Redmineの最新機能でサポートデスク管理をより効率よく使う運用方法のアイデア
前回のRedmine大阪で、前田剛さん、須藤さんの話を聞きながら、Redmineの最新機能でサポートデスクをより効率よく使う運用方法について、考えたことをメモ。
ラフなメモ書き。
【参考】
第17回Redmine大阪の感想 #redmineosaka: プログラマの思索
Redmine大阪 第17回勉強会 - 全文検索でRedmineをさらに活用! #RedmineOsaka - ククログ(2017-08-27)
【1】サポートデスクやITILによるソフトウェア保守の運用作業で、従来のExcelでやっていた頃はいろんな問題が噴出していた。
その内容は、4年前の下記のスライドで既に述べた。
「Redmineの運用パターン集~私に聞くな、チケットシステムに聞け」
その問題点は下記に集約されるだろう。
【1-1】突発的な問合せ、障害が発生すると、作業が混乱する
【1-2】問合せから、暫定対応や根本的な是正対応への作業連携が悪い
【1-3】問合せ対応や障害対応のナレッジが蓄積されない
そして、Redmineを導入すると、それら問題のほとんどは解決されることは資料で既に述べた。
そこで、Redmine大阪で前田剛さんや須藤さんの講演を聞きながら、Redmineの最新バージョンに盛り込まれた新機能や全文検索プラグインを使うと、上記の問題から出てきた課題は、かなりいい感じで解決されるように思う。
【2】突発的な問合せ、障害に対する暫定対応・根本的な是正対応への作業連携は、基本はすべてチケット化することでほぼ解決できる。
さらに、Redmineの最新バージョンの機能、いくつかのプラグインがより使いやすくしてくれる。
いくつかあげてみる。
【2-1】テキストエリアのカスタムフィールドのワイド表示を設定すれば、チケット入力画面で、障害原因や対策内容のエリアを広くできるので入力しやすくなる。
オペレータやプログラマも入力してくれるようになるだろう。
Redmine 3.4 新機能紹介 Patch #21705: 「長いテキスト」形式カスタムフィールドの「ワイド表示」オプション| Redmine.JP Blog
【2-2】ヘルプデスクPJでは、デフォルト担当者=オペレータのユーザグループに設定しておけば、問合せチケットを顧客が入力した時に担当者にデフォルト担当者が設定され、オペレータ全員に通知される。
その結果、顧客の問合せを見失った、という状況を減らせるだろう。
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Feature #482: プロジェクトごとにデフォルトの担当者を設定 | Redmine.JP Blog
【2-3】個人的には、ヘルプデスク管理や障害管理では、IssueTemplateプラグインは必須と思う。
なぜなら、たくさんのカスタムフィールドに入力させる運用よりも、説明欄一つに数多くの情報を入力する方が、入力者にとっては楽だし、説明欄に大量の情報があれば、全文検索プラグインの対象範囲が広がるので、有用な情報を検索しやすくなるから。
Redmineで高速に全文検索する方法 - ククログ(2016-04-11)
【2-4】チケット一覧に「更新者」「最終更新者」「最新コメント」を検索・表示できるようになった。
この機能を使えば、たとえば、最終更新者が顧客になっているチケットはオペレータが未対応なので即対応すべき、と分かる。
他に、チケット一覧で最新コメントを見れば、どこまで対応したのか、が一目で分かる。
オペレータ向けにクエリを作っておくと良いだろう。
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Feature #17720: チケットのフィルタに「更新者」「最終更新者」を追加| Redmine.JP Blog
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Feature #6375: チケット一覧に「最終更新者」を表示 | Redmine.JP Blog
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Patch #1474: チケット一覧で最新の注記を表示 | Redmine.JP Blog
【2-5】チケットの添付ファイル名称を検索できるので、顧客がこんな感じのファイルを添付したんですけど、みたいな時に役立つ。
やはり、エビデンスがないと対応しにくいから。
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Feature #2783: 新たなチケットのフィルタ「ファイル」 | Redmine.JP Blog
【2-6】オペレータやプログラマには、実績工数はチケットに付けて欲しいと管理者サイドでは思う。
チケットに実績工数があれば、集計された数値を元に、いろいろ分析できるから。
最新バージョンでは、チケット一覧の実績工数のリンクを押すと、工数明細が表示されるようになったので、ドリルダウンできるのは嬉しい。
なぜこのチケットはこんなに工数が多いのか、調べる時に役立ちそう。
Redmine 3.4 新機能紹介 (2/5) Patch #24649: チケット一覧の「作業時間」「合計作業時間」をクリックすると作業時間の一覧を表示 | Redmine.JP Blog
