少年はこんなものまで売っていた

少年はこんなものまで売っていた
なんでも売っていると評判のスマートフォンのアプリ「メルカリ」。今度は、コンピューターウイルスをダウンロードするための「情報」が売られていました。売買に関わったのは10代の少年ばかり。スマホ時代に何が起きているのか、年頃の子どもがいるあなた、必読です。
(奈良放送局記者 河合正貴)
奈良県警察本部の捜査員が、インターネット上で「ある痕跡」を見つけたのは、ことし3月でした。インターネットで利用者どうしがさまざまな品物を売買できるアプリ「メルカリ」で、コンピューターウイルスをダウンロードするためのURLが商品として出品されていたのです。

ネット上に残っていた痕跡

奈良県警察本部の捜査員が、インターネット上で「ある痕跡」を見つけたのは、ことし3月でした。インターネットで利用者どうしがさまざまな品物を売買できるアプリ「メルカリ」で、コンピューターウイルスをダウンロードするためのURLが商品として出品されていたのです。

問題のコンピューターウイルスとは

このコンピューターウイルスは、若者の間ではよく知られた「いたずらウイルス」でした。ウイルスにスマホが感染すると、画面上に無数の男性の顔のアイコンが作られてしまい、消すためにはスマホを初期化するしかありません。これ以上の害を及ぼすものではありませんが、不正なものに違いはなく、捜査が行われました。

少年たちによる犯罪

捜査関係者が驚いたのはこのURLを商品として出品していたのが、当時中学1年の男子生徒(13)だったこと。さらにウイルスをダウンロードできるURLを商品として購入していたのも京都府や兵庫県、それに長野県に住む14歳から19歳の少年4人だったことです。

見知らぬ少年どうしが…

衝撃はそれだけではありません。男子中学生と4人の少年たちの間には何のつながりもありませんでした。男子中学生はツイッターなどを使ってコンピューターウイルスの入手に関する情報を買わないかと呼びかけ、4人の少年たちが別々に男子中学生との売買を行っていました。

お互いに顔も知らない少年どうしがネット空間でつながり、保有することも提供することも違法となるウイルスのダウンロードに関する情報を売り買いしていたのです。

メルカリって何なの?

少年たちが知り合ったツイッターでは金銭の受け渡しは出来ません。

そこで使われたのがインターネット上でフリーマーケットのように物品の売買ができる「メルカリ」です。ラテン語で「商いをする」という意味の「メルカリ」。文字どおり一般の人々がスマホでアプリをダウンロードすれば、サイト内で自由に物品の売買ができるもので、売りたい物の写真をスマホで撮影してそのままネット上に投稿し、購入者を募ることが出来ます。

売り手と買い手が直接、値段の交渉も含めたやり取りをできる手軽さなどから、若者を中心に爆発的な人気を集めています。

運営会社によりますと、ことし7月末までに国内でのアプリのダウンロード数は5000万件を超え、1日当たりの出品数は多い時で100万に上るといいます。

何でも買えるメルカリ

運営会社によりますと、未成年者がメルカリを利用する際には保護者などの同意が必要とされていますが、審査などはなく、事実上、誰でも利用できるのが実態です。

今回出品された「コンピューターウイルスをダウンロードするためのURL」は、メルカリの指針から言えば出品が禁止されるものですが、メルカリをめぐっては、これまでにも不適切な出品が相次ぎ、問題となってきました。

ことし5月には、発行済みの領収書が売りに出されているのが見つかり、「使い方によっては脱税などの犯罪になりうる」といった指摘が出て、運営会社が出品禁止の措置を取っています。
また、8月の終わりごろには「読書感想文」という名前の商品も出品されていました。

どうやってウイルス情報入手?

また、男子中学生は、誰からどうやってウイルスに関する情報を入手していたのか。警察によりますと男子中学生はインターネット上で知り合った「顔も見たことのない知人」からウイルスをダウンロードできるサイトのURLを教えてもらっていたというのです。

男子中学生は、ウイルス情報を提供した人物とSNSでつながっていたということですが、警察が捜査を進めた際にその人物はすでに退会していて、所在を追うことが出来ませんでした。

危ういネット空間

警察は5日、コンピューターウイルスのダウンロードに関する情報を提供したとして、男子中学生を児童相談所に通告したほか、5日までに情報を購入していた少年ら4人を書類送検しました。

男子中学生については、児童相談所が再発防止に向けた指導を行っていくことになりますが、警察の調べに対し「悪いことだとは思ったが、小遣いほしさにやった。みんなやっていることなので大丈夫だと思っていた」と話していると言うことです。

起こるべくして起きた

スマホが若年層にも急速に広がり、インターネットへのアクセスがより簡単になる中で起きた今回の問題。
インターネット教育について詳しい奈良教育大学の伊藤剛和教授は「起きるべくして起きた」としたうえで、「インターネットの世界で手軽に情報が発信できる中、自分が行うことへの責任を持ちきちんと考えて情報を発信する教育や、未成年であっても法律で罰せられる事柄があることをきちんと学ぶ環境を作っていくことが必要だ」と指摘しています。
インターネット犯罪やネットに潜むリスクは、私たち大人だけでなくスマホに触れ始めた子どもたちのすぐそばに横たわっている。そのことを改めて感じた取材でした。
少年はこんなものまで売っていた

