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2017/09/09

ダンケルク 感想 ~逃げるもの、追うもの、そして救うもの~【映画レビュー】

[映画感想]

◆ダンケルク 感想◆


評価/オススメ:★★★★★
(人を選ぶかもしれませんが、オススメしたい作品です)


◆synopsis◆


フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。
背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら、若き兵士たちの姿があった。

一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。
民間の船長らは息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。
英空軍のパイロットたちも、数において形勢不利ながら出撃。

こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は!?

※公式HPより

※一部文月加筆訂正

◆comment◆


2017/9/9 本日から日本劇場公開です。

いい意味で、予告編に裏切られました。
クリストファー・ノーランのインタビュー以外はほとんど情報を見ることなく、
いってみれば出たとこ勝負で劇場に向かいました。

昨日見たのは、小島監督との対談。
Twitterでも呟きましたが、こちらの記事です。(シネマトゥデイ様)

目指す場所は同じ!『ダンケルク』公開記念クリストファー・ノーラン×小島秀夫対談
※シネマトゥデイ様のページに飛びます。

結果・・・・
アメリカンスナイパー以来の、上映中に感涙にむせぶ事態に見舞われ、驚きでした。

この映画は戦争アクションではなく人間の物語。そして決断の物語。
そして無数のドラマがあったであろう史実をひとつに凝縮した非常に濃い作品でした。

google先生に質問してみても「ドラマ/スリラー」と表示されるのはごもっともなのでした。

それこそ「プライベート・ライアン」の様な展開を期待していた、
つまり『タイトルと予告編だけ観て勝手に想像を膨らませていた文月』は、
本当に驚愕してしまったのです。

戦わない、、、、だと。

それをもって期待外れだと言う気は全くございません。

銃を構えてやりあうのではなく、生き残るため、そして救うための行動はこんなにも熱いのか?という感激が
クライマックスの「あの瞬間」で涙に変わった
のだとわたしは考えます。

あ、でもめちゃくちゃ熱い展開は空からやって来るのでご安心を。

まさに「天使が舞う空」

わたしが胸躍ったのは「彼ら」の勇気と決断に寄るところが多いです。


これから劇場に行かれる方も多いでしょうから、
ネタバレにならないように気をつけながらご紹介します。


ひとつ。
あえて書きますと、本作に主役はいません。
「ブラックホーク・ダウン」ほどではありませんが、それぞれの視点を象徴するために
主軸となる人物が配置され、それが異なる時間軸で入れ替わりながら、
「あの瞬間」
に向けて走り出すのです。

ん?ん?

まったく何の説明もなく、観る側は「ダンケルク」という世界に放り出される形になるのです。

不安。わたしが最初に感じたのは不安でした。

ダンケルクの戦い、という状況を理解されてご覧になる方も大勢いると思いますが、
おそらく「え?なにこれ?何が始まったの?」と思われるかな、と。

しかし、それが製作側の狙いだとわたしは考えます。

明確な目的を持って、進撃する攻勢側と、戦線が崩壊して撤退していく側とでは、
情報量もその正確さも圧倒的に差が出てきます。とくにこの時代は。

わたしたち以上に、物語の中の彼らは「訳の分からない状況」の中で、「逃げること」
そして「救うこと」を強いられるのです。

それを観る側も「追体験」するために説明などなしに、
わたしたちを彼らと同じ目線に立たせることで、
どういう立ち位置でこの作品に入り込めば良いのかを教えてくれます。
(近作だと例えばマッドマックスなんかと同じ状況になる訳です)

「インターステラー」なんかでは、よくよく状況を整理してくれたのですが、今作では「自分で考えろ」と言わんばかりの展開に戸惑う方もいるかもしれません。

でも、救いがあります。

この作品はクライマックスに迎える「ある瞬間」を、
異なる視点、異なる時間軸で迫りながら、
最後はしっかりと着地していくのです。

すべての場面の意味が「あ!」という驚きとともに理解できる。

なんて、丁寧な作品なのかと、唖然としました。


とは言え、初見だと「え???」と混乱される方もいらっしゃると思います。
文月の記憶を頼りに構成を一旦整理します。
(興奮状態で書いていますから、記憶違いはお許しを(笑))

物語の主軸は言わずもがなのダンケルクからの撤退。

ダンケルクの戦い(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84


本作は「逃げるもの」とそれを「救うもの」の2つの立場から、そして3つの視点で物語は展開します。

●視点①
逃げるもの・・・ダンケルクまで撤退してきたある陸軍兵士の視点


※フィン・ホワイトヘッド(トミー)


※アイナリン・バーナード(ギブソン)


※ハリー・スタイルズ(アレックス)