【2-7】サポートデスク用PJでは、チケット管理を顧客とオペレータが共有するが、社内タスクや作業連携用チケットは顧客に見せたくない場合がある。
そんな場合、管理画面で、トラッカーに対するロールベースの権限制御を行えば良い。
Redmine 3.3新機能紹介: トラッカーに対するロールベースの権限制御(チケットの閲覧/追加/編集/削除/注記の追加) | Redmine.JP Blog
たとえば、「問合せ」チケットは顧客もオペレータも参照・更新できるが、「社内用タスク」「社内向け課題」のように社内の開発部隊とやり取りするようなチケットは、顧客に見せないように設定できる。
以前は、社内向けタスク等のチケットはサブプロジェクトに登録する運用にするなど、一手間かかるのが面倒だった。
しかし、この機能を使えば、1個のプロジェクトで、顧客が見えるチケットと見えないチケットを細かく設定できるので、オペレータは何も気にせず起票すればいいから、チケット入力が楽になる。
顧客に見えるトラッカーは限定されているからだ。
【2-8】PJ設定画面で「新しいチケット作成時のデフォルトの対象バージョン」を設定できるようになった。
この機能を使って、デフォルト対象バージョンを「バックログ」に設定しておけば、顧客が問合せチケットを起票した時に、バックログに自動設定されるので、オペレータは対象バージョン=バックログのチケットを優先的に対応すればいい。
Redmine 3.2.0 リリース | Redmine.JP Blog
Feature #1828: Default target version for new issues - Redmine
サポートデスク管理でも、対象バージョン=対応すべき納期で運用すれば、どの期日までにどの問い合わせチケットを優先すべきか、ロードマップ画面で判別しやすくなる。
また、対象バージョン=バックログの問い合わせチケットは、問合せの未対応の貯蔵庫と見なせるので、選択しやすくなるだろう。
問い合わせチケットはただでさえ、たくさん発生して、チケット一覧に埋もれてしまいがちだからだ。
【3】さらに、全文検索プラグインを追加すれば、過去の問合せや障害の履歴をランク付けして検索できる。
有用な情報がスコア表示されるので、Redmineに問合せや障害の情報が蓄積されるほど、価値あるシステムになるだろう。
つまり、全文検索プラグインはRedmineをナレッジシステムに進化させてくれる可能性を秘めていると思う。
また、須藤さんの発表資料のように、全文検索プラグインは数多くの可能性を秘めている。
たとえば、類似Issue機能、入力補完などの機能だ。
これらは、GoogleAdsenceやAmazonの関連商品表示のように、あなたが入力したチケットは過去のこのチケットに似てませんか?とRedmineが教えてくれるわけだ。
特に、チームに新規加入したメンバーは、問い合わせ対応や障害対応を知らないはずだから、システムが自動支援してくれる機能は非常に有効だろうと思う。
また、Google日本語入力みたいに、チケット入力時に、Redmineが単語を入力補完してくれるとありがたいはずだ。
特に日本語は同音異義語がすごく多いので、表記揺れや類義語があるだけでも、検索にヒットしない場合があるからだ。
たとえば、「打合せ」「打ち合わせ」で検索した時に、いずれも検索結果に表示されると嬉しくないだろうか。
サポートデスクのオペレータの観点では、入力時にあまり神経を尖らせることなく、簡単に入力できて検索できる方がありがたいはずだから。
つまり、Redmineに機械学習や人工知能の機能を追加することで、Redmineに蓄積されたデータを有効活用できるはずだし、本来のナレッジシステムに進化させることができるはずだ。
すなわち、このプラグイン実装の背景を考えると、昨今流行している機械学習や人工知能の技術をRedmineに簡単に適用できる事実を示唆している。
Redmineの未来にとって、とても興味深いだろうと思う。
たとえば、Microsoftが提唱する「働き方AI」みたいに、Redmineを使って、オペレータの業務を効率化することで、昨今の働き方改革の時流に乗り、AIを使って賢く働きましょう、みたいなことも、Redmineで実現できないだろうか?
働き方を自ら改革、機械学習とAIを活用するマイクロソフトの「Office Delve」と「MyAnalytics」 - クラウド Watch
マイクロソフトOffice365にAI機能「MyAnalytics」、これからは働き方をAIに聞く時代になるの? | ロボスタ
【4】以上のようなことを考えてみると、Redmineというツールは非常に面白いな、と思う。
世界中のユーザが使い込んでいくうちに、こういう使い方ができればいいな、という改善要望が1つずつ実現されることで、新たな使い道が発見され、そのアイデアに触発されて、さらに別の新たな使い方が見いだせる。
サポートデスク管理のように、Redmineが生まれる前からずっと存在している業務でも、Redmineのように、かゆいところに手が届くUIを提供してくれるツールが、サポートデスクをより効率化してくれる。
こういう細かな機能改善が、数多くの人たちが業務に触る時間を短縮し、本来の作業に注力できる環境を提供してくれるから。
そういうRedmineのバージョンアップの歴史を振り返ると、今後も期待できるし、それら最新機能をどの業務にどのように使えば効果的なのか、を考えることがとても楽しくなる、と思っている。
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