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なんでも売っていると評判のスマートフォンのアプリ「メルカリ」。今度は、コンピューターウイルスをダウンロードするための「情報」が売られていました。売買に関わったのは10代の少年ばかり。スマホ時代に何が起きているのか、年頃の子どもがいるあなた、必読です。
(奈良放送局記者 河合正貴)

ネット上に残っていた痕跡

奈良県警察本部の捜査員が、インターネット上で「ある痕跡」を見つけたのは、ことし3月でした。インターネットで利用者どうしがさまざまな品物を売買できるアプリ「メルカリ」で、コンピューターウイルスをダウンロードするためのURLが商品として出品されていたのです。

問題のコンピューターウイルスとは

問題のコンピューターウイルスとは
このコンピューターウイルスは、若者の間ではよく知られた「いたずらウイルス」でした。ウイルスにスマホが感染すると、画面上に無数の男性の顔のアイコンが作られてしまい、消すためにはスマホを初期化するしかありません。これ以上の害を及ぼすものではありませんが、不正なものに違いはなく、捜査が行われました。

少年たちによる犯罪

少年たちによる犯罪
捜査関係者が驚いたのはこのURLを商品として出品していたのが、当時中学1年の男子生徒(13)だったこと。さらにウイルスをダウンロードできるURLを商品として購入していたのも京都府や兵庫県、それに長野県に住む14歳から19歳の少年4人だったことです。

見知らぬ少年どうしが…

衝撃はそれだけではありません。男子中学生と4人の少年たちの間には何のつながりもありませんでした。男子中学生はツイッターなどを使ってコンピューターウイルスの入手に関する情報を買わないかと呼びかけ、4人の少年たちが別々に男子中学生との売買を行っていました。

お互いに顔も知らない少年どうしがネット空間でつながり、保有することも提供することも違法となるウイルスのダウンロードに関する情報を売り買いしていたのです。

メルカリって何なの?

メルカリって何なの?
少年たちが知り合ったツイッターでは金銭の受け渡しは出来ません。

そこで使われたのがインターネット上でフリーマーケットのように物品の売買ができる「メルカリ」です。ラテン語で「商いをする」という意味の「メルカリ」。文字どおり一般の人々がスマホでアプリをダウンロードすれば、サイト内で自由に物品の売買ができるもので、売りたい物の写真をスマホで撮影してそのままネット上に投稿し、購入者を募ることが出来ます。

売り手と買い手が直接、値段の交渉も含めたやり取りをできる手軽さなどから、若者を中心に爆発的な人気を集めています。

運営会社によりますと、ことし7月末までに国内でのアプリのダウンロード数は5000万件を超え、1日当たりの出品数は多い時で100万に上るといいます。

何でも買えるメルカリ

何でも買えるメルカリ
運営会社によりますと、未成年者がメルカリを利用する際には保護者などの同意が必要とされていますが、審査などはなく、事実上、誰でも利用できるのが実態です。

今回出品された「コンピューターウイルスをダウンロードするためのURL」は、メルカリの指針から言えば出品が禁止されるものですが、メルカリをめぐっては、これまでにも不適切な出品が相次ぎ、問題となってきました。

ことし5月には、発行済みの領収書が売りに出されているのが見つかり、「使い方によっては脱税などの犯罪になりうる」といった指摘が出て、運営会社が出品禁止の措置を取っています。
また、8月の終わりごろには「読書感想文」という名前の商品も出品されていました。

どうやってウイルス情報入手?

また、男子中学生は、誰からどうやってウイルスに関する情報を入手していたのか。警察によりますと男子中学生はインターネット上で知り合った「顔も見たことのない知人」からウイルスをダウンロードできるサイトのURLを教えてもらっていたというのです。

男子中学生は、ウイルス情報を提供した人物とSNSでつながっていたということですが、警察が捜査を進めた際にその人物はすでに退会していて、所在を追うことが出来ませんでした。

危ういネット空間

警察は5日、コンピューターウイルスのダウンロードに関する情報を提供したとして、男子中学生を児童相談所に通告したほか、5日までに情報を購入していた少年ら4人を書類送検しました。

男子中学生については、児童相談所が再発防止に向けた指導を行っていくことになりますが、警察の調べに対し「悪いことだとは思ったが、小遣いほしさにやった。みんなやっていることなので大丈夫だと思っていた」と話していると言うことです。

起こるべくして起きた

スマホが若年層にも急速に広がり、インターネットへのアクセスがより簡単になる中で起きた今回の問題。
インターネット教育について詳しい奈良教育大学の伊藤剛和教授は「起きるべくして起きた」としたうえで、「インターネットの世界で手軽に情報が発信できる中、自分が行うことへの責任を持ちきちんと考えて情報を発信する教育や、未成年であっても法律で罰せられる事柄があることをきちんと学ぶ環境を作っていくことが必要だ」と指摘しています。
インターネット犯罪やネットに潜むリスクは、私たち大人だけでなくスマホに触れ始めた子どもたちのすぐそばに横たわっている。そのことを改めて感じた取材でした。