価格競争から品質競争へ!楽天モバイルの新サービス戦略を解説 |
楽天がNTTドコモから回線を借り入れて仮想移動体通信事業者(MVNO)として提供している携帯電話サービス「楽天モバイル」( http://mobile.rakuten.co.jp )について都内本社にて「『楽天モバイル』新プラン発表会」を8月23日に開催しました。
発表会では契約した高速データ通信容量を使い切っても1Mbpsの速度で通信が可能な新プラン「スーパーホーダイ」を中心にプレゼンが行われましたが、その前後では同社のモバイル戦略についてのこれまでの成果や今後の展開なども多く語られました。
本記事では楽天モバイルがモバイル市場をどう捉え、今後をどう見据えているのかについて解説したいと思います。なお、スーパーホーダイについての詳細はこちらの記事を御覧ください。
■楽天モバイルの成功が「フルオーケストラ」を実現する
「私たちがめざすのは“ペタバイト級”のデータを有効活用した新たな価値の想像です」――冒頭に登壇し、そう語るのは同社副社長執行役員を務める平井康文氏。ECサイトとして発展・成長してきた楽天は、今や金融・通信などあらゆるIT(ICT)関連事業に関わる巨大企業です。
その大きな市場を構築する楽天において、主軸であるECカンパニー事業に次ぐ規模の事業として期待されるのが通信&メディアカンパニー事業であり、楽天モバイルはその原動力と言えます。
楽天は今年企業内のブランドロゴを統一し、サービスや事業のシナジーを強く打ち出しています。特にECカンパニーと通信&メディアカンパニーはネットワークサービスでのエコシステムを形成するための重要なアプローチであると位置付けており、通信&メディアカンパニー事業が軌道に乗りつつある点について「ようやくフルオーケストラになった」とし、「お客様に素晴らしいハーモニーをお届けできるようになったのではないか」と、平井氏が趣味とする管弦楽に例えていました。
プレゼンでは楽天モバイルが楽天グループ全体へ好影響を与えた例として、楽天グループ内サービスの平均利用回数を挙げ、実際に数字として成果が上がっている点を強調しました。
■楽天は「格安スマホ」や「格安SIM」をめざしているのではない
このような企業戦略の上で今回発表された新プラン「スーパーホーダイ」を振り返ってみると、楽天がめざすMVNOとその方向性が見えてくるのではないでしょうか。
質疑応答の席で値下げについて質問された際に楽天 執行役員 楽天モバイル事業の大尾嘉宏人氏が「そもそも楽天モバイルは他社MVNOと比較しても一番安いのでこれ以上下げる意味があまりない。それよりもサービスや品質をさらに向上させていく方向性にした」と述べているように、楽天としては価格競争のみによる顧客獲得戦略の段階が終わったことを示唆しています。
また平井氏も「楽天モバイルは『格安スマホ』をめざしているわけではない。プレゼンでも敢えて注意深く『格安スマホ』ではなく『MVNO』と言わせていただいた」と続けて述べており、安さを売りにするのではなく「安いのは当たり前。その上で品質が良い」という次の段階をめざしている点を強調していました。
会場には実際にスーパーホーダイの通信速度制限状態にした端末が並べられたタッチ&トライコーナーも設けられ、通信速度制限時でどこまで快適に通信が利用できるのか試せるようになっていました。
一般的なモバイルサイトは当然のこと、若干情報量も多く重さを感じるPC向けサイトを表示しても非常に快適に利用できます。またYouTubeなどの動画サイトでも画質は若干落ちるものの途切れたり止まることもなく快適に閲覧できるなど、「通信速度制限とは?」と感じるほどに普通に利用できます。
ただし、スーパーホーダイであっても通信が混み合う時間帯(12:00~13:00、18:00~19:00)は最大300kbpsに制限される点については、通信帯域を借り受けて運営を行うMVNOの限界を超えられなかったか、という印象もあります。
■スーパーホーダイが通信業界に風穴を開ける?
MVNOに限らず、NTTドコモやKDDI(au)といった大手通信事業者(MNO)であっても通信速度制限時は最大128kbps前後が当たり前となって久しいですが、その数字がただの申し合わせでなし崩し的に決まったことなど誰もが忘れかけているのではないでしょうか。スーパーホーダイと楽天の戦略はその停滞した「妥協」に風穴を開ける重要な一手になる可能性があります。
単なる価格競争ではなく、品質と利便性でオンリーワンとナンバーワンを狙っていく。そして楽天モバイルを原動力として楽天グループ全体のエコシステムを機能させていく。そのために生まれた施策は、もしかすると通信業界全体すらも動かすことになるかもしれません。
記事執筆:あるかでぃあ
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