一面岐阜大、丸ごと博物館を計画 創立70周年記念、眠れるお宝展示
岐阜大(岐阜市)は創立七十周年を迎える二〇一九年度から、キャンパス内に分散して保管している古文書や標本などの学術資料を集約し、一般に公開する「キャンパスミュージアム」を始める。収蔵庫や展示ギャラリーを新設するほか、教育学部など三学部に専門性が高いサテライト館も設け、緑豊かな散策ルートでつなぐ計画だ。 岐阜大教育学部は古くから日本列島の植物研究が盛ん。八万点を超える貴重な標本があるが、現在は学部棟にある収蔵部屋で眠っている。同じ棟には郷土博物館があり、前身の旧制岐阜師範学校から受け継ぐ五万点超の古文書、二千点以上の土器などの考古出土品も所蔵している。ただ、開館は事前申し込みがあった時に限られ、一般にはあまり知られていない。 教育学部以外では、地域科学部が岐阜に関する古文書、応用生物科学部が動物標本などを数多く持っているが、管理は学部任せで所蔵データがない物も多い。 キャンパスミュージアム計画は、これらの現状を知った森脇久隆学長が三年ほど前に発想。各学部に呼び掛けて所蔵品の調査を進めたところ、郷土博物館の収蔵庫にあった甲冑(かっちゅう)や鎖かたびら、軍扇などの武具一式が、幕末の加納藩で足軽を率いた小川権右衛門政暢(おがわごんえもんまさのぶ)の物と判明するなど、新たな発見があった。 今春には医学部、工学部を含む全五学部の教員約十人で部会を設置。「地×知のアーカイブ事業」と銘打ち、各学部の所蔵品整理を本格化した。事業を取りまとめる福士秀人副学長は「貴重な資料が眠っている可能性は大いにある」と期待する。 ミュージアムは創立七十年の記念日になる一九年六月一日のオープンを目指し、大学図書館の旧書庫を収蔵庫に改築する計画。図書館には展示ギャラリーや大学紹介コーナーを併せたメイン施設「アーカイブ・コア」も設ける。教育学部、応用生物科学部、地域科学部にはサテライト館を置き、湿度や温度、光など特殊な管理が必要な植物標本や文書類を保管、展示する。計画全体の整備費は未定で、大学のOBや地域、企業に寄付を募っている。 岐阜大は自然豊かな岐阜市郊外にある。恵まれた立地を生かして各施設をつなぐ散策路も整備し、一般の人にも訪れてもらう。森脇学長は「文化を次代につなぐため保存環境を高めるとともに、地域に大学を身近に感じてもらえるようにしたい」と話している。 (兼村優希、写真も) <キャンパスミュージアム> 大学内に点在する歴史資料や施設を連動させ、キャンパス全体で博物館のような機能を持たせる取り組み。中部地方では1999年に静岡大静岡キャンパス、2008年に名古屋大東山キャンパスで始まった。06年から取り組んでいる広島大は「広島大総合博物館」としてワークショップなどのイベントを開催し、年間1万人以上が訪れている。
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