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GRAPEVINEが語るデビューからの20年。ヒット、転機、そして今

GRAPEVINEが語るデビューからの20年。ヒット、転機、そして今

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:森山将人 編集:矢島由佳子
2017/09/06
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今年デビュー20周年を迎えたGRAPEVINEが、通算15枚目となるニューアルバム『ROADSIDE PROPHET』を完成させた。昨年行われたTRICERATOPSとの1stアルバム再現ツアーに続き、5月に行われた対バンツアーにはユニコーン、クラムボン、麗蘭、UNISON SQUARE GARDENといったアーティストが集結。お互いのライブにゲスト出演しているSuchmosなども含め、これだけ世代を超えて愛されているバンドというのもなかなかいないと言っていいだろう。

そんなバンドの愛される理由を紐解くためにも、今回の取材では20年間のシングルヒストリーを振り返ることで、改めてGRAPEVINEというバンドの核にあるスタンスに迫った。そこから見えてきたのは、高いミュージシャンシップと、その一方にある、無邪気で天邪鬼な一音楽ファンとしての素顔。<武器は要らない>と歌うリードトラックの“Arma”や、『ROADSIDE PROPHET』にも、その精神性は確かに貫かれている。

実を言うと、「シングルでデビューしたくない」と言ったんですよ。(田中)

―今年でデビュー20周年ということで、今日はこれまでリリースしたシングルのリストを見ながら、ヒストリーを振り返っていければと思います。

亀井(Dr):僕らは決して曲が量産できるバンドではないのに、よくこれだけ出したなあと思いますね。

―シングルが28枚、アルバムも15枚ですもんね。シングルのリリースペースに関しては、時代によってシングルの位置付けが変わってきたことを表しているとも言えますが、20年でアルバム15枚はやはり多作だなと。

亀井:確かに、最近はフルアルバムをあまり出さない人も多いですもんね。でも、僕らはアルバムを聴いてきた世代なので、やっぱりアルバムを出したいと思うんですよね。

田中(Vo,Gt):うん、世代的に基準がアルバムなので、なにかを作り始めると、「アルバムを作る」という意識がどこかにあるんじゃないですかね。シングルだ、リード曲だっていうのは後付けでしかないというか。もはや、「僕らにとってのシングルとはなにか」と訊かれても、言葉に困りますから。それはもう、会社が考える宣伝のためのものとしか思えないんじゃないですかね。

左から:田中和将、亀井亨、西川弘剛。テーブルに置いたシングルのリストを見ながら談義
左から:田中和将、亀井亨、西川弘剛。テーブルに置いたシングルのリストを見ながら談義

―逆に言うと、1stシングルの“そら”(1997年12月)をリリースした頃は、シングルに対して特別な気持ちがありましたか?

田中:僕ら、メジャーデビュー作は『覚醒』(1997年9月)というミニアルバムなんですけど、実を言うと、「シングルでデビューしたくない」と言って、ミニアルバムにしてもらったんですよ。

天邪鬼なところがあるから、8cmシングルでデビューするのはチャラい気がしたし、当時流行ってたマキシシングルも「流行りに乗りたくない」って言って。そこからしてこのバンドの性格が表れてる気がしますね(笑)。

田中:その次の1stアルバム『退屈の花』(1998年5月)からは、ちゃんとシングルを出しましょうって話になったんですけど、最初に“君を待つ間”を出すのは「売れちゃいそうだから嫌だ」って、2ndシングルに回したりもしたし。

亀井:「一個待とう」みたいなね。

田中:そうそう。その「一個」ってなんなのか、今考えるとよくわかんないですけど(笑)。

左から:田中和将、亀井亨

亀井:“君を待つ間”は僕が初めてバンドに持っていった曲で、それをいいって言ってもらえたことがきっかけで、もっと曲を書くようになったんです。なので、思い入れは強いですね。アマチュアのときからやってて、わりと顔のような曲になっていたので、シングルにすることは決まってたんですけど、時期をあえてずらしたんです。

田中:“そら”ってちょっとサイケだったりするし、最初の見え方として「ルーツを感じさせられるんじゃないか」って考えたのか、考えなかったのか……そんな感じやったんやないかな(笑)。

亀井:“そら”って6分くらいあるから、全然シングルには向いてなくて、ラジオでもフルでかからないんですよね。でも、そういうこともわからずにやってました。

―デビュータイミングだと特に、「ラジオでのかかりやすさ」を意識してもおかしくないですけど、アーティスト性を大事にしていたということですよね。

田中:その意味ではホンマに、今までずっとよくしてもらってますね。レコード会社とかから、なにか注文を付けられたこともないですし。

西川(Gt):当時の担当のディレクターが、長いスパンで見ていてくれたのかなって思います。「一発勝負で、ダメだったらクビ」みたいな考え方ではなくて、もうちょっと先で結果を出そうとしてくれていたんだなと。シングルは短い曲のほうがいいなんて、ディレクターはハナからわかってたはずだけど、それも言わなかったですし。自由にやらせてもらえて、今思い返しても、すごく大切にされてたなって思いますね。

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リリース情報

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』20th Anniversary Limited Edition
GRAPEVINE
『ROADSIDE PROPHET』20th Anniversary Limited Edition(CD+DVD)

2017年9月6日(水)発売
価格:4,320円(税込)
VIZL-1216

[CD]
1. Arma
2. ソープオペラ
3. Shame
4. これは水です
5. Chain
6. レアリスム婦人
7. 楽園で遅い朝食
8. The milk(of human kindness)
9. 世界が変わるにつれて
10. こめかみ
11. 聖ルチア
[DVD]
・「GRAPEVINE STUDIO LIVE 2017」
1. 覚醒
2. EAST OF THE SUN
3. KOL(キックアウト ラヴァー)
4. Arma
5. スロウ
6. CORE
7. 吹曝しのシェヴィ
8. 放浪フリーク
・“Arma”PV
・「RECORDING DOCUMENT 2017」

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』通常盤
GRAPEVINE
『ROADSIDE PROPHET』通常盤(CD)

2017年9月6日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-64820

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イベント情報

『GRAPEVINE tour 2017』

2017年10月5日(木)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

2017年10月7日(土)
会場:新潟県 LOTS

2017年10月8日(日)
会場:長野県 CLUB JUNK BOX

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プロフィール

GRAPEVINE
GRAPEVINE(ぐれいぷばいん)

ブルースやソウルに耽溺していた早熟なボーカリストと、ビートルズやニール・ヤング、XTCに影響をうけたプレイヤーたちが大阪で出会う。彼らはマーヴィン・ゲイの曲から名前を借用し、ロックバンド「GRAPEVINE」を結成する。結成メンバーは田中和将(Vo,Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr)、西原誠(Ba)。セルフリリースのカセットテープが注目をあび、1997年にポニー・キャニオンと契約。1997年9月、ミニアルバム『覚醒』でデビュー。2002年に西原誠が脱退し、金戸覚(Ba)、高野勲(Key)がメンバーに加わった2014年、ビクター / スピードスターレコーズに移籍。2017年9月6日、最新アルバム『ROADSIDE PROPHET』をリリース。

関連チケット情報

2017年10月7日(土)〜10月8日(日)
GRAPEVINE
会場:NIIGATA LOTS(新潟県)
2017年10月15日(日)
GRAPEVINE
会場:Live House 浜松 窓枠(静岡県)
2017年10月21日(土)〜11月18日(土)
GRAPEVINE
会場:熊本B.9 V1(熊本県)
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