〈時代の正体〉「差別ツイート野放しやめて」ツイッター社前で抗議集会
- 神奈川新聞|
- 公開:2017/09/09 20:39 更新:2017/09/09 22:46
震える足で
〈毎日こわいです 毎日つらいです 毎日苦しいです 助けてください〉
川崎から参加した在日コリアン3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(44)は2人の子どもと一緒に作ったプラカードを掲げ、参加者の列の一番端に立っていた。
主催者に頼まれ、スピーチを引き受けることになった。靴底から伝わるヘイトスピーチの感触に耐えながら足を踏みしめ、そびえるビルを見上げ、オフィスにいるであろうその人に向け、呼び掛けた。
「笹本社長、ツイッター社の皆さん、私は朝鮮人です。ツイッターで毎日、死ね、殺せ、出て行け、ゴキブリと書かれている朝鮮人です」
震える声がすべてを物語っていた。
「私にとってのツイッターは、花が咲いたらうれしくて、夜空に月が見えたらうれしくて、大切な人たちにそれを伝えたくてツイートする、心豊かにさせてくれる大切なコミュニケーションツールでした。それがいまは死ね、殺せ、いなくなれと書かれ、毎日、ツイッターの通知が届くたびに怖いです。つらいです。苦しいです。笹本社長、ツイッター社の皆さん、どうか助けてください」
わが街、川崎・桜本がヘイトデモの一団が押し寄せたのは2015年11月と翌年1月。安寧な日常が破壊され、差別をやめてください、ルールをつくって差別をやめさせてくださいと、ただ心穏やかに暮らせることを願って声を上げただけなのに、一緒に抗議の路上に立った中学3年生の長男とともに名前と写真がツイッターでさらされ、心身を痛めつける攻撃がとめどなく押し寄せるようになった。
ツイートすれば「嫌なら出て行け」「被害者ズラするな」とリプライが飛んでくる。思うままに発信することを控えざるを得なくなって1年、表現の自由はおろか、当たり前に生きる自由まで引き裂かれた。
一緒にいるところを襲われたらという恐怖で、小学生の次男から近所のコンビニ店に連れて行ってとせがまれても、駄目と言わなければならない。街中ですれ違っても、他人のふりをするよう言って聞かせる。差別主義者に出くわさないか、外出の際はヘイトデモや街宣の予定をネットで必ずチェックする。玄関を開けたらそこに暴漢が立っているのではないかと、ドアを開けるたびに息が詰まる。電車の隣の座席の人がスマホをいじっていたら、自分への差別投稿をしているのではないかと頭をよぎる。警察が巡回パトロールに来たことを知らせるカードをポストに確かめる毎日。
「ひどい書き込みが数え切れないほどされて、個人の力ではどうにもできなくなり、助けてくださいと法務省に人権侵犯被害申告をしました。調査がなされ、法務省からツイッター社により削除要請がなされ、わずか数件ですが削除されました。何カ月もかかり、その間にさんざん拡散されました。私の中学生の子どもの名前と顔をさらし、日本から出て行けというひどいツイートが国の調査によって、それも何カ月もかかって、やっと消えた。それがいまの日本のツイッターの現状です」
COMMENTS