2017/09/08
浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫vs人魚編
前回のあらすじ
「浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫出会い編」
リュウグウ城へ招かれた凛太郎は、ロリ巨乳なお嬢様「乙女」通称乙姫様に出会う。
宴に招待された凛太郎と乙女は二人楽しく美味しい食事を堪能する。
そこへキレイなマーメイドが凛太郎にダンスの申込みをした。
初めてのダンスに戸惑いながらも美しいマーメイドとのダンスを楽しんだ凛太郎だった。
ダンスを終えて乙女のところへ戻った凛太郎だったが、乙女は忽然と姿を消してしまった。
浦島凛太郎
突如姿を消した乙女のことが気になり、宴どころではなくなった凛太郎は近くにいたダイオウイカ(礼装着)に乙女の行方を尋ねる。
「えっと、イカさん? あの、すみません」
「ん? 私ですかな?」
「おっ、は、はい」
凛太郎の倍以上ある巨体をぬぅっと近づけられてビビる凛太郎はおどおどと答える。
「えっと、乙女……さんってどこ行ったかわか…るかな?」
「乙姫様ですかな?」
「お、おう、急にいなくなったみたいで」
「……むーん、姫様ならあの場所かもしれませんなぁ」
「あの場所?」
「ええ……姫様に何かご用でございますか?」
「いや、用っていうか、急にいなくなったんで気になって」
ダイオウイカ(礼装着)は少し難しそうな顔をして答える。
「そう、でしたか。しかしあなた様はマーメイドの遊梨殿と楽しく過ごされていたではありませんか。宴には特に差し支えないかと思われるのですが」
凛太郎はダイオウイカの言葉にどこかモヤモヤしたものを覚えたが、今は乙女の行方を知りたかったのであの場所について尋ねてみることにした。
「まぁ、問題のあるなしじゃなくて、急にいなくなったら普通心配するだろ」
「そうですな」
もっともだといった感じで深く頷くダイオウイカ。
「それで、あの場所ってのを教えてほしいんだが、いいかな?」
「申し訳ありませんが、それは出来ませんな。あの場所は乙姫様のプライベート空間ですので」
「そんな!?」
「まぁ、乙姫様よりリュウグウ城内は開放許可が降りているので、ご自由にお探しになるとよろしいかと」
「…うーん、プライベートなら仕方ないかぁ。じゃあ、お言葉に甘えて自由にさせてもらおうかな」
そう言って凛太郎は宴の席をあとにした。
改めて城内を見回すと……広い。
その言葉に尽きる。
部屋と部屋の感覚が10メートル以上も離れていて、ここから見るだけでも10部屋はある。
凛太郎はひと部屋ずつ扉を開けては締めを繰り返していく。
2階3階4階と探していくが、乙女は中々見つからない。
「どんだけ部屋があるんだよ……」
凛太郎は愚痴をこぼしながらも乙女を探し続けていると、ある部屋へとたどり着いた。
その部屋は他のどの部屋とも雰囲気が違い、ただならぬ感覚を覚える。
何か入ってはいけないような、入ると悪いことが起こる。
そういった嫌な感じがする部屋。
凛太郎は部屋の前で立ち止まり、入ろうかどうか考えること数分。
意を決して扉を開けるとそこには……。
亀がいた。
凛太郎が助けたあの大きなウミガメだ。
「……えっ!?」
「……あれ! キミは…」
凛太郎と亀の目が合い、凛太郎が声をかけようとすると亀が。
「うきゃあああぁぁぁぁ!」
突然の来訪者に素っ頓狂な声を上げて驚く。
「わ、わぁ、ご、ごめん。突然開けて」
凛太郎はそんな亀に動揺しながらも亀に謝罪する。
「リ、リンタロー様! み、見ました?」
慌てふためく亀は凛太郎に確認をして、さっと左腕を後ろにやる。
「ん? 見たって何を? 何かやってたの?」
「いえ、何も見てないのでしたらいいですわ」
「えっ? なんか気になるんだけど」
「うふふ……それで、リンタロー様はこの部屋に何のご用がありまして?」
うまく話をそらして凛太郎来訪の目的を聞く亀。
「あ、え、ああ、乙女……乙姫様を探してて、えーと、キミ……は見なかった?」
「いえ、見ておりませんわ」
亀の名前を知らなかったので凛太郎は名前を尋ねようとする。
