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健食の"健康被害問題"が浮上 「プエラリア」の危害急増 販売中止、表示改善相次ぐ

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健康食品の"健康被害問題"が注目されつつある。バストアップなど美容関連のイメージで訴求されてきた健食素材「プエラリア・ミリフィカ」(以下、プエラリア)の危害情報がここ数年で急増していることが明らかになったためだ。情報の発信源は、国民生活センター。今年7月に「プエラリア」による危害情報を公表して以降、行政や消費者団体など各方面に問題が波及。事業者に安全性の確保や品質管理の徹底を求める事態に発展しているためだ。「プエラリア」を契機にした"健康被害問題"は健食全体の問題にまで発展する可能性もある。


国センの商品テストが発端

 問題の発端は、国民生活センター(以下、国セン)が行った商品テストだ。

 今年7月の国センの発表では、全国の消費生活センターに寄せられた消費者相談を蓄積する「PIO―NET(パイオネット)」に寄せられたプエラリアに関する危害情報が2012年度以降、5年間で209件。12年、13年は1~2件で推移していたものが、15年以降90件超と急速に増加していることが分かった。危害の内容も月経不順や不正出血などプエラリアに含まれ、女性ホルモンに似た作用を示す特有成分の影響が疑われるものだった。

 そもそもプエラリアは、バストアップなど美容を目的にした健食に配合されている。ただ、女性ホルモンに似た作用を示す特有成分の作用が強いため、妊娠中や授乳中、小児の摂取、女性ホルモン関連の医薬品の服用者の利用を避けるべきであると注意喚起されてきたいわくつきの素材でもある。

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 こうした状況を受け、国センは12社の12商品のテストを実施。商品間で成分量にばらつきがみられ、継続摂取により身体に影響を及ぼす可能性のある量が含まれる商品も確認された。

 また、広告も景品表示法や健康増進法、薬機法(旧薬事法)に抵触するおそれのある表示が確認されたほか、"妊娠中、授乳中の方の利用は避けるべき"といったプエラリアを扱う際に求められるべき特有の注意表示がみられない商品もあったことが分かった。

 国センでは、厚生労働省にプエラリアによる健康被害防止に向けた取り組みを要望。消費者庁、厚労省に違法の疑いがある広告の調査、事業者への指導を求めた。

厚労省、安全管理の対応で通知 

 まず、動いたのは厚労省だ。

 国センの公表を受け、プエラリアを製造・販売する79事業者の68商品を対象に「原材料の安全性確認」や「製造管理」に関する調査を実施。結果を踏まえ、9月4日には省内の調査会でプエラリアを扱う事業者に一定の対応を求める「通知」を出す方針を決定した。

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 通知は、厚労省が05年に公表した原材料の安全性確認に関するガイドラインや、サプリメントの製造管理に関するガイドラインの順守を求めるもの。業界で運用されている「健康食品GMP」の活用や原材料の「安全性自主点検」への対応、配合量や1日摂取量も安全性が確保されている量であることの確認が求められるとみられる(=表㊦)。

 消費者への情報提供も求める。妊娠中や授乳中の消費者は利用を避けること、不正出血や生理不順といった健康被害の発生があることについての情報提供を行うといった注意事項を検討している。

 これら取り組みはあくまで「任意」。ただ、厚労省は「安全性を確保できない事業者は販売を中止するよう指導を徹底していく」としており、強い姿勢で臨む。

あいまいな対応に当惑も   

 「消費者庁から調査を受け、表示の根拠資料の提出と求められている段階。結果によっては表示の見直しを検討している」。国センから表示の問題点を指摘されたある事業者はこう話す。消費者庁は「(調査の過程は)公表していない」としているが、「不当表示」の面からも調査は進んでいる可能性がある。

 厳格な運用が必要な"やっかい"な素材であるためかコンプライアンスを念頭に置いた自粛か、早くも販売から手を引く企業もある。国センの商品テストの対象となったFORDELソリューションズは厚労省の方針発表を待たず7月7日に販売を中止。同じくメディアハーツも販売を中止した。