彼ら3人の兵士を中心にした視点です。


****

―――Introduction
疲れ切っていた。

横に並んでいる同じ小隊の面々も、警戒姿勢なんかどこかに放り出したみたいに忘れていて、農園に突き刺さっているカカシみたいに棒立ちのままで通りを進んでいる。

明るいというのに僕たちを取り囲んでいる建物には人の気配なんて少しも感じなくて、
ひょっとしたらコレはきっと自分は夢を見ていて、重くのしかかる疲れも、
そして絶望も、幻なんじゃないか。

そう思った。

ひらひらと舞い降りてくる白い何かが目に入った。雪なんかではない。
ましてや天使の羽根なんかでもない。
天使なんていない。

ちょうど目の前に降りてきたそれを掴んでみる。

よく見るとそれはビラだった。
そには真っ赤なインクが中心だけ塗り忘れたようにポッカリと空いている
下手くそな絵が書いてあって「包囲したぞ、降伏しろ」と英語が打ち込まれている。

僕は他人事みたいにそのビラをポケットにしまい込む。
そうすることで、現実が消えてなくなるとでも言うように。

何かが破裂したような大きな音がした。

そしてうめき声。

反射的に首にギュッと力が入ってとても不快な感覚が背中を伝って全身を硬直させる。

銃撃―。

声をかけあう暇も与えられず倒れて動かなくなる仲間。

誰が、どこで、どういうことになっているのか。

そういうことを気にかけることもできないくらい、僕は、僕たちはみな、
追い詰められていた。

必死に通りを駆け、塀を、門を乗り越えて身を隠そうとする。

ライフルすら手放した僕は、その音から逃げることだけしかできなかった。

気が付くと視界が開け、街が消えた。

海。そして無数の黒い線。兵士たちが頭を垂れて海に向かって並んでいる。

そう。ここはダンケルク。追い詰められた僕たちが見つめるその先に「母国」はうっすらと霞んで見えた・・・・

~文月の回想による散文~

●視点②
救うもの①・・・ダンケルク撤退を支援するために派遣されたある空軍パイロットの視点


※トム・ハーディ(ファリア)
※わたしはむしろ彼だけで2時間作品を作って欲しいと思うぐらい、感情移入してしまいました。


※ジャック・ロウデン(コリンズ)
※コールサインは「サマセット???」だった気がしますが、記憶違いでしたらそっと教えて下さいね♫

彼ら2名の若きパイロットたちの視点で展開します。

//////

―――Introduction
「カレーまで飛んだほうが近い」
試しにそう言ってみたが無駄だった。

嘘みたいに透き通った青の上に浮かぶ3つの陰。

スピットファイア3機のデルタ編隊。

・・・たったこれだけで「あそこ」向かえだって?アホか!」
と飛び立つ前に声が聞こえた。

まったくクレイジーだ。

そう、クレイジー。

クレイジーなのは当然で、それを承知でするのがオレたちって訳で、
それをいまさら云々する気はサラサラないね。

飛ぶこと、そして戦うこと。オレができること。

そして『今』この事態の中で、オレが、オレたちができること。
それができる立場にあるのだから、やる。単純だと笑うやつもいるだろうけど、
それでいいんだ。世の中のほうが物事を難しくしているんだとオレは思う。

燃料たっぷり70ガロンある。

大丈夫。還ってこられる。
いや、迎えにいける。

―――――!

「11時、敵機(Tango)!」

腹の奥が震えるような大きく低い爆音がオレたちの上をかすめて行く。

メッサーシュミットBf 109。2機。

反射的に操縦桿(スティック)を引き倒してブレイク。

後方視認用のミラーと目の前の計器、そして僚機をそれこそ目が回る速さで追っていく。

捉えたメッサーシュミットは背中に覆いかぶさるような勢いで僚機に喰いついて離れない。

「オレが行く」

トリガーに指を掛けながら僚機に呼びかける。

たどり着いてみせるさ・・・・オレたちの他にあの場所に向かう友軍機はない。

今のところは・・・

~文月の回想による散文~

●視点③
救うもの②・・・同じくダンケルク撤退を手助けするため、善意でイギリスの港からダンケルクへと向かった民間人の方(を代表してある壮年の船長親子の)の視点


※マーク・ライランス(ミスタ・ドーソン)


※トム・グリン=カーニー(ピーター)
※ドーソンとピーターは親子という設定です。


※バリーコーガン(ジョージ)

