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クローズアップ現代+「揺れる“教科書採択”〜教育現場で何が?〜」[字] 2017.09.06

全国の有名進学校に送りつけられた大量のはがき。
「反日極左の教科書」。
「採用を即刻中止することを望む」。
内容は新たに採択した歴史教科書への抗議でした。
NHKの独自調査によって抗議を受けた国立・私立中学校は全国で29校に上っていることが分かりました。
一体誰が何のために送ったのか。
さらに、この夏初めての道徳教科書の採択を巡っても各地で混乱が…。
教科書採択で大きく揺れる教育現場。
今、何が起きているのでしょうか。
そもそも教科書はどのように採択されるのでしょうか?国は、各出版社から申請された教科書に対し適切かどうかを審査する検定を行います。
国の検定に合格した教科書の中から公立であれば地域の教育委員会が私立や国立であれば学校長の権限で学校ごとに選ぶことができます。
教科書の採択においては政治などによる不当な介入から教育の独立を守り地域や学校ごとの実情に応じた多様性を認めることが基本的な理念となっています。
ところがこの夏関西のある私立中学校に抗議のはがきが大量に送られてきていたことが発覚。
教育現場で教科書採択の自由を脅かしかねない事態になっていることが分かってきました。
関西の有名進学校の校長がインターネット上に載せた文書。
採択した教科書に抗議が相次いでいると記しました。
「届くたびにうすら寒さを覚えた」。
批判の対象になったのは2年前に国の検定を通った学び舎発行の中学校の歴史教科書。
この教科書を採択した38校に今回、NHKがアンケート調査を行ったところ29校で同じような抗議を受けていることが明らかになりました。
多くの学校がトラブルを恐れ匿名を希望する中実情を知ってほしいとある私立中学校が取材に応じました。
これがそのはがき。
「採用を即刻中止することを望みます」。
この教科書は、国の検定を通った8冊の中で、唯一慰安婦についての記述があります。
日本政府が慰安婦問題について謝罪と反省を示した河野官房長官談話を紹介しその上で、強制連行を直接示すような資料は発見されていないという現在の政府見解も併せて記しています。
採択に抗議するはがき。
半年間にわたって届き、最終的に100通以上になりました。
この学校が学び舎の歴史教科書を採択したのは子どもたちの目線で歴史が分かりやすく語られていると考えたからでした。
国の検定を通った内容に抗議がくるとは思いもよらなかったといいます。
一体誰が、何の目的で抗議のはがきを送ったのか。
はがきは少なくとも2種類ありました。
その1つが、日中戦争の様子を写したと見られる写真はがき。
差出人はOBと書かれ匿名でしたが作成者の名前が印刷されていました。
水間政憲氏。
戦後の歴史教育に疑問を感じ独自に近現代史を研究してきたという水間氏。
南京事件などについて誤った記述があると指摘しています。
みずからの考えに賛同する人にはがきを販売。
OBが抗議をすると有効だとも記しています。
本人を訪ねました。
抗議のはがきには水間氏のものとは別のものもありました。
それが全国各地から送られていました。
住所をもとに送り主一人一人をたどりました。
大阪市に住む30代の男性が取材に応じました。
1年ほど前正しい日本の歴史を学ぶという勉強会で頼まれて名前を書きました。
しかし、宛先となる学校名は空欄のまま。
はがきはその場で回収されたといいます。
1人で大量のはがきを配り署名を依頼したという人物にもたどりつきました。
ある保守系団体に所属するこの男性。
同じ歴史認識を持つ人たちのネットワークを使ってはがきを送ったといいます。
抗議のはがきを送った人たちの中には地方議員や自治体の市長など政治家の名前もありました。
その一人、広島県議会議員の石橋林太郎氏です。
はがきを送ったのはあくまで個人としての行動で正しい歴史教育をしてほしいという思いからだったと話しました。
石橋氏は、過去に市民団体も特定の教科書への反対運動をしていたと指摘しました。
多い学校では200通を超えた抗議のはがき。
ほかにも医師や経営者の肩書を持つ人たちからのはがきも含まれていました。
はがきについて、送った人からは、啓もうですという声や、圧力という意識はないという声も聞かれました。
一方、抗議を受けた学校へのアンケートでは。
という声も多く聞かれました。
教科書の検定や採択を巡る問題を研究してきた浪本さん。
