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一応、確認させていただきますね!

「週刊実話とフモフモコラムは同じくらいの正しさ」という肌感覚をお持ちのみなさんこんにちは。僕はいつものように有名サッカー情報サイトを眺めていました。すると、そこには「本田圭佑の守備がチームを壊す。“自分勝手”なポジショニングで全体に大きなズレ」という手厳しいタイトルの記事が載っていました。

「きっとそうなんだろうなぁ」と思いつつ、死んだ母親が「もしかしたら週刊実話かも?」と耳元でささやくもので、胸騒ぎがしてしまいました。それはもう「玄関のカギをかけなかったかもしれない」くらいの胸騒ぎで、結局玄関に戻るとカギはかかっているというアレです。まぁ、それでも確認しないよりはスッキリするだろうと、一応、念の為、ビデオを見直すことにしたのです。

↓きっと、すごい自分勝手なポジショニングをしているんでしょうなぁ!
<本田圭佑の守備がチームを壊す。“自分勝手”なポジショニングで全体に大きなズレ>

一方、守備面ではある意味で大きな存在感を発揮していた。本田は守備時のポジショニングが悪く、自分で守らなければならないエリアを放棄してチームから逸脱して動いてしまう。対面している選手が高い位置を取ろうとすると、マークを他の選手に受け渡すことなく最終ライン付近までついていってしまった。

すると本田が埋めるはずだったエリアで、相手選手に完全フリーでのプレーを許してしまう。そこをカバーするのは右インサイドハーフとしてプレーした柴崎岳だった。そこからズレが少しずつチーム全体に波及し、本来マークできるはずの選手につききれず、中盤でのプレッシャーが甘くなって大きなピンチを招いたこともあった。



ダメだなぁ!そんなことじゃ!

週刊実話を丸めてひっぱたきにいくしかない!

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ということで、僕は改めて試合を見始めました。すると早速アヤしい場面が。前半4分00秒、サウジアラビアはGKまでボールを戻し、DFラインからの組み立てを開始します。岡崎がDFラインとダブルボランチの間でボランチへの球出しを牽制しつつ、ダブルボランチには井手口と柴崎がにらみをきかせます。両サイドに張ったSBには原口と本田△がそれぞれつく形。

サウジは右サイドのボランチにボールを預けると、それに合わせてサイドハーフが2枚とも下りてきて、パスをもらおうとします。それぞれ狙っている位置は原口と井手口の間、柴崎と本田△の間です。ここで日本がプレッシャーをかけます。井手口がボールを受けた右サイドハーフのアルシェハリへ、柴崎は右ボランチのオタイフをにらみつつ、次の展開を狙うであろう逆サイドのボランチ・アルファラジへ詰めます。

しかし、詰め切るほどにはプレスをかけずにいると、アルファラジは少し距離を取ってから左サイドハーフのアルアビドに預けます。この時点で、サウジの攻撃陣はまず1トップのアルサハラウィが日本のCBの間にいます。2列目中央のアルジャッサムが左サイド寄りのバイタルエリアにいますが、ここには山口蛍が密着。そして左SBのアルハルビが浮いていますが、酒井宏の視界のなか。柴崎がアルファラジを追うのをあきらめて左サイドハーフ・アルアビドのほうに向き直すと、サウジはアルファラジ⇒アルアビド⇒左CBのハウサウィとつないできます。

<ここからアルシェハリ⇒アルファラジ⇒アルアビド⇒ハウサウィとジグザグにつながる>
01


柴崎が逆サイドから戻ってきたのを受けて、本田△はアルアビドを離してハウサウィにプレッシャーをかけにいきます。すると、何故か柴崎も一緒にプレッシャーをかけにいき、相手のCBに2人がついていくような形となります。これで先ほどまで本田△と柴崎で挟み込んでいたアルアビドはフリーとなります。ハウサウィはもともとフリーだったアルハルビにパス。ここは先ほどからずっと見ていた酒井宏が当たりにいきますが、内側にアルアビドがフリーであまっています。また、酒井宏が上がったスペースにアルジャッサムが入り込んでおり、これを追って山口蛍もDFラインまで下がっています。