彼ら民間人3人の視点で物語は進みます。

//////

―――Introduction
頑固者のオヤジは一度決めたらやめることを知らない。

「荷物を運び出せ」

ある朝顔を見るなり、オヤジは港まで僕を連れ出して船の調度品を出すように言った。

何をしようとしているのかを、僕は知っている。

多くの民間の船が政府に徴用されるんだ。

「どうして海軍の船を使わないの?」

当然そんな疑問を口にしてしまう。

「海軍の船が沈められたら、誰が『ここ』を守るんだ?」

オヤジは黙々と船の整理をしている。

どこからかオレンジ色した小袋が大量に桟橋に運び込まれてくる。

ウチの船の前にもそれは積み上げられて、やがて山になった。

―救命胴衣。

「お前はここに残っても良い」

とオヤジは言うだろう。

もしもそう言われたら、NOと言い返すつもりだ。

オヤジをひとりにすることはできないし、僕だって男だ。そして兄さんとも約束した。

ふと、船に近づいてくる人影があった。

ジョージ。人懐っこい笑顔を浮かべた、ひょろひょろジョージ。僕の一番の友人だ。

「何をしているんだい?」

「お前も手伝えよ」

オヤジはジョージを見て、ほんの一瞬表情を曇らせた。ジョージが嫌いだからじゃない。

バカをやるのは自分たち大人だけで十分だと思っているからだ。

「もやいを解け」

ジョージにオヤジは声をかけると、エンジンに手をかけた。

水兵がこちらに向かってくる。

「オヤジ!海軍の人たちが」

「この船の船長はわたしだ」

オヤジは舵を切って桟橋から船を離していく。

と、船にジョージが飛び乗ってきた。

「ジョージ!これからどこに行くのか解っているのか?」

「フランス。ダンケルク。戦場だろ?」

オヤジは肩を竦めてエンジンの出力を上げた。

もう何も言わなかった。水平線の先に薄く見える陰。そこに何が待っているのか、
きっとオヤジでも解らない。

~文月の回想による散文~

・・・・・と、まぁ、こういう導入です。
すみません。ちょっと、書きたくて、書いてしまいました(汗)



そして忘れてはいけないのが、絶望的な状況の中を
『立ち続けること』でで「精神的支柱」となっていた陸海の指揮官2名の姿です。


※ケネス・ブラナー(ボルトン海軍中佐)


※ジェームズ・ダーシー(ウィナント陸軍大佐)

彼らが果たして物語がどこに向かっているのかを観客に示してくれる『灯台』のような方たちです。



・・・・・
敵は倒したいし、味方が倒れるかもしれないが、自分は死にたくはない、
という究極の矛盾。
脱出手段が限定されてしまった、この状況。

予告編では、おそらくフィン・ホワイトヘッドを中心に物語がダイナミックに展開するのだろうと思う方もいるでしょう。

しかし、この映画は「無数の人間が、ある目的のために、自分ができることをする」ということを追う物語です。

生き残るために、何をしてしまうのか?

救うために、何を決断しなければならないのか?

場面のひとつひとつが1話完結型になっている連絡短編を読んでいるようです。

ダンケルクの撤退という史実を題材に、戦争の意義だとか、敵を倒すことだとか、そういうことではなく「ある状況に陥った時に何を自分はするべきなのか?」ということを問いかけてくる、強烈な作品なのでした。

だからでしょう。
本来はドイツ軍のシーンが描かれても良いものの、
本作ではドイツ兵の姿は出てこないのです。

枢軸と連合がどうだとか、イデオロギーの正当性を訴える材料はほとんど見受けられません。

登場人物たちが決断をするための、ひとつの歯車として、
あるいは劇中に漂う恐怖の象徴として、「敵」は轟音とともにわたしたちの前に姿を見せてきます。
劇場で鑑賞された方はお解りでしょうが、あれホント怖いですよね。
映画だと解っていても、恐怖を感じる音です。
「新しい戦争映画」だという声にわたしが同調するのなら、その点です。

その恐怖とは、いつわたしたちが見舞われるかも解らない、恐怖。
それと同じなのです。

あぁ、それにしても、わたしはトム・ハーディ演じるファリア達が、『トップガン』さながらのカメラワークで、古き良きドッグファイトを展開し、かつ、劇中最高のシーンを創り上げていたのを観られただけでも、満腹でした

ただ、わたしの涙腺が崩壊したのは別のシーンです。

無数の勇気ある男たちが、あんなにも誰かを救うために立ち上がり、戦場に向かったのかと思うと、今でもまた涙が出そうです。

なんの取り柄もないわたしでも、できることはある。

そういう忘れてはいけないものを、この物語はわたしに思い出させてくれました。

2017年映画鑑賞 149本目

◆overview◆


・原題: Dunkirk 2017年公開
・上映時間:106分

・監督:クリストファー・ノーラン   
代表作:「ダークナイト」「インターステラー」
・脚本:クリストファー・ノーラン

・メイン・キャスト

フィオン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン
ケネス・ブラナー
キリアン・マーフィ
マーク・ライランス
トム・ハーディ

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