【フランクフルト=石川潤】欧州中央銀行(ECB)は7日、当面の金融政策の運営方針を決める理事会を開き、来年1月以降の緩和縮小に向けた議論を始めた。ドラギ総裁は記者会見で政策変更について「おそらく10月に決定する」と発言。超低金利政策は維持したまま、量的緩和政策の縮小に着手する方針だ。
7日の理事会では金融政策の現状維持を決めた。ドラギ総裁は記者会見でユーロ相場が「不確実性のもとになっている」とも指摘。ECBの緩和縮小観測を背景に進んでいるユーロ高を強くけん制した。中央銀行の総裁が為替相場に言及するのは極めて異例だ。
ECBの金融緩和策は(1)マイナス金利などの超低金利政策(2)量的緩和政策(3)金融緩和を相当の期間続けるという約束――の3つの柱がある。超低金利政策は当面続ける方針だが、量的緩和政策は来年1月以降、段階的に縮小していく。
今年12月末までは月600億ユーロ(約7.8兆円)ペースで国債などの資産を買い入れていくことが決まっており、来年以降、どれだけのペースで買い入れ額を減らしていくかが焦点だ。7日の理事会では金額や期間の異なる複数案について「予備的な議論」(ドラギ総裁)が行われた。
緩和縮小を検討するのは「景気回復がしっかり幅広く」(同)進んでいるためだ。経済成長率は17四半期連続のプラスで、失業率もじりじりと下がってきた。物価上昇率は目標とする「2%近く」になお達していないが、デフレに落ち込むリスクは消え去ったとECBはみている。
量的緩和政策が長引くにつれて、最近ではドイツなどの国債を市場から買い取りにくくなっている。これ以上、ECBが国債購入を買い進めて金利を押し下げれば、各国の財政規律を緩めてしまうとの懸念も根強い。
問題は「景気回復がまだより強い物価上昇に結びついていない」(ドラギ総裁)ことだ。ユーロ圏の8月の物価上昇率は1.5%で、エネルギーなどを除いたコア指数でみると1.2%にとどまっている。企業の賃上げがなかなか広がらず、景気が回復しても物価が上がらないという難しい状況にはまりこんでいる。
緩和縮小観測を背景にしたユーロ高もECBを悩ませている。ユーロ高が進めば、輸入物価の下落を通じて物価がさらに上がりにくくなる。ECBは7日、物価見通しについて18年を1.2%、19年を1.5%に小幅下方修正した。
このため、ドラギ総裁は「相当の金融緩和が依然として必要」とも語った。ECBは10月に緩和縮小を決めるが、縮小のペースはごく緩やかになるとの見方がある。量的緩和政策を段階的に縮小しても超低金利政策は粘り強く続けるため、金融が緩和された状況は当面続くとの認識を強調するとみられる。景気や物価が変調を来せば、緩和拡大に動くとの柔軟な姿勢も保つ可能性が高い。