ヘイトスピーチには心を痛めており、放置するつもりはありません。ご批判は真摯(しんし)に受け止め、今後も努力は当然ながら惜しみません」とコメントしている。

 あとは決断と実行だけです―。

 役目を果たすのだと、身を削りながら発したその人の言葉がこの夜、あの路上に、確かに刻まれた。

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