教科書の採択について、外部からさまざまな意見が伝えられると。
このことの是非については、どう考えればいいんでしょうか。
さまざまな意見、国民がいろんな声を上げること自身は、結構なことだと思うんですね。
しかし、今回の場合は、検定済み教科書の内容に対する批判が、学校に寄せられたということですね。
検定をするのは文部科学省ですから、そこに抗議の声を上げないと、抗議をする人たちの意図は通らないんじゃないかというふうに私は思いますね。
これはやはり、圧力ではないという意識だということなんですけれども、受け取る側にとっては、これ、重荷になるということですか。
もちろんそうですね。
相当大量のもの、はがきが押し寄せてきたということですので、受け取るほうとしては、強く圧力を感じるということになったんじゃないでしょうかね。
さあ、長年、教育問題を取材してきた西川解説委員にも聞きたいと思うんですが、これまでも教科書を巡って、さまざまな議論があったわけですけれども、今回のこの動きというのは、これまでの動きとはどうつながってくるんでしょうか?
背景の一つは、2001年に初めて合格をしました、新しい歴史教科書を作る会による教科書の賛否などですね、歴史認識を巡る教科書への記述についての議論というのが、社会問題として大きく取り上げられるようになったということがあります。
当初ですね、教科書の記述を巡るさまざまな意見というのは、検定を行う国や教科書会社に向けられていたわけですよね。
検定に合格すると、教科書は採択段階に入りまして、こうした段階では、意見は教育委員会に寄せられてたんですけれども、今回、さらに批判や抗議が、こちらの教育現場のほうに寄せられた。
特に建学の精神に基づいた独自の方針で教育を行ってきました、私学の個別の学校に個別に届いてるということで、一つの考え方や価値観が教育現場に押しつけられるのではないか、そういった危機感が教育関係者の中に広がっています。
教科書の採択を巡っては、もう一つ大きな動きがありました。
道徳の教科書が初めて作られ、全国でその採択に注目が集まったのです。
ポイントとなったのは、採択の透明性と公正さの確保です。
というのも、去年、全国で教科書の採択を巡る不正が相次ぎました。
複数の教科書会社が、教員や学校長などに対して、国の検定途中の教科書を閲覧させたり、金品の授受をしていたりした事実が相次いで発覚したんです。
事態を重く見た文部科学省は、現場に対して、採択に至る理由や議事録などを遅滞なく公表することを現場に通知しました。
道徳教科書の採択の現場で、どのような動きがあったんでしょうか、取材しました。
先月、沖縄県那覇市で教科書の採択の在り方を巡って記者会見が開かれました。
現場の教員らで作る組合が採択が非公開で行われそのプロセスが見えないと訴えたのです。
那覇地区の教科書採択の仕組みです。
研究員に任命された現場の教員などが検定を通った複数の教科書を比べて見解をまとめます。
その見解などをもとに選定委員がどの教科書を選ぶか決定します。
しかし、選定中は議論は非公開。
現場の声が採択にどう生かされたのか明らかにされていません。
また組合は、採択されたとされる教科書にも問題があると主張。
複数の現役政治家の写真が使われ政治的中立性に疑問があること。
国旗、国歌の記載が多いことなどを理由に挙げました。
特に国旗、国歌の扱いについては戦争中、国の掛け声の下多くの住民が犠牲になった歴史的背景から敏感にならざるをえないといいます。
一方、教育委員会は教科書は国の検定に合格しており内容に問題はないとしています。
ではなぜ、選定中は採択のプロセスを非公開としたのか。
実は沖縄では6年前に教科書の採択を巡り選定委員のもとに脅迫めいた電話や手紙が届き大きな社会問題となりました。
文部科学省も、通知を通じて全国の教育委員会に対し静ひつな環境で議論を行うべきとしています。
そのため那覇地区の教育委員会は議事録などを後日公表するとしており教職員の組合との溝は埋まっていません。
一方で採択に至るプロセスを可能なかぎり公開した自治体もあります。
大阪市です。
8月上旬、道徳の教科書の選定が決まる会議には当初の見込みを超える70人以上が詰めかけました。
大阪市は希望するすべての市民が傍聴できるよう急きょ、席を増やして対応しました。
こうした取り組みの背景には教科書採択の公平性を巡り疑惑が持たれた過去がありました。
去年、大阪では学校長らが教科書会社から現金を受け取っていた問題が発覚。