 国センの指摘を受け、表示の見直しで対応する事業者もいる。

 オリヒロは「若返りや長寿食」といった伝承のある素材としてプエラリアを紹介していたが、薬機法に抵触するおそれがあるとの指摘を受けて修正。オーガランドもウェブサイトや広告表現、商品パッケージを変更、ナチュラルプランツも「女性ホルモンに影響するイソフラボンが含まれています」といった表示を削除した。

 ただ、プエラリアの危害情報の因果関係の検証など十分に行われていない中、「任意」で対応を求める厚労省に対する不満を口にする事業者もいる。

 これまで60万個を販売したある事業者は、「これまで(消費者から)健康被害の報告は1件もない。プエラリアの販売は落ち込みつつあり、リスクがある商品かのような公表のされかたは問題」とコメント。別の事業者は「因果関係が不明な点もある。厚労省は方針を明確に出してほしい」と話す。プエラリアの安全性評価などさらなる対応を求めるが、食品安全委員会は「上限値を定めるなど現時点で検討を行うことはない」、厚労省も「健康被害や科学的根拠の収集が進めば食薬区分の見直しを検討することもありうるが、現時点では通知の中でGMP順守や安全性確保に向けた詳細な取り組みを求める」と話すにとどめる。

消費者団体が55社に公開質問

 ただ、問題は消費者団体にも飛び火している。8月29日、食の安全・監視市民委員会(=FSCW)が健食を扱う主要55社に健康食品に関する損害賠償保険の加入の有無に関する公開質問状の送付を始めたためだ。

 「消費者は自分が健食で被害をこうむった場合に治療費など損害賠償を受けられるかが不安」として公的な被害救済制度がない健食を問題視。プエラリアの問題を機に、健食の健康被害問題に焦点を当てようとしている。

 プエラリアとは事情が異なるものの、過去には、大豆イソフラボンやコエンザイムQ10をめぐり、安全面の課題が指摘、検討されたことがある。ただ、ここ数年、健食の安全性をめぐって大きな問題は起こっていなかった。プエラリアの危害急増を機に、健食の健康被害問題が改めてクローズアップされるかもしれない。

健康被害巡る動向は?

バストアップなど美容イメージで扱われてきた健康食品素材プエラリア・ミリフィカ(以下、プエラリア)は、強い女性ホルモン用作用があることが指摘され、これまでもその安全性が疑われる素材でもあった。新興の通販企業を中心ににわかに脚光を集めたことで取扱いが増加。これに比例して危害情報も急増した。ただ、そうした"いわくつき"の素材でもあるため、通常の健食の「健康被害」とは異なる対応が必要だろう。

 ここ最近、国民生活センターは、健食による健康被害に対する関心を強めている。今年7月、プエラリアの危害情報を発表して以降、8月には健食による薬物性肝障害の事例を公表した。

 薬物性肝障害の事例は医師からの事故情報受付窓口「ドクターメール箱」に寄せられたもの。た
だ、今年7月までの約3年間で健食による薬物性肝障害と診断されたのは9件だった。

 トクホの粉末青汁が原因と疑われる事例、複数の健食を摂取したり医薬品と健食を併用していたケースがあった。

 ただ、中には10年以上、健食を摂取。ある日感じた腹部の不快感から発症が確認され、健食1種と風邪薬が原因と診断されたものもある。

 国センは、因果関係の検証に「そこまではしていない」と回答。「(健食が原因)らしい、という表現が一番近いかもしれない」ともコメントした。寄せられた情報の客観的な検証を行わず、医師の"診断"を鵜呑みにしたわけだ。

 プエラリアは、15年以降、毎年90件超の危害情報が寄せられていた。過去5年間で計209件の相談が寄せられた事実も重い。販売企業の増加もあるだろうが、危害情報がほかの健食に比べ突出して多いのであれば因果関係を疑うに値する。本当に問題がある素材なのか、検討が必要だろう。

 ただ、今回の問題はプエラリア特有の成分による特異的な問題といえる。健食全体の健康被害問題とは一線を画して検討する必要があるだろう。

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