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企業・経営 週刊現代

まったく使えない「オレオレ系」社外取締役が増殖中

鳴り物入りで来たのに!

学者、弁護士に会計士、政府関係者……。ここ数年、会社の外から来た人たちが「取締役」に続々と就任している。経営の監視がその任務。だが、現実にはむしろ経営を混乱させる被害が続出している。

仕事の邪魔しかしない

ある大手運輸系企業では、グローバル展開を加速させようとしていた時期、海外での知見が豊富な人材を求めて、外務省出身者を社外取締役に招いた。

社外取締役の仕事は年に十数回の取締役会に出席することで、プロパー役員とは違った視点から経営に新しい風を吹かせることが重要な任務。

当の官僚は東大卒のバリバリのエリート。外務省で出世街道を駆け上がった幹部だけに、プロパー役員たちの期待感も膨れ上がっていたが、「いざフタを開けてみたら、これがまったく使いものになりませんでした」と同社幹部は言う。

「われわれとしては、海外の投資案件などについて、オリジナルな視点での鋭い分析を期待していたのですが、議論を振ると、『その国では、こんな政治家と会って、こんな晩餐会をした』などと自分の思い出話ばかりするんです。

ビジネス視点で語ってほしいと求めても、『私は官僚なのでビジネスのことはわからない。それはそちらで考えることでしょう』と言ってのける始末でした。

おそらく、決算書などをまともに見たことがないし、『霞が関文学』に慣れ切っているからか、こちらが用意している決算資料も『読みづらい』『わからない』とケチをつけてくる。

その割にみずからの待遇面には口うるさくて、取締役会の後にはハイヤーは出るのか、などとしつこく聞いてくる。

省庁の審議会によくいる『御用学者』のようにふるまっていればいいとでも思ったのでしょうが、われわれビジネスマンからすると『使えないクズ』でしかなかった」

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欧米流の企業統治を実現させようとして、金融庁がコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革を打ち出してから早2年。

東京証券取引所に上場する企業は社外取締役を2人以上選任することが事実上義務付けられ、いまや上場企業の95%以上が導入する「社外取締役」全盛時代。改革以前の'14年には約65%の企業しか導入しておらず、一気に急増している形だ。

社外の視点を経営に入れることで日本企業の収益力がアップする――。

そんな思惑からアベノミクスの柱として期待されたが、現実はその社外取締役に頭を抱えている企業が続出。いざ招いてみたものの、「使えない」「役に立たない」という現実に直面するケースがあちこちで噴出している。

 

大手機械メーカー幹部も、その「被害体験」を次のように語る。

「うちは、専門分野に詳しい人がいいからと大学教授を社外取締役に入れたんですが、これが失敗でした。教授は普段の取締役会ではほとんど発言をしないのに、自分の専門領域に関する議題となると突然熱が入り、取締役会で大学の講義が始まってしまうんです。

それも基礎の解説から始まって、『こんな学問の初歩的なことも知らないでビジネスをやろうとしているのか』と周囲の役員をまるで学生扱い。

そのうえ、ビジネス上の話をしているのに、『学術的には正しくないので、私は納得できない』と絶対に妥協しない。おかげで役員会の議論が進まず、まったく役に立たなかった」