<ここで2枚当たりにいったら無駄では?どちらかが残るべきでは?残るならあとから動いた柴崎では?>
02

<アルアビドが完全にフリーで前を向いて広大なスペースへ突進>

03


アルアビドは余裕で前を向いてドリブル。するとここで山口蛍がアルジャッサムを離して当たりに行きます。この時点で日本のDFは昌子・吉田・長友の3枚。サウジは左サイドに張ったアルジャッサム、DFラインの前でフリーになっているアルシェハリとアルサハラウィの3枚。数的同数の状況を作られています。それでも山口蛍の出足はかなり鋭く、一気にスペースを埋めると相手に無理目のパスを出させます。パスはアルジャッサムとアルシェハリの2人に気を配りながら背走する昌子の裏に転がり、ここにアルシェハリが突っ込んできます。

なんと、この無理目のパスが昌子のアルジャッサムを見ながらの反転という出遅れと、吉田の足の遅さによって、後ろからスタートしたはずのアルシェハリに抜き去られて通ってしまいます。吉田はスピードで追い抜かれたばかりか、相手の切り返しにスコンとやられてしまっています。このときサウジの1トップ・アルサハラウィはアルシェハリからの折り返しに備えて吉田と長友の間からゴール前をうかがいますが、ここは切り返しが大きくなったため、昌子がカットして難を逃れました。

↓後ろは足りてると思ったので前にプレスかけにいったら、味方が一緒についてきた!



本田△:「俺が行く!」
柴崎:「俺も行く!」
酒井宏:「俺も引っ張られた!」
山口蛍:「ウーーー、ワンワン!」

先に動いてくの見えてるんだから、柴崎が止まらないと!

ふたり動いたら誰がそこ埋めるの!

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サウジはサイドハーフが内側に入ってきてフリーになり、それについてきた日本選手が空けたスペースにほかの選手が入り込んでくるという形を意識的にやっています。前半6分20秒の場面では、サイドハーフが内に絞り、それに酒井宏がついていったところを入れ替わってサイドバックが空いたスペースへ駆け上がっていきました。オフサイドにはなりましたが、素早く察知した本田△がDFラインまで戻ってヘッドでクリアしていたのはいい反応でした。

↓酒井宏が食いついたら誰か戻るしかないじゃない!


足も速くないし、守備の選手じゃないけど、戻るときは戻る!

誰かが抜けた穴を埋める気持ちはちゃんとある!


前半11分10秒の場面。サウジは左SBのアルハルビがボールを持ちます。ここに対して本田△がプレッシャーをかけにいくと、アルハルビは長いボールを前線に送ります。左サイドハーフのアルアビドは酒井宏を釣り出すように下がっており、その空いたスペースにアルジャッサムを走らせます。ここは吉田が出て行って対応する形に。日本は1トップのアルサハラウィに昌子・長友がついており、さらに山口蛍も吉田のカバーに戻ってきています。ここまでは取り立てて危険ではありません。

しかし、山口蛍が吉田のカバーリングでDFラインのギャップを埋めると、その後ろからアルシェハリが突っ込んできて、バイタルエリアで前向きフリーの状態でボールを受けます。山口蛍が見るべきエリアではありますが、カバーで戻っているのですから、誰かが戻ってこないと帳尻が合いません。11分12秒の時点でチラッとアルシェハリの様子を見ていたはずの柴崎は、より危険性の低いバックパスのほうを気にしてアルシェハリへのパスコースには入りません。結局、いい位置でボールを受けたアルシェハリにはシュートまで持っていかれます。

<アルシェハリがスペースに走っていくのを追いかけていた柴崎だが向きを変えると…>

04

↓柴崎は後ろからくる選手のほうが気になってしまい、普通にアルシェハリにボールが渡って普通にシュート撃たれた!


どっちがどっちなんだか曖昧なところを突かれたとしても、目の前のひとりをつかまえたい!

11人対11人で同数なんだからひとりずつ捕まえればフリーは生まれない!