「そういえば、キミの名前って……」
「もしかしたら、あの場所かもしれませんわ!」
亀は凛太郎の言葉を遮って乙姫がいるかもしれない場合を言う。
“あの場所”という先ほども聞いた言葉。
凛太郎は少し強気に聞いてみる。
「あの場所あの場所っていったいどこなんだ! 乙女……乙姫様のプライベート空間って聞いたけど、俺は立ち入っちゃいけないのか?」
「い、いえ、そういうわけではありませんわ。他種族の方がリュウグウ王国へいらっしゃるのは随分久しぶりなので、みなさん警戒しておられるのですわ」
「警戒? 俺は何もしないぞ!」
「知ってますわ。リンタロー様が心優しいお方だということは、ただ、わたくしが突然連れてきたのが行けないんですわ」
「でも、それって……キミの好意じゃないか。」
「……」
亀はどこか困ったような笑顔を見せる。
凛太郎もそれ以上追求できなかった。
亀のその笑顔が凛太郎を拒んで見えたからだ。
二人の間に神妙な空気が流れる。
沈黙を破ったのが亀の一言だった。
「リンタロー様、あの場所とはこのお城の最上階のことですわ」
「最上階?」
「ええ、乙姫様はおそらくそちらにいらっしゃるかと」
「…えっと、自分で聞いといて何だが、教えてもよかったのか?」
「はい! リンタロー様のことは信用していますので」
「お、おう、サンキューな」
凛太郎は意外な返答に動揺しながらも亀に感謝をして最上階を目指そうとするが、亀が凛太郎に忠告する。
「リンタロー様、最上階へ行くにはあちらの階段をお使いくださいな」
「あれか?」
「ええ、最上階へはあちらの階段からでしか行けませんので」
「そうか、色々とサンキューな。あっ、あと、ケガの具合はもう大丈夫なのか?」
「ふふふ、もうすっかり良くなりましたわ。ホントに感謝してますの」
亀は乙姫を思わせるような満面の笑顔で答える。
「それはよかった。じゃあ、ちょっと行ってくる」
「はい」
亀は凛太郎がかいっ段へと向かったのを確認すると小さくつぶやいて、部屋の奥にある昇降機のようなものに乗り込んだ。
「……ふふっ、ホントに優しいお方…」
どれほど階段を登っただろう、確かにリュウグウ王国へ来る時に外から見たこの城は信じられないくらい高かった。
しかし、今までの階段と違ってこの階段は最上階まで直通のようだ。
随所に扉はあるが非常階段を連想させる造りになっている。
おそらく、どの階からでもこの階段を使うことが出来るようになっているのだろう。
そんなことを思っていると、ようやく最上階と思しき扉へとたどり着いた。
「ここにいるのか……」
凛太郎は独り言をいうと扉を一気に開けた。
一人の少女が座っていた。
とても儚げで、今にも消えてしまいそうな、それでいて美しい美少女。
一瞬声をかけるのをためらう凛太郎は彼女に呼びかける。
「……乙、女?」
乙女は凛太郎の声にビクッと肩を揺らして振り返る。
「はっ、はい!」
振り返った乙女の目は赤くはれていた。
それを見た凛太郎が少し驚いて聞く。
「えっと、大丈夫か? 急にいなくなったから心配したぞ」
「も、申し訳ありません。大丈夫ですわ」
乙女は精一杯の笑顔を作って凛太郎に答える。
凛太郎はゆっくりと乙女に近づいて対面で座り話しかける。
「なぁ、何かあったのか?」
「ホントに何でもございませんわ」
「そんな顔して、乙女は嘘が下手だな」
「嘘なんかじゃ……」
凛太郎は乙女の言葉を遮って両手で乙女の頬を包み込み、今にも泣き出しそうな瞳を見つめて言う。
「嘘はよくないぞ、何かあったんなら言ってみ? 俺に出来ることなら何でもやるからさ」
「大丈夫ですわ。凛太郎様には関係ないことですから」
凛太郎から目をそらして放った言葉に凛太郎はムッとした。
「俺じゃ、役に立たないのか?」
「ち、違いますわ。わたくしの問題なんですの。だから、だから…」
「そっか、わかった。でも、女の子が泣いてるのを見過ごすなんてことも出来なくて、ゴメンな、意地悪言った」
「泣いてなんか…」
「そんだけ目ぇ赤くして泣いてないって無理があるだろ」
「……」
乙女は凛太郎の言葉にうつむいて黙り込んでしまう。
