突然ですが、50音を順に発音していくときに他の行と少し発音方法が違う行が存在するんですが、みなさんお分かりですか?
そう、答えは『た行』です。
た行は舌の動きに意識しながら発音すると分かりやすいんですけど、『た・て・と』の発音の際には舌が上あごについて、それを押し出す(音を破裂させるようなイメージ)ことで発音してますよね。
これ厳密に言うと、た行は『無声歯茎破裂音』『無声後部歯茎破擦音』『無声歯茎破擦音』の3種類から構成されている行なんだそうで、それぞれ50音には発音の際に声を出しているのか・音を発生させているだけなのか、舌が歯や歯茎と接触する・しない、口腔内で舌を擦る・擦らないとかかなり細かい区分けがされているんだそうで。
これをしっかり理解したうえで意識的に発声練習をすることで、綺麗な発音をすることができるらしいんですが、ここから先はアナウンサーや声優を目指しましょう!みたいな話をするつもりは微塵もないので、気になる人は『た行 発音』でググってみてください。
では本題。
『た行』は舌からすればブラック発音だ
さて、前述にもありますが『た行』というのは5音中3音で舌に上下運動を強いることになるわけです。
これ舌からすればいい迷惑で、なんとなくやる気の出ない朝、睡魔が襲ってくる昼、ヘトヘトになってぐったりしている夕方、いよいよ何もしたくなくなる夜、これらのシチュエーションみなさんもありますよね?私は毎日です。
しかし舌的に「な~んか今日やる気でねぇ~な~」なんて日があったとしても、いついかなるときでも私たちが『た行』を発音するたびに強制労働を強いるわけですよ。舌に休息はありません。
人間相手にこれをやると世間では俗にブラック企業と呼ばれ、悪徳な組織であるという認識がされますが、舌からすれば『た行』はブラック発音なわけです。
なので、た行を多く発音する人の舌は延々とブラック発音に悩まされ、そうでない人の舌はホワイト発音の多い労働環境にいられるわけです。
それぞれ生まれながらにしてBLACK OR WHITEの天秤にかけられてしまう舌に比べれば我々はまだ選択の自由がありますから、自分の目で見て確かめて、ブラック企業には引っかからないようにしたいですね。
と、新卒で見事にブラック企業に引っかかった私が言っておきます。
T.M.Revolution 『BLACK OR WHITE? version 3』
ちなみに、た行の発音が多い歌なんて歌おう日には舌からのクレーム必至。
恐らく舌が最も恐れる歌は、サビで「てってってー」を連呼する超絶ブラック発音歌。
あとどうでもいいけど、ずっと「てってってー↑ てってててー↑」て楽しそうに歌ってるのに、なぜか語尾で急に「てぇ↓」ってテンション下がるのが気になり始めたらツボに入ってループするたびに笑ってた。
初音ミク 『てってってー』 1時間 作業用 (※1時間 作業用とかなんの罰ゲームだよ)
『ツァ行』の伝道師
しかしそんなブラック発音である『た行』をそのまま発音するのではなく、『ツァ行』と呼ばれる発音に変えて数多くの楽曲を歌いこなしてきたアーティストがいます。
それがこのかた、
Acid Black Cherry / Black Cherry
現在はAcid Black Cherry名義でソロ活動中のyasuです。
活動休止中の大人気ビジュアル系ロックバンドJanne Da Arcのボーカルでもあります。(活動休止直前はメイクも薄くなってたおかげで2人くらい普通のオッサンが混じってたけど)
そんなyasuの曲中での発音は完全に意識してツァ行を発音しており、サビに向かえば向かうほど、テンションが上がれば上がるほどにハッキリと『ツァ』と発音するようになっていきます。
