(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年9月5日付)
ケニアのナイロビで、大統領選の結果について無効の判断を示す最高裁判事(2017年9月1日撮影)。(c)AFP/SIMON MAINA〔AFPBB News〕
ケニアの最高裁判所に何十人もの人が押し寄せたとき、先月の大統領選挙に対する野党の異議申し立てについて裁定を下す準備をするデビッド・マラガ氏にすべての人の目が釘付けになった。だが、選挙で敗れ、上訴していた当のライラ・オディンガ氏でさえ、先週、最高裁の首席判事が歴史をつくるとは思っていなかった。
マラガ氏が選挙結果を無効とする最高裁の裁定を言い渡した直後、オディンガ氏は「信じられない」と言った。
これはアフリカで選挙結果が法的に無効にされた初めてのケースで、マラガ氏は即座に、国家機構への信頼を失っていた数百万人のケニア人にとって英雄となった。
衝撃が広がった理由の1つは、元上訴裁判所判事で59歳のマラガ氏はエスタブリッシュメント(支配階級)の一員と考えられており、司法も長年、政府の支配下にあると見なされてきたためだ。最高裁の裁定は、8月8日の選挙で勝利を宣言されたウフル・ケニヤッタ大統領にとって痛烈な打撃となった。
セブンスデー・アドベンチスト教会の信者で、信仰のために土曜日に働くことを拒むマラガ氏は、昨年10月にその後を継いだウィリー・ムトゥンガ前首席判事と比べると、活動家として遠く及ばないとも思われていた。
そのムトゥンガ氏も、不正の証拠があったにもかかわらず、2013年の前回大統領選でケニヤッタ氏が僅差でオディンガ氏を下した勝利を覆すことを拒んだ。今回、選挙管理委員会によると、オディンガ氏に対するケニヤッタ氏のリードは140万票にのぼり、結果が覆される可能性は低かった。