私には歳の離れた兄がいます。今回は、その兄を兄として思えなくなった瞬間の話を書こうと思います。
私は昔から口数が少なく、兄と兄弟らしい会話をほとんどしておりませんでした。
兄と会話することも遊ぶことも無かった私には、兄弟としての愛情をまったく知ることもなく育った記憶があります。
ですが、やはり家族である意識は少なからず持っており、兄であるとは認識はしておりました。
(ちなみに記事を書こうと思って兄とのエピソード思い出そうとしましたが、なかなか思い浮かばず、書くのに相当時間がかかっております。)
10年以上も遡った話になります。
当時の私は中学生で、兄との関係は変わらずといった感じでした。
私はお爺ちゃんっ子で、学校の夏休みや冬休みは長期で祖父の家に遊びにいってました。出かける前日はワクワクして眠れません。
祖父はとても器の大きな人間であり、曲がった事が大嫌いなまっすぐな人で周りからも慕われておりました。そんな男らしい祖父に会えるのがとても楽しみだったんです。
とても大好きだった祖父ですが、やはり高齢というのもあってか病院に入退院をくり返すようになってきました。
そんなある日、兄と一緒に両親に呼ばれ、祖父がもう長くないという話をされました。
私は人の命や生死についてうまく意識できずに、実感が沸くのには相当時間がかかりました。兄にとってもショックな話だと思っていましたが、全く動じていない兄の姿に少し疑問を感じた記憶があります。
人の命はいずれ終わりを迎えるもので、残念ながらもその日は来てしまうんです。
その日は学校でいつも通り授業を受けておりました。
親から学校に連絡があり、祖父が危篤ということから早く帰宅しろとの事です。
慌てて家に帰り、支度をして父親の運転で祖父の家に向かいました。
いつもはワクワクしていた祖父の家への道のりでしたが、その日は焦りしか感じない道のりでした。
いざ病院に着いてからはすぐでした。
祖父との別れとなった後、両親は手続きがあるといってしばらく慌ただしくし、私たち兄弟は待合室で待ってるようにとの言われます。
その待合室での出来事が、私が兄を兄と思えなくなった原因となります。
待合室で待っていると無意識のうちに祖父との思い出が頭に過ぎり、人前だというのに私は涙を止めることがなかった私に、兄は冷めたような目で
「あんな人が死んだくらいで泣きわめくな。気持ち悪い。」
と言い放ちました。
今でも一言一句違わず記憶しているぐらいの衝撃の言葉を聞いた私は、気がつくと兄に殴りかかっていました。殴った時の感触も忘れられません。
大好きだった祖父を、尊敬する祖父を蔑む兄をそれ以来、兄と思う事はありませんでした。
あの時、兄が何を感じ何を思ったのかは今になっても知る事はないですが、あの時の兄の目には、祖父の死に何も感じていなかったように思います。
祖父の死から四十九日が過ぎ、私の家もだいぶ落ち着いてきてから、私は自然に兄と距離を取るようになり、ただでさえ少なかった会話も全くない状態を現在まで10年近く続けております。
互いに嫌悪するといった事はないのですが、
"家族としての形をとってはいるものの、他人という無関心な関係"
といった不思議な壁があります。
多少なりとも大人になった私ですが、あの時の兄の言葉は未だに理解することができません。
現在、訳あって12畳の部屋に兄と同室で生活しております。
未だに兄と私の間の不思議な壁は存在しており、12畳という広い部屋には会話は生まれてくる事はありません。
まとまった終わりかたを考えてみましたが、うまくまとめられませんでした。
来年に兄が結婚を予定しており、兄が家族を持って新しい命を育てていくという事に違和感を持ちました。
その違和感を拭う為にも書いてみましたが、気持ちの整理はできないままです。
おそらく私と兄の関係が変わる事はないでしょう。