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世界の食を訪ねて

インド人はナンを食べない!? インドカレー事情

もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう!』[第14回]





インドといえば、カレー。カレーといえば、インド。

というくらい、切っても切り離せないインド人とカレー。


実際インドに行ってみると、人々がびっくりするぐらいの頻度でカレーを食べているのがわかります。日本人がご飯を食べるくらいの頻度でカレー、カレー、カレー。レストランに行っても、カレー、カレー、カレー。


カレー以外のものに手を出しても、またカレーの味がするってくらいに、カレー三昧になります。


そんな、インドカレーといえば?という連想ゲームから、我々日本人が即座に思いつくものといえば、ナンです。


小麦粉を焼いたパンのような食べ物で、香ばしくて、スープ状のインドカレーにつけて食べるとたまらなくおいしいです。


食べた後も異常に腹が膨れるため、満腹感が長く続きます(よってランチに食べると午後、非常に眠くなります)




そんな、カレー&ナンが大好きな私は、インドに行ったときに、本場のものを食べるのが楽しみでした。

早速コルカタで、現地の人が集まるレストランに行き、キーマカレー&ナンを注文してみました。


「うちは、ナンはないよ」

「マジっすか」



その後、数軒の庶民的レストランや屋台を回ってみてもナンを置いてあるところは皆無。インド人、実はナンを食べないのか?


そして、ナンの代わりに出てくるのがチャパティという食べ物です。




一見、ナンと大差がないのですが、ナンのようにふっくらしておらず、甘くないクレープのように薄い食べ物です。多くの場合、塩味がついているところはナンと同じで、やはりカレーとよく合います。


我々が主に日本でよく食べているインドカレーは、バターや油がたっぷり入っていて高カロリーですが、インドの庶民的カレーはさっぱりしているものが多く、ナンより低カロリーなチャパティと相まって、ヘルシーで、食べた後も眠くなりません。

チャパティ、これはこれでいいものです。




日本在住のインド人の人に話を聞いてみると、

「チャパティは、日本人にとってのお米みたいなもんかな。インドの家庭でいつも食べられてる日常食。ナンは、おすしみたいなものかも。みんな好きだけど、年中食べるわけではない。基本的に外食で食べることが多いしね」


なぜ、ナンは家庭では食べないのか。それは、作るのが大変だからです。

チャパティは、小麦粉を水で練って、フライパンもしくはチャパティ作り用の鉄板を使って焼くことができます。このチャパティがインドのおふくろの味であり、花嫁修業もチャパティの焼き方が必修科目です。


それに対し、ナンを焼くときには釜を使わなくてはなりません。



一般家庭にこんな釜はないので、レストランで食べたり、焼いてあるものを買って帰るのが普通なのです。ちなみに、チャパティとナンは使用する小麦粉の種類も違い、ナンの方が高級な素材を必要とします。


「どっちかっていうと、ナンよりもライスを食べることが多いよね」


そうなんです。インドカレーといえばナンだと思っていたのですが、現地ではご飯と一緒に出てくることも多いです。


ターリーと呼ばれる「カレー定食」では、ご飯とチャパティの両方が出てくることが多いです。また、インドの南の方では、完全にご飯が主流です。




と、いうわけで、インドを旅していても庶民的なところを歩いていると、日本(およびインド以外の国)によくあるバターチキンカレー&ナンみたいなものにはお目にかかれません。

そういうものを食べたくなったらどうすればいいのか?

高級なお店に行けばOKです。


こちらは、ニューデリーの高級ホテルの中のレストラン。メニューには、バターチキンカレーとナンが普通にありますよ。


実に濃厚で、日本で我々が知っているインドカレーに巡り会うことができました。



このように、ある国の料理が輸出されるとき、庶民の感覚からちょっとずれることはよくあります。日本人が毎日すしを食べないように、インド人も毎日ナンは食べないんです!


(次号に続く)




【筆者紹介】


森山たつを


早稲田大学理工学部、日本オラクル、日産自動車、ビジネスクラスで世界一周旅行などを経て、日本人が海外で働く方法を研究する「海外就職研究家」となる。


海外就職に関する書籍、記事などを執筆する傍ら、日本人が苦手としている「外国人とのコミュニケーション」「失敗前提でのチャレンジ」「リアルなビジネス」を体験する研修プログラム「サムライカレープロジェクト」(http://samuraicurry.com)を運営。カンボジア・プノンペンにあるカレー屋を使っての研修プログラムは、既に120人以上の卒業生を輩出している。


主な著書に「セカ就!世界で就職するという選択肢」(朝日出版)、「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)などがある。


連載:もりぞおの『サムライカレー、世界を喰らう』

第1回:カンボジアでカレー屋を作ったら、カンボジア人がカレーが嫌いだということがわかりました

第2回:カンボジア人に「カレーを美味しくしてくれ」と頼んだら、彼女は練乳に手を伸ばした

第3回:カンボジア人が好きなカレーを作るために、カンボジア人の家に突入してみた

第4回:「当店の『たこやき』はイカを使用しております」―カンボジア水産事情

第5回:飲食店泣かせのカンボジア、物価は安いが、原価は高い」

第6回:1日10時間野外労働、時給は115円――カンボジアの屋台店主は生活できるのか?

第7回:アクエリアスは炭酸入り、スプライトは3倍甘い。そして、サムライドリンク!――カンボジア飲料事情

第8回:カンボジア人にモチは売れるのか?スイーツ突撃実態調査!

第9回:シーフードヌードルは、フィリピン人のおふくろの味?

第10回:マニュアル人間は希少人材!?創意工夫が店を滅ぼす!

第11回:世界最大のラーメンチェーン店は、熊本発のとんこつラーメンです

第12回:プノンペンのイオンモールで大人気なのは、回転しゃぶしゃぶ屋です

第13回:アジアの新興都市プノンペンで繰り広げられるチキンレース


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