〔PHOTO〕gettyimages
金融・投資・マーケット 企業・経営

バフェットに投資を教えた93歳「天才投資家」の人生術

決してマネできないことではなかった

バフェットの7歳上のパートナー

世界一有名な投資家といっていいウォーレン・バフェットは、7歳年上のチャーリー・マンガーという仕事上のパートナーと長年一緒に働いている。マンガーは、彼らが経営するバークシャーハザウェイ社の副会長であり、バフェットの投資のやり方を変えた人物だ。

この度、そのマンガーの言葉をまとめた『マンガーの投資術』(デビィッド・クラーク著、林康史監訳、石川由美子翻訳、山崎元解説、日経BP社)という本が出版された。

本の全体は、第1章「投資で成功する考え方」、第2章「企業、銀行、経済」、第3章「事業と投資に関する哲学」、第4章「人生、教育、幸福の追求についての助言」、の4つの章で構成されている。

もちろん、バフェットがどのように投資スタイルを変えたか、そして、バフェットとマンガーが企業や経済をどう見るのか、といった投資の考え方が中心になるのだが、今回は、マンガーの人生に対する考え方に絞ってご紹介したい(投資については、ぜひ本書を手に取って味読して欲しい)。

実は、マンガーは現在93歳なのだが、現役の投資家としてバフェット(86歳)と共に、これまでと変わらずに仕事をしている。近年、「人生100年時代」などと言われて、人の長寿化による長い人生をどう生きるかが話題になる。

「93歳で現役」のマンガーの人生観と処世術はたいへん興味深い。そして、確かにマンガーは、才能にも健康にも恵まれた幸運な人だったかもしれないのだが、彼の人生術は極めて合理的であり、普通の人がほぼ100%真似することのできるものなのだ。

 

良いキャリア「3つのルール」

仕事は人生の中で大きな割合を占める。良いキャリアの作り方について、マンガーは、次のように述べている。

「良いキャリアを築くためのルールが三つある。(一)自分自身が買おうと思わないものを売らないこと、(二)尊敬しない人のために働かないこと、(三)いっしょに仕事をして楽しい人とだけ働くこと」

実にすっきりとまとまった三原則であり、自分の子供にも、機会があれば就職を前にした学生にも伝えたい内容だ。

マンガーは、自分がたっぷり株式を持っている会社のために働いているので問題無いのだが、人によっては、最初の原則は、重要だが、厳密に守ることが難しい原則かも知れない。

例えば、金融関係の仕事だと、自分が決して買いたくないような投資信託を顧客に売りつけなければ成績が上がらない証券マンや銀行員が少なくないだろうし、生命保険会社の社員の多くが、顧客に売っているような保険に自分では加入していないことが知られている。彼らは、元々、幸せになりにくい職種を選んでしまったのかも知れない。

さりとて、自分を騙すために、手数料の高いダメ商品を自分で買っても仕方が無いし、自分の職業がますます嫌になるだけだろう。

この点について、筆者がアドバイスできるとすれば、相対的にマシな職業人になることによって「最後の○○マン」になることを目指すことだ。

例えば、投資信託のような金融商品は、売り手側に利潤がなければ供給されないだろうし、それは顧客に取っても不便なことだ。しかし、一方で、手数料は、顧客にとって確実にマイナスになる要素だ。

こうした場合、手数料のより安い良心的な商品を売ることによって、手数料が高い劣悪な商品を売っているライバルを駆逐し、証券界であれば、自分が「最後の証券マン」になることを目指せばいい。

上記は、かつて金融系の某社の内定を取った学生が、筆者(当時、先生をしていた)に、「僕は、本当にこの仕事でいいのでしょうか」と相談に来たときに答えた内容だ。「相対的にいい人」であるためには覚悟がいるし、もちろん、自分の価値観によっては、別の仕事を選んだ方がいい場合がある。