gloria_今回は、ジャパニーズの古酒、三楽オーシャンのグロリアオーシャン シップボトルを飲んでみます。

オーシャンウイスキーとは、オーシャン(大黒葡萄酒)が手がけていたウイスキーのブランドです。
1961年に、日本酒などの製造をしていた三楽酒造(現:メルシャン)が買収し、同社のウイスキーブランドとなりました(社名は三楽オーシャン→三楽→メルシャンと変遷)。

今でこそ日本のウイスキーメーカーとしてサントリー、ニッカ、キリンが台頭していますが、1970年代まではニッカをしのぐほどのシェアを手にしていたといわれています。

製造は、モルトが軽井沢、グレーンが神奈川県の川崎に蒸溜所がありました。
特に軽井沢蒸溜所では、小規模ながらもマッカラン同様にゴールデンプロミス種の麦芽のみを使い、シェリー樽原酒で熟成するというこだわりを持った蒸溜所でした。

しかし1980年以降はウイスキーの販売が低迷し、2000年で軽井沢蒸溜所での製造が停止、2003年に川崎工場が閉鎖、2010年にキリンの子会社となった後、2012年に軽井沢の蒸溜所も閉鎖されました。

現在は、キリンの御殿場蒸溜所で作られる「オーシャン ラッキーゴールド」の名前だけが残されています。

残された原酒については、それぞれ高い評価を得ています。
軽井沢のモルトについては、現存の時代に長期熟成のシングルモルトのボトルを出していましたが、それらが海外のオークションで100万円を超える高値をつけています。

一方で川崎のグレーンは、イチローズモルトで有名なベンチャーウイスキーが原酒を確保しており、同社からシングルグレーンとしても販売されました。

残念ながら、日本のウイスキーが海外で本格的な評価を得る前に消えてしまいました。もう10年早かったら、オーシャンウイスキーの運命も大きく変わっていたでしょう。

今回飲むグロリアオーシャン シップボトルは、1970年代後半に発売されました。
「大洋」の意味を持つオーシャンにちなんで、船の形をしたボトルに入っています。後期においては、金色のボトルも発売されていました。
当時はCMも放送されていて、大人の女性が飲むイメージがメインとなっていました。
では、ストレートから飲んでみます。
グラスに注ぐと、液色は少々淡いアンバー、香りはリンゴ、接着剤のようなものがします。

口に含むと、リンゴ、レーズン、ゴム、ライム、ナシと豊かに香ります。
味わいは辛さが多少するものの、その後は酸味とビターが舌を覆います。

ロックにすると、ライムやレーズンの香りが揮発します。その後にナッツ、ナシ、青リンゴ、カカオと香りが続きます。残り香からは燻製のようなスモーキーさも感じられます。
味わいは、酸味、ビターとともに、甘みも感じられるようになります。

最後にハイボールにすると、ほのかにレーズン、ウッディ、青リンゴが香ります。
味わいは甘さが前に出て、ほんのりと酸味も感じ取れます。

発売当時は、3200円の価格で売られていましたが、物価と酒税の違いを考えると、現在の価値では2000円台半ばくらいだと推測されます。

これを書いている当時は、1980年代のスーパーニッカや1970年代のサントリーローヤルを持っていますが、正直に言えば、同世代のスーパーニッカやサントリーローヤルとも太刀打ちできるほど豊かな香りと味わいがあります。
スモーキーさはほとんどなく、シェリー樽原酒ならではのブドウを感じとれながらもスペイサイドっぽさを持った雰囲気があります。

そう感じると、なおさらキリンが軽井沢を手放したのか、首をかしげたくなります。
バーボンっぽさのある御殿場と、シェリー樽原酒が目立つ軽井沢のモルトを組み合わせることで、ほかにはないブレンドを生み出せたのではないでしょうか。
最近は御殿場のモルトもバラエティ豊かになりつつあるので、ますます残念です。

760mL、アルコール度数は43度です。
オークションや通販でも手に入れられる場合があります。

<個人的評価>

  • 香り B: リンゴ、レーズン、ゴム、ライム、ナシと香り豊か。加水でライムが開く。
  • 味わい B: 酸味、ビターが主体。加水されると甘みも出てくる。
  • 総評 B: サントリーローヤルやスーパーニッカにも太刀打ちできる優れたボトル。