45人が処分されました。
また2年前には市民へのアンケートで7割の支持を集めていた教科書が採択されましたが後に、民間企業が動員をかけていたことが明らかになったのです。
教育委員会は採択の結果には影響しなかったとしているもののその透明性に、市民から大きな批判が寄せられました。
今回、小学校道徳の教科書採択におきまして…。
こうした反省を踏まえ市民の注目が集まった今回の採択。
傍聴した市民に配られた資料も改善。
教員など現場の声が採択にどのように反映されたのか分かりやすくしました。
市民の目の前で議論が行われ初めての道徳の教科書が決まりました。
教科書の採択を巡る透明性の確保はどの程度進んでいるんでしょうか。
2年前のデータで見ていきますと、教育委員会で採択の結果を公表しているのが6割、採択の理由を公表しているのは4割、議事録を公表しているのは3割強にとどまっています。
西川さん、今のは2年前のデータですけれども、那覇市の例を見ても、まだ議論が開かれていないということはありそうですね。
これ、やはりですね、意見の異なる人たちの間での激しい対立、そういった状況を採択の場に持ち込みたくないという意識が、教育委員会側にあるんだというふうに思いますね。
特に沖縄なんですけれども、太平洋戦争で唯一、住民を巻き込んだ地上戦が行われた、あるいは戦後のアメリカ軍統治の状態が長く続いたといったようなことがありまして、2007年には、高校の歴史教科書で、沖縄戦での住民の集団自決の記述が削除、修正されたとして、大規模な集会が開かれるなど、教科書の記述に、特に敏感なんですね。
こうした経緯が教育委員会の議論を、閉鎖的にしているという部分もあるというふうに思います。
浪本さん、そして大阪の議論をご覧いただきましたけれども、教科書採択の議論をオープンにしていくということの意味、どういうふうにお考えですか?
これはできるだけ多くの人、大勢の人が教科書採択について、関心を持っていくということ、それにつながっていくと思いますね。
それが大切なことだと思います。
教師にとっては、毎日使っている教材ですから、先生ももっともっと採択に関心を持っていただきたいというふうに思います。
議論を通して、先生方が納得して教科書を使えるという状況になると、これはいいですよね。
そういうふうになれば、好ましいことだと思います。
西川さん、この教科書採択のあるべき姿、これからどうなっていくのか、どういうふうに目指していけばいいんでしょうか?
多様な関心を持っていくということは、つまり多様な意見を尊重し合うということにつながるわけですよね。
このことはですね、実はグローバル人材の育成を目指す今の教育が、まさに目指している、求めていることなんですね。
教育委員会制度そのものが、多様な市民の意見を反映させるという制度だったわけなんですけれども、これ、徐々に市民の関心が薄れていきまして、そうしたことが、閉鎖的になっていったというふうにつながっていったという事情もあるわけなんですね。
そうした経緯を今、再度、踏まえてですね、私たち自身が教育にもっと関心を持っていく、そういったことが重要なんだというふうに思います。
浪本さん、私たちは教科書はどういうふうに選ばれてるのかということ自体も、私も正直、あまり知らなかったんですけれども、これやっぱり、関心持っていくということ、大事ですね。
できるだけ大勢の方が関心を持って、そういう中で、教科書を選んでいくということが重要だと思います。
(ひとみ)あれ?おばちゃんは?
(洋子)ああお母さん?お母さんは中にいるよ。
2017/09/06(水) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「揺れる“教科書採択”〜教育現場で何が?〜」[字]

▽教科書採択に“異議あり”▽歴史教科書めぐり抗議ハガキがエリート校に殺到▽圧力か?啓もうか?▽道徳教科書は“密室で決定”?▽最前線の取材から見えてきたのは…

詳細情報
番組内容
【ゲスト】立正大学名誉教授…浪本勝年,NHK解説委員…西川龍一,【キャスター】武田真一,田中泉
出演者
【ゲスト】立正大学名誉教授…浪本勝年,NHK解説委員…西川龍一,【キャスター】武田真一,田中泉

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 定時・総合

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