凛太郎も頭をかいて乙女に声をかける。
「あー、んん、ゴメン」
そう言って凛太郎はその場をあとにしようとする。
「違っ!……」
乙女の小さな声は凛太郎に届かなかった。
「凛太郎様が悪いんですわ。遊梨とあんなに仲良さそうにして、わたくしだって凛太郎様と……どうしてこのカッコだど上手く話せないんですの」
一人になった乙女はブツブツと凛太郎への愚痴をこぼし始めた。
険しい顔をしたダイオウイカ(礼装着)が乙女の所へ来て尋ねる。
「乙姫様、凛太郎殿といらっしゃったのですか?」
「ええ、そうですわ」
「申し訳ありません。あのような者をこの場所へ……」
「凛太郎様のことを悪く言わないでください。凛太郎様なら別に構いませんわ」
「うっ…も、申し訳ありません。以後気をつけます」
「いいんですのよ。突然連れてきたわたくしも悪いですから」
乙女がばつが悪そうに自分の行いを反省すると、ダイオウイカ(礼装着)は優しい笑顔で答える。
「いえ、乙姫様は何も悪くありません」
「ありがとう、凛太郎様はとってもお優しい方ですわ。イーカ大臣も話せばわかりますわ」
イーカ大臣は優しい顔から一変、先程の険しい表情に戻り己の気持ちを乙女にぶつける。
「承知しております、しかしお言葉ですが、彼が乙姫様を悲しませたのも事実、私はそれが許せません」
「凛太郎様は何も悪くありませんわ。わたくしが弱いのがダメなんですの」
「乙姫様が弱いなんてとんでもありません。立派に女王を務めってるではありませんか」
「わたくしなんて全然、みなさんに助けてもらってばかりですから」
「そんなことありませんぞ。皆、乙姫様だからついて行くのです」
「ありがとうございますわ。これからもよろしくお願いしますの」
「御意に」
イーカ大臣は粛々と頭を下げて乙姫への忠誠を示す。
乙女はイーカ大臣とのやり取りのあとに凛太郎の後を追って宴の席へと戻っていく。
その後ろ姿を見つめるイーカ大臣は小さくつぶやいた。
「……全ては乙姫様のために」
宴の席へ戻った凛太郎は乙女が泣いていた理由をずっと考え込んでいた。
「わからん」
突如こぼれた凛太郎の言葉に遊梨は少し驚いて聞く。
「凛太郎様、突然どうしたんですぅ?」
「いや、なんでもない」
「えぇぇ、遊梨気になりますぅ。もし悩みごとがあるならぁ、遊梨が相談に乗りますよぉ~」
「あはは、ありがと、ホントに困ったら頼もうかな」
「むぅ、何か納得いかないですぅ」
頬を膨らませて抗議する遊梨は、ダンスを通してかなり親しくなったのか、凛太郎の腕にしがみついてぷりぷりしている。
腕に柔らかくてなんとも言えない極上の感触を感じずにはいられない凛太郎は、何事もないような顔を作るのに必死だ。
そんな必死な凛太郎を見ている遊梨は、さらにギュッと凛太郎の腕を自分の胸に押しつけてクスクスと笑っている。
「な、なあ、遊梨……さん? ちょっとひっつき過ぎじゃない?」
凛太郎は引きつった声で訴えるが、遊梨はまったく聞こうとせず、上目遣いでうるうるとした目を凛太郎に向けて言う。
「凛太郎様はぁ遊梨が嫌い……ですかぁ?」
「き、嫌いじゃない、嫌いじゃないよ。ただちょっと…」
人生の中で女性と関わることがなかったから緊張して、とは恥ずかしくて言えずにどもってしまう。
「ちょっとぉ?」
遊梨は追い打ちをかけてくる。
凛太郎は照れを隠すのに必死になって答える。
「ゆ、遊梨が近くにいるから……ほ、ほら、遊梨の服装とか目のやり場に困るっていうか……」
「凛太郎様のエッチ♡」
遊梨は茶化すように言うと、凛太郎は顔を真っ赤にして否定する。
「いや、そういうんじゃなくてだな。えっと、ほら、あの〜」
言いあぐねていると遊梨は意地悪く凛太郎の耳元でささやく。
「凛太郎様ってぇ……かわいいんですねぇ♪」
「っ!? や、やめろ!」
「うふふふ、そんな凛太郎様もステキですよぉ」
そんなやり取りをしていると、乙女が宴の場へ帰ってくるのが見えた。
「遊梨、ちょっといいかな」
「ふえぇ~、どこ行くんですかぁ」
「ちょっと乙女のとこへ」
「むううぅ、早く戻ってきてくださいねぇ」
遊梨は顔を膨らまして凛太郎に要求する。
わかったよと言い残して、凛太郎は遊梨の腕を離して乙女の元へと歩み寄る。