なお、前半最大のピンチとなった19分18秒は、マークを背負った状態の山口蛍がバックパスで吉田に戻そうとしたところ、そのパスがゆるく、サウジにかっさらわれたというもの。山口蛍が相手が残っているのを見ないでパスを出しているので、さすがにこれはマズイでしょう。

また、吉田も無闇に後方に陣取っており、全体での押し上げができていないことも、このピンチをイエローをもらうところにまで広げた要因でした。抜かれればそのままGKと1対1まで持っていかれる場面でしたので、ファウルもいたしかたなし。ただ、日本一のCBだと思えば「個」で止められないものかな、とも思います。吉田だと思えば、「ま、こんなもんかな」とも思いますが。

↓前線の選手に華麗に送るラストパスかのような、山口蛍からのノールックバックパス!
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そこに吉田のモウダメダオレノノウリョクデハファウルデトメルシカナイのコンボ!

CBと相手の1対1なら普通に止められてもいいんじゃなかろうか?


前半の攻められ方のパターンがゆっくり見られるのが前半24分14秒からの場面。サウジはDFラインからボランチを経由して左サイドにボールを運んでいきます。日本は陣形を整えますが、サウジの左サイドハーフがかなり内側に絞ってきます。すると、酒井宏はそれを追って内側へ。大外にはサイドバックのアルハルビがあまっており、それを見るように本田△が酒井宏に代わって外側に開きます。

日本のCBはふたりで相手の1トップをにらみ、バイタリエリアをうかがうサウジの2選手には柴崎と山口蛍がついています。柴崎がついていたアルジャッサムにボールが渡ると、アルジャッサムはドリブルで左サイドへ流れていきます。酒井宏が戻りきれていないため、本田△はひきつづきアルジャッサムから大外のアルハルビへのパスを警戒して開いています。

ここでアルジャッサムから戻しのパスがボランチまで送られると、それに食いついて井手口が前プレス。山口もついていた選手を追ってそのまま前へ。すると中盤3人がサイドに寄せられてしまい、中央をケアする日本選手がいなくなります。中央にあまった選手は急遽長友があたりにいく素振りを見せることでピンチの芽を摘みますが、長友が動かなければゴール前中央で前を向いてボールを持たれる形でした。サイドハーフが内に入ってきたとき誰が見るのか、その受け渡しの部分がどうだったのかなという場面です。

<酒井宏が内側に持っていかれているので、本田△は大外警戒で開く>
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<柴崎、井手口、山口蛍を全員食いつかせて本田△を仕事がない状態に追い込む。これによって中央にフリーの選手が生まれる>
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いくつかの裏へのパス、苦し紛れのミドルシュート、カウンターなどは受けますが、しっかり対処していた日本。そんななか、前半最後のピンチは42分25秒からの場面。日本のビルドアップの場面で、吉田が気まぐれに山口蛍にまかせてみたところから始まります。山口蛍は相手選手の間に下りてきた本田△へパス。3人に囲まれたなかでボールを受けるという、戦術パズル本なら「イスコのハイレベルな崩しの起点」みたいな位置でのボール受けをしますが、トラップミスでボールをこぼしてしまいます。

責任問題とばかりに本田△はこぼれ球を拾った相手にタックルを仕掛けます。しかし、惜しくも間に合わず、ボールは前線につながってしまいます。この時点で4対3ないしは3対3といった状況。まだ日本の人数は不利ということではなく、相手との距離が空いているのは怖いですが十分防げるところです。

<本田が潰れたところからピンチが始まるが…>
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しかし、ここでボールを追い越して駆け上がっていくアルジャッサムに対して、酒井宏はまったく追いかけようとしません。「ちょっと遠かったし…」ということかもしれませんが。中央で受けた選手とふたりを見ることになった山口蛍は、アルジャッサムのことはある程度諦めてまず中央に詰めます。そこで弾いたこぼれ球は、フリーで駆け上がったアルジャッサムに悠々と拾われてしまいます。さらには、もっと後ろから駆け上がってきたアルハルビをも酒井宏は悠然と見送り、アルハルビとほぼ同位置からのスタートであった柴崎もそれをジョギングで見送り、アルハルビのシュートに対して最後まで追いかけつづけたのは、先ほど一度タックルで転倒した本田△でした。

↓自分が失ったところからピンチになり、タックルで潰れ、起き上がって追いかけた!