このBlack Cherryという曲も最初のほうは『喉が渇いツェただけなのぉ~よぉ~』とツァ行の片鱗は出ていますが、まだ変身を残している状態です。しっとりとサビを歌っている場面でも『た行』の発音をしています。
しかしこれがいざサビに入り勢いがついてくると、『Black Cherry!濡れツェ、堕ツィツェ、わツァしぃのなかぁへ~ツァねを~残~しツェ~アァー!』となるわけです。
どうです。ゾクゾクするでしょう。た行の発音をほとんど放棄しているのにこの色気。
ツァ行のときなんて舌はだる~んとしてますからね。前歯の裏側に押し当てるだけで発音できるので、上顎まで押し上げて発音時にペロンとさせる上下運動の必要がないんですよ。これには舌もニッコリ。
これJanne Da Arc時代だともっとツァ行の発音が顕著で、むしろ、た行で歌っている曲を探すほうが難しかったんですよ。
中学生のときに初めて聴いて「ちゃんとた行の発音しろ」って思ってたんですけど、アルバム1枚聴き終わるころにはすっかり魅了されちゃって、友人がカラオケで綺麗に歌おうものなら「ちゃんとツァ行の発音しろ」って説教したくなるくらいに、yasuのツァ行は聴けば聴くほどクセになるのです。
以上を踏まえてもう1曲、ABCの初期の名曲のこちらを聴いてみましょう。
Acid Black Cherry / SPELL MAGIC
『自分勝ツェに飼い慣らしツェ!』からの、『あんツァなんかキライラライアァ~イ!』ですよ。
最後のほうなんて『イツァイツァくツェ、ヤバィヤララア~イ!』って、もはや文字にするとワケのわからない状態。
あと面接官のお姉さんがすごくタイプ。あ、間違えた。ツァイプ。
こういうふざけたMVもyasuの場合はやらされてるんじゃなくて、自分からガンガンやりたがるのもホント人としておもしろい。関西人特有のトークスキルもあるし。
Acid Black Cherry / 愛してない
ちなみにバラードではこのようにハッキリと『た行』の発音をしています。
つまり『た行』が言えないのではなく、確信犯で『ツァ行』にしているのです。
特にこの曲は『た』と『て』の発音が多く、いつ来るかいつ来るかと期待してしまうけれど、聴くたびにいつも期待もむなしく5分が過ぎて、中期のジャンヌのアルバムの6曲目くらいに入ってそうな曲だなぁ、良い意味でABCっぽくなくて好きだなぁ、といつの間にか思考が別ベクトルに向いている名曲。
『ツァ行』の誤った使い方
さて、ここまで読んでいただいた方は既にもう、タイトルも『ツァ行のツァヅァしぃ使いかツァ』にしか読めなくなっているんじゃないかと思うんですけれど、これ割と気をつけたほうがよくてですね。
先日、職場の同僚と昼休憩中にこの話で大いに盛り上がりまして、もしもyasuが道案内をしたらっていうテーマで遊んでたんですよ。
ジャンヌっぽく言うなら「そこっの交差ツェんをっ!ひヅァりぃにまがぁっツェ~!」だし、ABCっぽさを出すなら「キミはきっツォ、僕を見つけヅァしツェくれるねぇ~♪」とかになりそうみたいな。
ABCに関してはもはや案内することを放棄している。ABCの歌詞ってそういうところある。
で、昼休憩が終わってすぐの会議中に「こちらの表記は誤りです。ツァヅァしくはこちらの…」まで言ったところでハッ!となって、大恥をかいたんですね。
事情を知っている同僚数人は下を向いて肩を震わせてるし、課長は「急にどうした?」とか聞いてくるしでもう酷い目にあいました。
なんとかその場は「失礼、噛みました。」で通しましたが、これ自分で思っている以上にツァ行は潜在意識に擦り込まれるので、みなさんもジャンヌダルクごっこをするときはくれぐれもご注意を。
ちなみに課長はノリがいいので、すぐに「ちがう。わざとだ。」と反応してくれました。
そこですかざす「失礼!噛みまみたっ!」と言わせてくれるメンバーとの会議で本当によかった。