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結局、獣医師は足りているの? 足りていないの? ~犬の飼い主が見た、加計学園問題~

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加計学園問題をきっかけに、獣医師の不足が話題となったのは、つい最近でした。
ワイドショーではコメンテーターが、『実は足りている』と言うこともあれば、『いやいや、本当は足りていない』とも――

しかしこのネタも今や下火で、このまま忘れ去られてしまいそうな気配も――
足りている、足りていないの問題は、決着せぬままで、置き去りにされてしまっているように思えます。

いったいどっちなの?

――ということで、犬の飼い主の立場から、一般に公表されている統計データを元に、この問題を追いかけてみました。

目次

 

犬と猫の飼育頭数

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獣医師の適正数を考察する上で、最も重要となるのが、動物病院を訪れる動物の数。まずはその数字を追いかけてみます。おそらくそれは、犬と猫が大半を占めると思われますので、下記のように考えます。

動物病院を訪れる動物の数 ≒ 飼われている犬の数 + 飼われている猫の数

そして必要とするデータは、下記の調査資料の中に発見しました。
犬の飼育頭数は9,878頭、猫は9,847頭です。

全国犬猫飼育実態調査

2016年10月現在、20~60代全国の犬の飼育頭数は約9,878千頭、猫の飼育頭数は
約9,847千頭と推計される。犬の飼育頭数は2012年より減少傾向にある。

出典:一般社団法人ペットフード協会

最近1年間動物病院へ行った回数

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さて、考察に必要な2つ目の指標ですが、それは犬と猫たちが、年間で一体何回、動物病院を利用するかの頻度です。この数字は、前述の一般社団法人ペットフード協会の資料の中にありました。

最近1年間動物病院へ行った回数

  1 2~3 4~6 7~10 11以上  
33.6 28.9 19.9 7.4 10.2  
64.2 21.2 7.6 3.7 3.4 (単位 %)

→スマートフォンでは、スライドしてご覧ください→

この表の11回以上の通院数を、15回だと仮定して、ザックリと平均値をとると、犬の場合は年間で4.2回、猫は2.4回、動物病院に行っている事になります。

 

全国の動物病院の数

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獣医師の過不足を推定するには、更にもう一つ、重要な数値が必要です。それは、現在の動物病院の数です。
これは下記の、農林水産省発表の資料に書かれていました。

飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数):農林水産省

この資料によると、全国の動物病院の数は11,675施設。これで必要な数字は揃いました。

それでは計算してみましょう

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動物病院には、1日何匹の犬、猫が訪れているのか

まずは動物病院には、1日何匹の犬、猫が訪れているのかを計算してみましょう。
計算を簡単にするため、動物病院は全て週1回休みの26日診療とします。

犬の場合

9,878千頭×4.2回/11,675施設/12か月/26日= 11.4頭

猫の場合

9,847千頭×2.4回/11,675施設/12か月/26日= 6.5頭

合計では

11.4頭 + 6.5頭 = 17.9頭

つまり1動物病院につき、一日に17.9頭の犬と猫を診療する計算になります。これは多いのでしょうか? それとも少ないのでしょうか?

8時間診療であるとして、30分に1頭強の診察及び治療をすことになりますが、普通に仕事として考えた場合、それほど忙しくはないのではないかというのが、率直な感想です。

 

それでは獣医師の数で計算すると

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動物病院には、獣医師一人で運営している小さな医院もあれば、複数の獣医師を抱える大きな医院もあります。病院単位だと今一つ分かりにくいところもあるので、今度は獣医師の人数でも計算をしてみます。

これを行うには、獣医師の人数を知る必要がありますが、必要な数字は、下記の統計資料に記載されていました。

獣医師の届出状況(獣医師数)

獣医師の届出状況(獣医師数):農林水産省

この資料を読み解くと、個人診療施設に属し、犬猫に対応する獣医師は 15,205人です。

それでは再計算を

ここからが、獣医師一人あたりの、一日の対応頭数です。

犬の場合

9,878千頭×4.2回/15,205人/12か月/26日=8.7頭

猫の場合

9,847千頭×2.4回/15,205人/12か月/26日=5.0頭

合計では

8.7頭 + 5.0頭 = 13.7頭

つまり一人の獣医師は平均すると、1日に13.7頭の犬と猫を診療するという結果です。上記と同じく8時間診療と仮定すると、30分に1頭弱の診察及び治療なので、結構暇かなという感想です。

しかも上記の計算には、獣医大学の附属病院に勤務する獣医師が含まれません。なぜそうしたかというと、公開された統計数字は、大学に所属する獣医師を一くくりにしているからです。産業動物を担当する医師と、犬猫のようなペットを扱う医師を分けられないのです。

つまりどういうことかというと、大学に所属してて犬猫に対応する医師も加えたら、計算の母数になる獣医師の数は多くなり、1日の診療頭数の平均値が下がります。簡単にいうと、上記に書いた想定よりも、もっと獣医師は暇と言うことです。

 

結論

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ここでは統計の数字からの単純計算なので、地域による医療格差は考慮されていません。実際に獣医師が少なくて困っている地域は沢山あるのです。裏を返せば、獣医師が過剰なところも沢山あるのだろうということが、容易に想像できます。

今回は我々に馴染みの深い、街の動物病院と、その獣医師に関しての考察でした。
今話題の加計学園は、犬猫ではなく産業動物、つまり畜産農家の為の獣医師の育成が目的なのだそうです。実際に産業獣医師は、足りていないのが現状だとか。なぜそのような偏りが生じているのか?

実は、ここには別の問題が潜んでいるのです。

さて、本記事がご支持を集めるようなら、今度は産業獣医師について掘り下げてみたいと思います。

しかし、統計数値というのは面白いですね。公けにされている数字から、色んなことが分かってきます。例えば、獣医師の年収とかまで。

それはまた――

 

(ライター)高栖匡躬

 

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