ロストしたのが悪いと言われればそうだけど、そもそもの出しどころがキツイ!

もっと空いてるところあるだろ!

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日本の右サイドからのシュートに対して「立ってピンピンしていた右SB」が棒立ちのまま詰めに行かず、「右のインサイドハーフ」も追いかけず、「さっきまで転んでいたウィング」が起き上がってダッシュで詰めに行くというのは、戦術パズル的に正しいあり方なのでしょうか。「勝っても負けてもどうでもいい試合」なので、よしんば点が入ってもアチャーくらいの話ですが、これが大本番での痛恨の失点なら「何故追わない?」という話になる場面でしょう。

誰をあげつらおうということではありませんが、危ないとなったら最後まで走っていくというのは、最低限誰にでもできることのはず。この前半を通じて見ていったとき、それをしっかりとやっていたうちのひとりが本田△でした。そもそもが攻撃を期待されている選手なので、すべての守備の動きやポジショニングが正しいということではないにせよ、最後までやるという姿勢があれば、相手のワンミス・ツーミスで防げるピンチも生まれるでしょう。

こうしてサウジアラビア戦前半を改めて見直すと、最初の記事にあった「対面している選手が高い位置を取ろうとすると、マークを他の選手に受け渡すことなく最終ライン付近までついていってしまった」は、受け渡そうにも酒井宏が内側にワンワンと引っ張られていってしまったために仕方ないことだとわかってきます。

また、「本田が埋めるはずだったエリアで、相手選手に完全フリーでのプレーを許してしまう。そこをカバーするのは右インサイドハーフとしてプレーした柴崎岳だった。そこからズレが少しずつチーム全体に波及し、本来マークできるはずの選手につききれず、中盤でのプレッシャーが甘くなって大きなピンチを招いたこともあった」は前半4分のことだと理解できましたが、これは「本田△的には柴崎に受け渡したつもりの選手が、ふたり一緒に前プレスに行ってしまったためフリーになっていた」現象と言えるでしょう。

試合を見直した印象として残るのは、「チームを壊す」とか「自分勝手」とは真逆で、ほかの選手の動きを見ながら穴を埋めようとし、ピンチには最後の最後まで走る献身的な姿でした。「守備はいいから点を取れ」「点を取らない本田△は無価値」「持ってない男ならいらない」というなら本人としても納得の責められ方でしょうが、チームを壊す守備なんて言われるのは心外でしょう。やはり死んだ母親の言うとおり「週刊実話」相当の書きっぷりだったと思いつつ、僕は本田△さんを擁護したく思います。

戦術云々・システム云々がもてはやされる昨今ですが、戦術パズルではない部分の勝負というのが大本番にはあります。パズルだけ上手くても仕方ない。その意味で、本田△さんはパズルはそんなに上手くないかもしれないけれど、パズルじゃない部分にはめっぽう強いタイプです。ココ一番にチカラを出せる。

この試合ではコンディションもパッとせず、味方の穴埋めに終始しましたが、自分の裏に「足が速くて、頭がよくて、守備の1対1に強くて、いいタイミングでボール出してくれるサイドバック」がいれば、もうちょっとチャンスも作れたでしょう。そんな選手がコンディション上げてくることを祈りつつ、逆風に耐えていってほしいもの。そういう逆風を耐えてこその選手だろうと思いますので。

↓逆風のなか、本人は「ありがとう」と叱咤激励に応えるつもり!

悪く書こうと決めた相手は、何をやっても悪く書くもの!

風が吹いていないときは頑張るしかない!

僕は風が吹いていない人を擁護し、一緒に道連れになる趣味の者です!


なお、本記事にて「死んだ母親」と書きましたが嘘です!生きてます!