先生が忙しすぎる…!
「教員の仕事が忙しいけど、仕組みが変わらないと改善はムリ。あきらめてる」
「私は生徒のためなら労働時間なんて関係ない。なんでやる気のある教員まで制限されなきゃいけないの?」
色々な立場からのご意見がありますね。
教員の働き方改革が叫ばれている中、教育コンサルタントの妹尾さんの新刊が出版されました!
今回の記事では、
- なぜ、そんなに先生は忙しいのか?
- あきらめる前にできることはなにか?
- 私の現場では…
についてご紹介します。
なぜ、そんなに先生は忙しいのか?
小学校教員の6割、中学校教員の8割近くが過労死ラインです。
過労死ラインとは、月80時間以上の残業が数ヶ月続く場合、あるいは一ヶ月100時間ほど残業がある場合を指しています。
学校内だけではなく、自宅に持ち帰り仕事などを換算すると…月80時間以上の残業をしている教員がこれだけの数字になるということです。
過労死ラインを超えて働く人がこれほど多いのは、実は、他業種と比べても突出してて高いのです。
建設業でも過労死ラインの労働時間の人は13%、飲食業界でも28.4%、運輸業でも22%です。
多忙化が問題視されている医師について、60時間以上の労働時間の方は40%でした。
また、1日10分も休憩を取れず、
「膀胱炎は教師の職業病」
と言われています。
私の同僚でも何名か膀胱炎を患っている方がいます。
加えて、小中学校の先生は給食指導もあり、ご飯中もロクに休めません。
「勤務時間が長い」「休憩時間なし」
を当然視している学校と教育行政の姿が浮かび上がってきます。
「東京の先生になろう」という東京都教育委員会のウェブサイトにも、全く休憩がない先生の1日が紹介されています。
>>東京都公立学校教員からのメッセージ | 東京都公立学校教員採用案内「東京の先生になろう」
覚悟を決めてくださいってこと?
当たり前すぎてブラックなことに気がつかないのか?
こういった多忙化により、教員の過労死や自殺が増加しています。
本の中でも何人かの先生のケースが掲載されていました。
「新採半年後で自殺、こんな気分になるために一生懸命教師を目指したんじゃない」
周囲の教員も多忙なため、新採用の教員をサポートする時間がとても取れません。
そんな新人に対して、管理職も厳しい事しか言わないことも多いと聞きます。
このセクションは、読み進めるのがとても辛かったです。
こうした働き方は、
「ヒドゥンカリキュラム」
と言い、
「生産性はさておき、長い時間一生懸命働くことが大事!!!」
だと子どもたちに行動で伝えてしまっている可能性があります。
この状態がずっと続くと、教師が不人気職になり、採用倍率が低く教育の質が低下する可能性が挙げられています。
実際に、私の住む都市では小学校の応募倍率が2倍と、2人に1人は教員になれるという…。
また、予算がないため非正規教員も増えています。
非正規の教員は正採用された教員と違い、何も研修を受けられないまま小学校の担任を持たされたりすることがあります。
同じ仕事をしているのに、なぜ待遇や賃金に差がつくのかナゾです。
正直、
「自分の子どもに教員という職業をすすめるか?」
と言われたら全くすすめられません。
「悪いこと言わないから、教員だけは絶対に止めておけ」
と言うと思います…。
さらに、社会や家庭の育児機能の低下により、学校が福祉機関がしている現状もあります。
これは、私も現場で大変実感していることです。
虐待の可能性がある子どものケアや、生徒指導、しつけ等々…
「本当にこれは、教員がやることなのだろうか?」
と思う時がかなりあります。
あきらめる前にできることはなにか?
たくさんの要因が絡まり一筋縄ではいかない教員の多忙化対策。
では、あきらめる前にできることは無いのでしょうか。
本では、解決するための考え方や具体例が紹介されていました。
半径3メートルぐらいからできることも多いのです。
- タイムカードやICカード等の客観的なの記録を基礎に実態把握をすること。
東京都立の高校では出勤時間は打刻しても退勤時間はしなかったそうですが、ここ最近退勤時刻も打刻するよう変化があったそうです。
- 学校における課題とビジョンを重点化すること。
生徒指導困難校で授業がなかなか成り立たない場合の重点課題は、
「頭髪指導」
ではない。
「授業についていけない子が多いということをどうするか」
ということの方が重点課題であると仮説を立ててみる。
頭髪指導に時間を使うよりは、補習や学び直しを地域のNPOと共に取り組むほうがが優先の高い施策かもしれません。
- プリント確認などのチェックを少し楽にしてみる。
前田康裕先生の小学校での実践が載っていました。
一人ひとりに対してコメントを書くのではなく、
「がんばって」
「もっと書こう」
と、チェックボックス式にしたのです。
そうすることで作業時間が大幅に減りました。
他にも、紹介しきれないくらいの改善策が載っていました。
私の現場では…
私の現場では、数年前からタイムカードを使用した労務管理が行われるようになりました。
それまでは勤務時間等関係なく、出勤簿にハンコを押していました。
また、夜遅くまで残って仕事をする先生のために、店屋物を価格の上限をつけて提供すると制度までありました。
その制度もなくなり、タイムカードで出退勤を報告することで多くの先生の勤務時間が減りました。
労働安全衛生委員会も設置され、学校の危険箇所や労働に対して課題を共有しています。
ただ、正直のところサービス業であるため他の学校との差別化を図らなければなりません。
生徒確保のため、部活や行事を縮小するといった考えはあっても実行に移すのは難しいと思います。
週5日制も、私立学校にとっては
「それなに?おいしいの?」
状態ですからね〜。
7割以上、週6日制だったような。
ルールを守って、その中で切磋琢磨してほしいものです…。
まとめ
教員の多忙化の問題は複雑に絡み合い、多くの問題を含んでいると感じています。
ただ、最近は「感情労働」であることが教員のストレスを増大させているのではないでしょうか。
最近、ママ友とランチをした際も、
「中二の息子のクラスが落ち着かない。担任(女性)の先生だけ授業を聞かない。男子生徒全員が担任に反感を持っている」
そんな話を聞くたびに、いたたまれなくなってしまい、
「先生はメンタル壊れてないかな?」
「休職してしまうのではないかな?」
と心配になってしまいます。
先生の労働環境の改善をきっかけに、社会全体の働き方が変わっていくと良いのですが…
これから、徐々にでも改善されていけばいいなと感じました。
著者の「絶対にあきらめない」という想いが伝わってきます。
よろしければ、(いや、ぜひぜひ)手にとって読んでみてくださいね。
「日本の教員の労働環境を大きく変える本」
になるかもしれません!
妹尾さんの「変わる学校 変わらない学校」もおすすめ。
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9月下旬発売、予約しましたよ〜。読むのが楽しみです。
ではまた☆