中国の科学者は海水の中でもつれた粒子間の情報送信に成功した。この種の量子通信としては史上初の快挙だ。
情報は海水が入った3.3メートルの水槽の中で送信された。同じ技術を用いれば、海で900メートル近い距離のハッキング不可能な通信を行えるそうだ。例えば、潜水艦同士の通信などでの応用が考えられる。
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量子テレポーテーションと量子のもつれ
量子テレポーテーションとも呼ばれる量子通信は、物理法則によって通信を傍受しようとする企てからセキュリティを保つ。それは究極の暗号である。
その基礎にあるのは、かのアインシュタインが「不気味な遠隔作用」と評した量子もつれだ。量子もつれとは、2つの粒子が表裏一体であり、一方に生じたことがその距離にかかわりなく他方に伝わる性質のことである。
この原理を応用して、すでに光ファイバーや宇宙空間における長距離間の情報の”テレポート”に成功している。今年初め、中国の研究チームが地上から500キロ上空を周回している人工衛星に情報をテレポートさせた。
水中で初となる量子テレポーテーション
しかし、これまで同じことが水中で試みられたことはなかった。水中にはビームが拡散されてしまうという難しさがあるからだ。空気中のレーザーポインターを水に向ける場面を想像してもらえばいい。
今回の実験で、上海交通大学の研究チームは黄海から海水を採取し、それを実験室内に設けられた3メートルの水槽に入れた。
次にクリスタルを通じて光のビームを照射し、もつれた光子のペアを作成。一方の光子が偏向すると、他方は必ず逆の偏向をことになる。
粒子は水槽の両端に設置され、両者の間は海水で満たされていたが、98パーセントの精度で情報の通信が行われたことが示された。
実験はまだはじまったばかり
こうした研究はまだ初期段階にある。今回の実験結果の再現性が他の専門家によって確認される必要があることは言うまでもないが、より長距離間の通信や海水で満たさなかった場合の通信が可能であるかもまだ不明なままだ。
しかし研究チームの計算からは、海においても885メートルまで量子通信が可能であると予測されている(一方、『New Scientist』のレポートでは、120メートルという計算結果もある)。
水中において量子通信が可能な距離については、今後の調査が待たれる。しかしひとまず、それが可能であることが実証された。その限界が押し上げられるのも時間の問題だ。
研究は『The Optical Society』に掲載された。
via:newscientist / sciencealertなど/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
量子テレポーテーション…なんとなく厨二心を揺さぶる単語だ
3. 匿名処理班
結局、量子ってのはなんなの?
漫画でわかる量子論とか読んでもわかんねえんだけど
分かったのは 猫かわいそうだから辞めたれや ぐらいだわ
4.
5. 匿名処理班
「量子テレポーテーションで情報の送信はできない」
と聞いたけど(私自身は完全素人)、出来る
ってこと?
6. 匿名処理班
多分すごい事なんだろうけどよく分かんなかった…。
それより使われてるイラストがキレイで、そっちの方に目がいくw
7. 匿名処理班
量子は、見えてない(観測してない)時は波
動で、見えてる(観測した)時は粒子ってこ
とですか?
見えてない(観測してない)時は、何処に粒
子があるか解らん(確率的?)!
ということじゃなく、そもそも粒子として
存在してないと…?
見えてる=氷
見えてない=水
という感じなのか?
8. 匿名処理班
量子の観測結果を伝えるために結局は2点間の間で通常通信が必要だから超光速通信は出来ない
水中でも同様に通常通信が必要なはずで、水中における通信の困難さは解決できてないように思える
9. 匿名処理班
中国スゲェな・・・
10. 匿名処理班
ニュー・サイエンティスト?ネイチャーでなく?
ニュー・サイエンス系の雑誌なのかな?だとしたらまともな科学ではないのであまり真に受けないほうがいいような。クリスタルに光を当てたら量子がもつれる?どういうこと?
11. 匿名処理班
何歳の女性なんだろ?りょうこさん凄いな。
12. 匿名処理班
そもそも、ペアの光子対を作るところで挫折。
13. 匿名処理班
みつこ生意気だな
14. 匿名処理班
いや、どう考えても無理だろw
水槽という安定した場所と海流や海面が安定しないではまったく環境が違うwww
フォトンの減少率は水中の距離とともに増加する、深海に光が少ないのはコレと同じ理由。
15. 匿名処理班
※8
観測結果を伝えてないのに伝わるから「不気味な遠隔作用」とアインシュタインは呼んでいるんですが・・・
16. 匿名処理班
中国こええ
17.
18. 匿名処理班
※10
最後の最後に「研究は『The Optical Society』に掲載された」って書いてあるよ。『The Optical Society』は学術雑誌で、『New Scientist』は一般人向けの科学雑誌のようです。
19. 匿名処理班
本当だったらすごいけど、本当だったらね
20. 匿名処理班
※15
「不気味な遠隔作用」で可能なのは、自分の側の量子の観測結果から、相手の量子の状態を推定できるというだけ。
その観測結果は自由に操作できないので、そこに情報を乗せて通信する事は出来ない。
情報は傍受可能な別の手段で送り、その暗号化に傍受不可能な観測結果を利用するのです。
21. 匿名処理班
波とかは影響しないのかな
実験だと海水は使ったけどプールに移してるし
22. 匿名処理班
傍受可能な状態で送るのは
観測結果の方じゃなかった?
観測結果と(あらかじめ安全な方法で運んでおいた)元の光子の片割れがあれば情報が復元できるってのがミソだったと思うけど
23.
24. 匿名処理班
量子分野では中国が米国に先行してるんだよな。
25. 匿名処理班
全く無意味とは言わないけれど水の中で1kmにも満たない距離間で秘匿通信してどんなメリットがあるのか?相変わらず世界一や世界初と言いたいだけなんだろうなぁ
26.