仮想通貨の代表といえば「ビットコイン」。仕様変更に伴う分岐騒動で、日本の多くの取引所では8月1日に一時取引が中止されたものの、翌日には取引を再開。9月に入ってからも安定した稼働を続けており、1BTC(BTC=ビットコインの通貨単位)の価値は一時50万円を超えるほど高まっている。
この仮想通貨を実現し、信頼性を支えている技術が「ブロックチェーン」だ。
ビットコインの注目度の高さから「ブロックチェーンといえばビットコイン」と考える人もいるかもしれないが、その理解は正確ではない。ブロックチェーンにはさまざまな種類があり、ビットコインに用いられている「パブリック型」のほか「プライベート型」や「コンソーシアム型」が存在し、現在さまざまな分野で活用が見込まれている。それぞれどんな特徴があり、どのような分野で活用の可能性があるのだろうか。
話をしてくれたのは、NTTデータの赤羽喜治さん(金融推進部・技術戦略推進部部長)と愛敬真生さん(同部シニアITスペシャリスト)。2人は著書『ブロックチェーン 仕組みと理論 サンプルで学ぶFinTechのコア技術』(リックテレコム)で、ブロックチェーンの基礎を分かりやすく解説している。
あらためて説明しておくと、ブロックチェーンとは取引データの塊(ブロック)を暗号技術を用いて鎖(チェーン)のようにつなぎ、それを複数のコンピュータ(ノード)間で保持し合うことで改ざんを難しくする技術。その仕組みから「分散型台帳」などとも表現される。
ブロックチェーンネットワークに参加し、取引データを承認するノードを誰でも自由に立てられるのがパブリック型で、ビットコインはこれに該当する。一方、参加者を制限するものを総じてプライベート型と言うが、中でも1つの企業のみに絞る場合をこう呼び、2社以上にまたがる場合をコンソーシアム型と呼ぶこともあるという。
パブリック型は、ブロックチェーンネットワークに誰でも参加できるのが特徴だ。ノードを自由に立てることができ、ビットコインのようにインターネットを通じて世界中で展開できる。
そのため、誰が参加しているかが見えにくく、新しい取引をブロックチェーンに書き込むための「合意」を全員で行うのが難しい問題もある。そこでビットコインでは、取引の承認・追記作業にあたって高い計算量を求め、生成されたブロックがより長いものを正当とみなす「Proof of Work」(※)というルールを採用している。
※ビットコインでは、承認者に計算の見返りとして仮想通貨が提供されるため、この計算プロセスのことを「採掘」(マイニング)と呼ぶ。
ビットコイン以外のパブリックブロックチェーンの代表例としては、「Ethereum」(イーサリアム)というオープンソースプロジェクトがある。
通貨としてのやり取りに特化したビットコインとの最大の違いは、Ethereumはアプリケーションをブロックチェーンに実装し、あらかじめ定めた条件に従ってブロックチェーン上のデジタル資産に関する各種処理を行えることだ(「スマートコントラクト」と呼ばれる)。最近話題になっている仮想通貨を使った資金調達「ICO」(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)も、Ethereumのスマートコントラクトを用いたものが主流になっている。
一方、コンソーシアム型やプライベート型は、ノードの設置を制限することで、参加者が誰であるかを把握しやすい。例えば「4人の参加者がいる場合は3人の合意を得ればよい」といった形で、シンプルな合意形成ができるのが特徴だ。
2社以上にまたがるコンソーシアム型は、貿易金融など、さまざまなビジネスでの活用が見込まれている(関連記事)。貿易金融の場合、関連企業とプラットフォームを作り、どこでどのような取引があったのかをブロックチェーンで管理することで、取引の透明化が期待できるという。
同様の仕組みを1つの企業で活用する場合はプライベート型と呼ばれる。愛敬さんは「貿易というのは要はワークフロー。企業の決算フローなどにも使えないか検討している」と話す。
だが、プライベート型の場合は「合意形成が本当に必要な業務か検討すべき」(赤羽さん)とも。「例えば利息計算をブロックチェーンでやることに意味があるかというと、はっきり言ってただの無駄でしかない。そういうものは合意をとる必要ない」(赤羽さん)。業務によっては従来型のデータベースの方が適していることもあるという。
それにも関わらず、社内業務にブロックチェーン活用を見込む企業は多い。なぜだろうか。
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