凛太郎を見送った遊梨の顔は先程までとは別人の、凛太郎を自分から奪った乙女を目の敵にするような顔をしていた。
「凛太郎様は私がもらう……乙姫様でも絶対に譲らないんだから」
凛太郎は乙女の元へ歩み寄って優しく声をかける。
「もう、大丈夫なのか?」
「はい、もう大丈夫ですわ」
凛太郎は笑顔になって乙女に提案する。
「よかった、じゃあ一緒にうまいもんでも食べようっか」
「はい!」
先程の陰りのある笑顔ではなく、出会った当初に見せた太陽のような笑顔で応える乙女に凛太郎はドキッとしてしまう。
そんな凛太郎の姿を見た遊梨は、凛太郎たちに近づいて凛太郎の腕を強引に取る。
「凛太郎様ぁ、私もご一緒したいですぅ。ダメ……ですかぁ」
乙女は遊梨の行動に驚いて凛太郎の隣を遊梨に奪われてしまう。
凛太郎も突然の遊梨出現に驚いたが、特に断る理由もなかったので了承する。
「えっ、そりゃいいけど、突然飛びついてきたらびっくりするだろ」
「えへへへ」
凛太郎の腕にしがみついてニコニコと笑顔で答える遊梨は乙女の方に睨みを利かす。
その視線を感じ取った乙女はビクッと肩を震わせる。
乙女の様子に気づいた凛太郎はどうしたのか尋ねるが、乙女はなんでもないことを伝える。
そして、遊梨の行動が乙女に火をつけたのか、乙女も凛太郎の腕をめがけて飛びつく。
「えいっ!」
「うおっ!」
空いていた方の腕に乙女が抱きついてきたことと、乙女の意外すぎる行動で凛太郎は驚く。
その行動に遊梨も目を丸くして、心の中で舌打ちをした。
ロリ巨乳の威力は絶大だった。
遊梨が押しつけてくる双丘は柔らかくふわふわしたものだったが、乙女の双丘は弾力が桁外れなものだった。
「うわぁ……」
腕に伝わってくる双丘の感触は感嘆詞以外の感想しか出てこなかった。
凛太郎の声に反応した乙女は不安そうな顔で聞いてくる。
「凛太郎様? 迷惑、ですの?」
「い、いや、別に、迷惑じゃないし」
「うれしいですわ」
少し頬を赤らめながら凛太郎の腕に顔も引っ付けて笑顔を咲かせた。
腕に伝わる感触に耐えきれなくなった凛太郎は思考を別の方へと向かわせる。
「ほ、ほら、この料理おいしそうだ」
「ホントですわ。すごいおいしそうです」
「凛太郎様ぁ、はい、あーん」
遊梨は凛太郎がおいしそうと言った肉を油で揚げたものーーから揚げーーを指でつまんで凛太郎の口に持っていく。
凛太郎が少し照れながらパクッとから揚げを食べるのを見た乙女も、負けじとから揚げを凛太郎にあーん。
突然のハーレム状態に困惑しつつも、かわいい子たちにちやほやされるのは気分がよかった。
おいしい食事にきれいな女の子たち。
美しい音楽に心が開放されるような景色。
夢のような時間はあっという間に過ぎていき、宴も終焉を迎えつつあった。
乙女は今日ここに来てくれたお礼にとプレゼントがあると言い、別室へと戻っていった。
凛太郎はもしや例の……玉手……いや、うん、勘ぐるのはやめようと自分に言い聞かせる。
「ほ、本当ですのおおおぉぉぉぉ!」
乙女が入って行った部屋から大絶叫が響き渡る。
素っ頓狂な乙女の悲鳴を聞いた凛太郎は慌てて声のする方へ走っていく。
「乙女! どうした!?」
「な、なくなってるんですの」
「何が?」
「我が家の家宝……ですわ」
凛太郎の問いかけに半ば呆然と立ち尽くしている乙女の顔は死人を思わせるほど真っ白になって固まっていた。
浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか後編へ続く
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リアル友なし・非モテ・コミュ障・中二病・ヒキコモリ・ゲーム廃人。
運命のライトノベルに出会い、作家を目指してブログで物語を書いている。
頭の中は常に中二妄想でいっぱい。
コメント返信に命をかけている。
実は、2児のパパで女王様(嫁)の召使いもしている。
詳しいたらこの生態を見る「プロフィール」
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