VAIO、3代目プロ社長「小規模だから勝てる」

売上高はかつての20分の1、でもそれがいい

VAIO3代目社長の吉田氏は自作パソコンが趣味。デスクトップを12台、ノートパソコンを10台以上作ったことがある(撮影:今井康一)

「吉田VAIO」がいよいよ動き出した。

8月8日に中国への再上陸を果たしたほか、パソコン、EMS(電子機器の受託生産サービス)に次ぐ第3の事業柱と位置づけるVR(仮想現実)関連事業の立ち上げにも着手。ソニーから独立して3年強。3代目に当たる吉田秀俊社長は国内外で攻勢に打って出る。

VAIOといえばソニーのパソコンブランドとして有名だったが、パソコン事業やソニー全体の業績不振を受けて2014年7月にグループ外へ放出された。現在はVAIO社の9割強の株式を再生ファンドの日本産業パートナーズが保有する。ソニーも株を若干保有するものの、VAIOの経営には口を出していない。

VAIOにはAIBOの量産実績があった

再出発時こそソニー出身の関取高行氏が社長を務めたが、2015年5月期に営業黒字化を果たせず、同年6月に筆頭株主の日本産業パートナーズが大田義実氏を2代目社長として送り込んだ。

総合商社・双日出身の大田氏はサンテレホンやミヤコ化学の社長を経験した「プロ経営者」である。大田氏が主力の長野県・安曇野工場に乗り込んで目を丸くしたのは、電波の干渉を精密に計測する施設など、ソニーから引き継いだ固定資産の高い価値。そこで「EMSを始める」と社内外に宣言すると、ロボットベンチャーからの発注が殺到したという。

量産化をにらんだロボットの開発受託を行えるのは、AIBO(人工知能を搭載し4足歩行するソニー製ロボット)で量産実績のあるVAIOだけ。そのことを顧客が熟知していたからだった。

VAIOの経営を軌道に乗せた、2代目社長の大田氏。吉田現社長を招聘したのも大田氏だ(撮影:尾形文繁)

大田氏は就任1年目の2016年5月期に売上高198億円、営業利益1.8億円と黒字化を果たすと、同2年目の2017年5月期には前年同期比3.2倍となる営業利益6億円弱を達成。売上高営業利益率も1%台から3%台に改善した。リストラが一巡し、黒字定着を確認、さらに成長軌道に乗せるために吉田氏を社長に招聘したのだ。

「人を減らさなければならない中で、売上高を増やした。外科的手術を行いながらの黒字化を達成、大幅増益を成し遂げた大田時代は本当に立派だ」と吉田社長は先代を褒めちぎる。

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  • NO NAME40d7f9e4adc5
    地元近くなので応援したいところですが、昔より活気がなく、心配になる所です。
    似たようなパソコンが多い中、VAIOらしいパソコンで巻き返して欲しいです。
    個人的に超小型の機種が出て欲しい。
    up5
    down0
    2017/9/7 08:22
  • NO NAME50a586bcb41c
    VAIOのノートパソコンは、海外ドラマでも普通に目にするぐらい、高い知名度と根強いファンが多く
    あそこまでブランドを育てたのに、本当に勿体ないと思っていたのですが、別会社での復活で期待をしていただけに
    VAIOフォンの失速はとても残念でした
    二流メーカーの中身に、側だけVAIOのブランド
    周りの期待が高すぎた事もありますが、革新的でも斬新でもなく
    あれで一気にユーザーが離れていった感じ
    次はないので、じっくりと時間を掛け、ブランドを育てていって欲しいです
    そういえば、AIWAも復活した事だし
    お互い刺激を受けながら頑張って貰いたいですね
    応援しています
    up1
    down0
    2017/9/7 16:49
  • NO NAME97b209766292
    はやくZとS11を

    VAIOフォンはVAIOとデザイン志向が違いすぎてちょっとダメです
    up1
    down0
    2017/9/7 08:44
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